宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

星形成を終わらせたブラックホールの「げっぷ」

2015年02月28日 | ブラックホール
遠方の銀河の中心にある超第質量ブラックホールから、
光速の3分の1という途方もないスピードで、四方八方に噴出する「げっぷ」のような風。

「この風が、ブラックホール自身の成長を制限し、
さらに、その付近での星形成を終わらせている可能性がある。」
っという研究が発表されたんですねー
膨大な量の高温のガスの柱を噴出する
超大質量ブラックホール。
“NGC 1068”という銀河のX線画像と
光学画像を合成している。

この研究では、
ヨーロッパ宇宙機関のX線観測衛星“XMMニュートン”と、NASAのX線天文衛星“NuSTAR”を使って、
へび座の“PPD 456”というクエーサーから噴出する、高温のガスの「風」の地図を作っています。

クエーサーとは、地球からひじょうに遠いところにあり、極めて明るいので、全体が恒星のような点光源に見える天体のことです。

今回観測されたものは、クエーサーのなかでも地球から比較的近いもので、
20億光年ほどの距離にあります。



クエーサーを輝かせているのは、その中心にある巨大なブラックホールなんですが、
より正確に言うと、ブラックホールの周りにできる降着円盤という、
パンケーキのような形のガスの雲なんですねー

ブラックホールの周囲の物質は、
ここを猛スピード回転しながら重力場に落ち込んで行き、
数百万度という高温になって、強烈な光を発することになります。

私たちの天の川銀河を含め、すべての銀河の中心には、
恒星の数百万~数十億個分の超大質量ブラックホールがあります。

でも、すべての超大質量ブラックホールが、クエーサーを輝かせるわけではありません。

これまで、クエーサーから地球の方向に噴出してくるガスが観測されたことはあったのですが、
あらゆる方向に噴出していることを証明できたのは、今回が初めてになります。

降着円盤から出る強烈な光が、この風のエネルギー源になっているんですが、
ガスやチリが吹き飛ばされてしまうと、降着円盤を作る物質が不足し、
ブラックホールは新たな物質を飲み込めず成長ができないことに…

さらに風は、ブラックホールの周囲の星の成長も妨げています。

ガスの泡が広がっていく際に、
新たな恒星を生み出す巨大分子雲も吹き払ってしまうんですねー

クエーサー自身から燃料を奪い去り、
その付近での星形成を終息させる高温のガスの泡は、
“PPD 456”だけでなく、どのクエーサーでも生じているようです。

ただ、ほとんどのクエーサーは“PPD 456”に比べて、
地球から、はるかに遠い位置にあります。

なので、私たちが今見ている光は、宇宙がもっと若かった時代のものになります。

これが何を意味しているのかと言うと、
地球の近くにある多くの銀河も、若い頃はクエーサーとして激しく活動していたということです。

でも、今回の研究で明らかになったような過程を通じて、
大量のエネルギーを放出し、落ち着いた中年の銀河に成長していく…

“PPD 456”は、たまたま奥手だったことが、今回の発見につながったんでしょうね。