宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

ブラックホールの源流

2012年09月21日 | 宇宙 space
遠方銀河の中心にある巨大質量ブラックホールで、ジェットが方向を変えて噴き出している様子がとらえられました。

これは、ジェットが噴出するメカニズムの解明や、
ブラックホールの直接撮像という最終目標に向けての、大きな一歩となる発見かもしれないんですねー

活動銀河とは、その中心にある超巨大質量ブラックホールに吸い込まれていくガスや、噴出するジェットからの放射で明るく輝くと考えられている銀河のことです。
その明るさは並大抵のもではなく、遠方にある銀河にもかかわらず恒星のように見えるほどなんですねー

ブラックホールからのジェットは光速に近い激しいものなのですが、そのメカニズムについてはほとんど分かっていません。

日米を中心とした国際研究プロジェクト“Event Horizon Telescope”の計画では、
世界各地の複数の電波望遠鏡をつないで、巨大電波望遠鏡の性能を実現するVLBI(超長基線電波干渉計)観測を用いてブラックホールの謎に迫ろうとしています。

今回の観測では、アメリカのハワイ島とカリフォルニア、アリゾナにある電波望遠鏡と電波干渉計を用いて1.3ミリ波長帯のVLBI観測を行っています。

この観測により超巨大質量ブラックホールのジェットを、史上最高の解像度でとらえることに成功したんですねー
さらに、従来の長い波長での観測ではジェット中のガスに遮られて見えなかった根元部分など、よりブラックホールに近い部分まで見ることができました。

研究チームは2つの活動銀河、“3C 279”(おとめ座の方向に約53億光年)と、“NRAO 530”(へび座の方向に約73億光年)を観測し、両天体のジェットの根元の構造が、これまで長波長で見えていたジェットの構造とは大きく異なることを発見しています。

“3C 279”では、これまでに観測されていたのとは大きく異なる方向へのジェットの流れが見られました。
今回のジェット噴出は向きが折れ曲がっているようなんですねー
ジェットの向きが大きく変わるのは稀な現象なので貴重なデータといえます。





“3C 279”の観測画像
従来の観測と別方向の
ジェットの向きが存在している







“3C 279”の観測結果から
推測されるジェットの構造




“NRAO 530”でも、これまに見えていたのと異なる向きにガスが噴出している様子が確認されています。

他の波長帯の観測結果も考慮すると、
今回の観測で得られた画像は明るいガスが新たに噴出し、曲がったジェットの中を移動しているところを写したものと考えられます。
今までわかっていた領域よりも、さらに上流の部分でジェットが曲がっていることも明らかになっています。











“NRAO 530”の観測画像





















“NRAO 530”の観測結果から
推測されるジェットの構造





ジェットがなぜ曲がるのか? どこまで曲がるのか? を知るうえで今回の発見は大きな手掛かりになるんですねー
そして、ジェットの基本的な謎「どのようにして噴出し、進んでいくのか」を理解するのに重要な情報となります。

プロジェクトでは、今後も参加望遠鏡の増加や、観測装置のアップグレードを計画しています。
これにより、ジェットの形成メカニズムの解明に向けて、さらなる手掛かり得ようとしているんですねー

数年以内には、プロジェクトの最終目標「ブラックホールの直接撮像」が実現するかもしれませんね。