宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

数百万個の超大質量ブラックホール候補を発見

2012年09月07日 | 宇宙 space
NASAの赤外線天文衛星“WISE”の観測データから、数百万個もの超大質量ブラックホールの候補と、多くのチリに覆われた高温の銀河が約1000個も発見されました。






“WISE”がとらえた全天画像と
多数の超巨大ブラックホール候補
(黄色い丸の中)



“WISE(Wide-field Infrared Survey Explorer)”は、2009年に打ち上げられたNASAの広域赤外線探査衛星で、2011年初めまでに2度にわたる全天観測を終えています。

“WISE”は赤外線暗視カメラのように、可視光では見ることのできない天体をとらえることができます。
これまで、数百万枚もの画像を取得し、そのデータは一般に公開されています。
この中から研究に利用されて様々な発見につながったりしているんですねー

最近の研究成果の1つとして、
「100億光年の範囲に点在する、250万個もの活発な超巨大質量ブラックホール候補の観測」
があります。

この超巨大質量ブラックホール候補の3分の2が、これまで周囲のチリでさえぎられて見えなかった新発見のブラックホールなんですねー

ブラックホールに落ち込んでいく物質は“チリの降着円盤”を作るのですが、
“WISE”のカメラは、この“降着円盤”から放たれる赤外線をとらえています。

NASAの赤外線観測衛星“スピッツァー”の追加観測から、
超巨大質量ブラックホールがガスやチリを飲み込む銀河では、新しい星が爆発的に生み出されていることも分かりました。

また、別の研究では観測史上もっとも明るい銀河の候補が、約1000個も発見されています。
その明るさは太陽の100兆倍以上もあるとか…
多くのチリに覆われているのですが、これも“WISE”によってその存在が明らかになったんですねー
(チリが多いのに、星が爆発的に生れている銀河はとても珍しい存在です。)

これらの銀河はHot Dust-Obscured Galaxies(高温のチリに覆われた銀河)の頭文字をとって、hot DOGs(ホットドッグ)と名付けられています。
ハワイのケック天文台などの観測では、発見されたホットドッグのうち100個以上が100億光年かなたにあることが確認されています。

そのほか“WISE”の観測データと、カリフォルニア工科大学のサブミリ波天文台によるデータとを合わせた結果では、これらの銀河は明るい他の銀河の2倍以上も明るい(=高温である)ことも分かっています。
これは超巨大質量ブラックホールの活発な活動で、チリが熱せられたからと考えられています。

星を形成するには、十分な低温のチリとガスが必要となるはずです。
でも、これらの銀河では大量の星が誕生できる温度にまで冷えていないんですねー

ひょっとすると銀河の進化で「まれな段階」を見ているのかもしれませんね。