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チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に予想外の発見! 磁場は存在しない…

2015年05月22日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
ヨーロッパ宇宙機関の彗星周回探査機“ロゼッタ”のミッションにより、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に、磁場が存在しないことが分かりました。

昨年11月に、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着離した、
実験機“フィラエ”による測定では、
同彗星の核が磁気を帯びている証拠を見つけられなかったんですねー
彗星周回探査機“ロゼッタ”から切り離された、
実験用着陸機“フィラエ”のカメラがとらえた、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。

母船の彗星周回探査機“ロゼッタ”から、
7時間かけて20キロ下の彗星に降下した“フィラエ”は、
荒っぽい着地を行うことになります。

“フィラエ”は、地球上では重さ100キロでも、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の弱い重力の中では、
羽毛より軽くなるんですねー

このため、固く凍った彗星表面で数回バウンドし、
暗い溝の中に傾いた状態で、ようやく止まることになります。

でも、このアクシデントは、
結果的に、今回の研究にとって大きな幸運をもたらすことに…

彗星表面を横切る予定外の飛行により、
表面に接触した4か所と、表面から上のさまざまな高度で、
“フィラエ”は正確な磁場観測データを収集。

このデータを分析した結果、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、
著しく非磁性の天体であることが分かりました。


ただ、この発見により、
彗星や他の太陽系天体の形成に関する主要理論が、
否定される可能性が出てきたそうです。

それは測定結果が、一部で提唱されているように、
「惑星形成の重要段階に磁気力が関与している」わけではない可能性を、
意味するからでした。

これまでの仮説では、太陽、小惑星、彗星、衛星、惑星などは、
鉄の一種である磁鉄鉱の微粒子が大半を占める、
チリとガスが渦巻く円盤“原始惑星系円盤”から、形成されたと考えられています。

この仮説によると、
ミクロレベルでは、原始惑星系円盤の磁場が物質を凝縮させ、
原始天体形成の一助になったとされています。

でも、それ以降の物質降着段階で、
磁気力が、どのような役割を担ったかは不明なんですねー

天体が直径数百メートルから数百キロへと巨大化し、
重力が支配的な力になる以前の惑星形成の中間段階に、
磁気力が関与していたかもしれないことは、
一部の説で示唆されていたことでした。

なので、“フィラエ”の測定結果は、
この説を否定するかもしれないということです。

ただチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が、
全ての彗星核を代表するのかどうか、という問題は残るのですが…

磁気力が、
「原始太陽系では、これまで考えられていたよりもはるかに小さい」
ものだったのかもしれませんね。