宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

史上最速のコロナ

2012年08月19日 | 宇宙 space
NASAの太陽観測衛星“STEREO”が、
史上最速レベルの速さで太陽から飛び出す“コロナ質量放出”をとらえました。
太陽観測衛星“STEREO”がとらえた“コロナ質量放出”の瞬間。
右側に見えるのが史上最高速の“コロナ質量放出”。

秒速2900~3500キロという速さは、“STEREO”が2006年に観測を始めて以来最速。
このような稀な宇宙天気の急変は、その原因と影響を調べる絶好チャンスになります。

“STEREO”ミッションは、地球とは異なった角度から太陽をとらえるため、
特別な軌道を回る2機の観測衛星で構成されています。

“コロナ質量放出”はその速度でランク付けされ、今回は最速レベルなのでER。
つまり非常にまれ(Extremely Rare)なものとして分類されるようです。

太陽から約1億4000万キロ離れた“STEREO-A”は、
“コロナ質量放出”の直撃を受けたので速度を測定することが出来たようです。

そして約17時間後には“コロナ質量放出”の勢いが、秒速約1000キロに落ちほぼ消えました。

“STEREO”の測定から、
この“コロナ質量放出”は通常の約4倍もの強い磁場を持っていたことが分かっています。

強力な磁場を伴う“コロナ質量放出”が地球の近くを通ると“地磁気嵐”と呼ばれる現象が起き、
地球の磁場が撹乱され、人工衛星にトラブルが発生する可能性が高まるんですねー
深刻な場合は地上の電力供給システムにも問題が生じるようです。

磁場はテスラという単位で測定されます。
今回の“コロナ質量放出”の場合は約80ナノテスラで、
“ハロウィーン嵐”と呼ばれる2003年10月の巨大磁気嵐を起こした“コロナ質量放出”よりも、
強かったんですねー

でも、1859年の“キャリントン・イバント”に比べればまだ弱いそうです。

このときは電報局で火災が発生したとか、
新聞が読めるほど明るいオーロラが発生したなどエピソードが残っていて、
史上最大の磁場嵐とされています。

さらに“STEREO”は“コロナ質量放出”の磁場の向きを検知することもできるんですねー

地球磁場と逆の南向きの磁場は地磁気嵐を起こしやすいので、
これは地球にとっても重要な情報となります。
今回の“コロナ質量放出”では、
南向きの磁場が40ナノテスラという強力な磁気を数時間維持していたようです。

また今回の“コロナ質量放出”は、太陽から“高速陽子放出”も引き起こしています。
“コロナ質量放出”が始まってから1時間後には、
大量の荷電粒子が“STEREO”にぶつかっているんですねー

このような太陽からのエネルギー粒子が、地球にたどり着いたものが“太陽放射嵐”と呼ばれ、
航空機の通信などに使われる高周波数通信に障害を引き起こしたります。

“コロナ質量放出”と同様に、今回発生した“高速陽子放出”もSTEREO観測史上最も強いものでした。
“コロナ質量放出”は地球からあさっての方向に向かったのですが、
“高速陽子放出”は弱まっていたものの地球に向かって来たんですねー

NASAでは今回の太陽活動が発生する3週間前から、発生元となった活動領域に注目していました。

AR-1520と呼ばれる活動領域で、
以前の観測では太陽の右縁から見えなくなる直前に4回もの“コロナ質量放出”が発生しています。
すでに何回も“コロナ質量放出”が発生している場所なのに、
強度が増し続けて今回の巨大爆発が起こったんですねー
この領域に何かあるのか? とても興味深い研究対象になりますね。

STEREOは太陽を常時観測している数々の衛星の1つです。
観測では活発な太陽だけでなく、静かな太陽からも興味深いデータが得られています。

太陽の11年周期の活動サイクルのうち、次の太陽極大期と考えられている2013年までに、
様々な宇宙天気の変化が起こると予想されているんですねー
それらを研究することで、太陽が太陽系全体及ぼす影響について新しい発見があるかもしれません。