宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

アルマ望遠鏡の観測から分かった、大質量星団の複雑な誕生現場

2015年05月08日 | 宇宙 space
アルマ望遠鏡による電波観測で、大質量星が生まれつつある領域に、
生まれたての星が少なくとも2つ潜んでいることが分かってきました。

さらに、ガス流が周囲のガス雲を押しのけて広がっていく
“砂時計型”の構造が描き出されることに…

このような構造が大質量星の形成領域で、
メタノール分子の観測によって見つかったのは、初めてのことなんですねー


星の質量は太陽の10分の1以下から100倍以上とさまざまです。

それら多様な星々が、
どのようにして生まれるのか? 、質量の違いの原因は何か?
は、まだ解明されていません。

特に、進化が速く数も少ない大質量星(太陽の10倍程度以上の質量をもつ星)の形成は、
謎に包まれままでした。

大質量星形成領域は、
最も近いオリオン座大星雲でも地球から約1500光年と遠く、
また大質量星は、
原始星が混み合った中で集団で生まれると考えられているので、
誕生のようすを詳しく調べるには、
高解像度での観測が必要になるんですねー

今回の研究では、さそり座の方向9500光年彼方にある、
ひじょうに明るい赤外線源“IRAS 16547-4247”を、アルマ望遠鏡で観測。

これまで、この領域では、
若い星から噴出する一対のガス流、
さらに中央に位置する明るい天体以外に、
複数の電波源が見つかっていたからです。

ただ、“IRAS 16547-4247”が放つ光は、太陽のおよそ6万倍で、
太陽質量の1300倍ものガス雲に埋もれています。

ここで、いくつもの大質量星が生まれているようなんですが、
観測によりそれを確かめ、
大質量原始星の周りにあるガスの運動を明らかにすることは、
これまでの望遠鏡の解像度では不可能でした。
“IRAS 16547-4247”の周囲にあるガスの分布(イメージ図)。
中心部から上下と左右にガス流が噴き出し、
周囲のガスが押しのけられて風船のような構造が作られている。
過去の観測で見つかった、細長いガス流も描かれている。

なので、ガスの構造と動きを明らかにするために、
チリと一酸化炭素、メタノールの分子が放つ電波を観測。

そして、チリの観測からは、
この領域の中心部に、それぞれ太陽の10倍から20倍程度の質量をもつ、
高密度でコンパクトなガス雲が存在する存在することが分かります。

これは、生まれつつある巨大な星を、
繭のように取り囲むガス雲と考えられています。

一酸化炭素分子の観測からは、
これまでの観測で南北方向に、ぼんやりと広がって見えていたガス流が、
南北と東西に伸びる2組のガス流であることが明らかになることに…

1つの原始星からは、一対のガス流しか生じないと考えられているので、
この領域では確かに、複数の原始星が同時に形成されていることになるんですねー

さらに、“IRAS 16547-4247”におけるメタノール分子の分布も描き出されています。

通常、チリの表面で形成されるメタノール分子は、
何らかの原因で温度が上昇すると表面から放出されて気体になり、
電波を発するようになります。

メタノール分子の砂時計型の分布は、
一酸化炭素で見えているガス流の縁と一致していることから、
原始星から噴き出すガスが周囲のガスとぶつかることで、
温度が上昇して気体になったものと考えられます。

こうした砂時計構造は、小質量原始星の周りではよく見つかるのですが、
大質量星形成領域で見つかるのは、今回が初めて。

一酸化炭素で見えているガス流の先に、
以前発見された、
メーザー(位相のそろったひじょうに強力な電波が放射される現象)が位置するので、
このメーザーは、高速ガス流が周囲のガスに衝突したエネルギーで輝いているようです。
ガスの分布をメッシュで表現した画像。
中心にあるオレンジ色のピーナッツ型構造が、
アルマ望遠鏡で見つかった高密度ガス雲。
上下に伸びる青色の大きなラグビーボール状構造が、
過去の観測で見つかった大きなガス流、
黄緑色と紫色の構造がアルマ望遠鏡による観測で発見されたガス流。