宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

小惑星ベスタで水の痕跡を発見

2012年09月26日 | 小惑星探査 ドーン
NASAの探査機“Dawn(ドーン)”のデータに基づいた2通りの研究により、小惑星ベスタの表面に水らしき揮発物の存在が明らかになりました。

小惑星ベスタは、火星軌道と木星軌道に挟まれた小惑星帯の中で2番目に重い天体です。

探査機“ドーン”は、約1年にわたり小惑星ベスタの観測を行ってきました。
そして、今月はじめに小惑星ベスタを離れた後、次のターゲットである準惑星ケレスに向かいました。

今回の発見は高度約210キロからの観測によるもので、
赤道付近の広い範囲に、隕石やチリで運ばれた水和物の痕跡をはっきりととらえることができたんですねー

これまで“ベスタ”の極地域では、水の氷が存在できるのでは っと考えられてきました。
でも、月と違って“ベスタ”には永久影(決して日が当たらない場所)が無いんですねー
一方、今回痕跡が見つかった赤道付近では、水の氷は安定して存在できません。

“ドーン”のガンマ線・中性子検出器(GRaND)の観測では、水和物に含まれる水または水酸基のものと思われる水素が検出されてました。










“ベスタ”地表の水素分布
赤道付近に高濃度(赤)の領域がある




これは炭素を含んだ隕石が“ベスタ”に衝突したときに運ばれた水和物のようなんですねー
遅いスピードでの落下だったので、揮発物が逃げずに残ったようです。

GRaNDによる“ベスタ”の組成分析データは、地球で見つかる隕石のものと一致していて、
それらの隕石に豊富に含まれる揮発性物質が“ベスタ”にも存在していると考えられています。

“ベスタ”で起きたゆるやかな衝突で、水和物が地表に蓄えられます。
そこに隕石が高速で落下すると、その熱によって水素が水となり蒸発するんですねー





多数のくぼみ地形が集中している
マルシア・クレーター内部










火星(左と中央)と“ベスタ”(右)
どちらのくぼみも同じような過程で
形成したと考えられている




かつて水が豊富に存在した っと考えられている火星でも、隕石が衝突した地形がたくさん見られます。
でも、“ベスタ”でこんなに多く見られるとは、まったく予想外の発見でした。

“ベスタ”はマントルや核といった内部構造を持ち、表面にある火山活動の形跡などから「熱く乾いた」状態を経験していると考えられている小惑星です。

今回の発見は、水和物がただ存在するというだけでなく、“ベスタ”の地質や地形の成り立ちにも深くかかわってくるようです。