宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

天の川銀河を取り囲む高温ガスのハロー

2012年09月29日 | 宇宙 space
天の川銀河を数十万光年にもわたって取り囲む、高温ガスのハローの存在が明らかになりました。

これは、NASAの“チャンドラ”とESAの“XMMニュートン”、日本の“すざく”という3つのX線天文衛星のデータに基づいた最近の研究から分かったことなんですねー
天の川銀河を取り囲む高温ガスのハローの温度は、100万~250万ケルビンと推定されています。

銀河全体を包み込むように希薄な星間物質や、球状星団がまばらに分布している球状の領域をハローと言います。

天の川銀河や周辺の銀河が、10万~100万ケルビンの温かいガスに取り囲まれていることは以前から示されていたのですが、
最近では100万度以上の熱いガスの存在も明らかになってきています。

今回の研究では、この「熱いガスのハロー」の質量は「温かいガスのハロー」を遥かにしのぎ、太陽100億個分以上、おそらくは600億個分にも相当するという証拠が示されています。
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天の川銀河を覆っている巨大な高温ガスのハロー(青)
天の川銀河や、その伴銀河である大小マゼラン雲を取り囲んでいる
天の川銀河の周囲にはガスが、とても大きく広がっていることも分かり、広がりは数十万光年…
ひょっとすると、それ以上で、近傍の銀河にまで及ぶかもしれないんですねー どちらにしても、その質量はとてつもないものになります。

今回の研究から“ミッシング・バリオン問題”と呼ばれる銀河天文学の謎が解決できるかもしれません。
“バリオン”とは陽子や中性子などの粒子のことで、宇宙で見られる普通の(暗黒物質でない)質量の99.9%をしめています。

現在の近傍宇宙では、遠方宇宙の観測から予想される量の半分しか確認できていません。
これが“ミッシング(行方不明の)バリオン問題”なんですねー

もちろん、まだ不確定な要素が残っています。
でも、今回の研究成果は行方不明のバリオンが、銀河を取り囲む数百万度の“ガスのハロー”に隠されていることを示す最も強力な証拠になったことなんですねー