宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

なぜ、コンパクトな楕円銀河は放浪するの?

2015年06月10日 | 宇宙 space
宇宙では何十億という惑星や恒星が、生まれ故郷を離れてさすらっています。
でも今回、銀河がまるごと放浪者の仲間入りをしたんですねー
アンドロメダ銀河(M31)の中心部の右下に写っている、
輪郭のぼやけた丸い天体がコンパクト楕円銀河M32。
M32はM31の伴銀河だが、ほかの放浪するコンパクト楕円銀河と同様、
激動の過去を持つのかも…

今回発表された論文によると、
コンパクトな銀河は、重力の作用によって故郷の銀河団から、
はじき出される場合があるんですねー

そして、コンパクト楕円銀河と呼ばれる銀河は、
星の密度が高く、ボールのような形をしていることが多いそうです。

また、ほかの銀河に比べて、
かなり小さく、星の数はせいぜい数十億個。
私たちの銀河系は、平均的な銀河で約1000億個の星があります。


コンパクト楕円銀河は、実は非常に珍しく、
2013年までに、30個程しか見つかっていませんでした。

さらに、その全てが大きい銀河団の中心付近にある、
巨大銀河のそばで見つかっているんですねー

ところが、2年前に発見されたコンパクト楕円銀河は、
近くに大きい銀河が見当たらず…

宇宙には、こうした「はぐれ者」銀河が、ほかにもあるのか?
それとも、この銀河だけが特別な存在なのか? が謎だったんですねー

研究では、放浪するコンパクト楕円銀河を、さらに11個記録。
いずれも、最も近い銀河団から何百光年も離れたところで見つかっています。

このようなコンパクト楕円銀河は、
はるかな昔に銀河同士が極端に接近したときに出来たと考えられています。

何億年も前に、小さい銀河が大きい銀河の重力に引き寄せられ、
外層部をはぎ取られた結果、コンパクトな裸の中心部だけが残ることに…

その後、ほかの2つの大きな銀河との重力相互作用によって、
銀河間空間に放り出され、
放浪するコンパクト楕円銀河になったというシナリオです。

同様の過程は、
私たちの銀河系の中心付近でも、
小さいスケールで起こると考えられています。

  コンパクト楕円銀河が、
  生まれ故郷の銀河団を追われて放浪の旅に出る(イメージ図)。
  左:コンパクト楕円銀河の進路に渦巻銀河が近づいてくる。
  中:侵入してきた銀河の重力作用を受け、コンパクト楕円銀河が軌道を変える。
  右:銀河団から弾き出され、
    侵入してきた銀河は、銀河団の中心にある巨大銀河団に飲み込まれてしまう。

銀河の中心部にある超大質量ブラックホールが、
「連星系の2つの星の一方を弾き飛ばし、他方を飲み込む」というものがあります。

これは、銀河団からコンパクト楕円銀河を弾き飛ばすのと同じ現象が、
異なるスケールで起きるということなんですねー


研究チームでは今回の発見が、
ダークマターの理解に役立つかもしれないと考えています。

それは、ダークマターは、ほとんどの銀河にあって、
その安定を維持する役割を果たしているからです。

でもコンパクト楕円銀河には、
ダークマターは、少ししか存在しないと考えることができますね。