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モバライダー mobarider

太陽系近くの起源が明らかに! 25年も前のデータから分かってきたこと

2015年11月23日 | 宇宙 space
衛星“ヒッパルコス”のデータから、
太陽系近傍に存在する高温大質量なOB型星の3次元立体分布図が作られました。

これにより、太陽系のお隣さんにあたる領域に、
新しい星のグループの存在が明らかになります。

さらに、オリオン座の星の起源に光が当てられたほか、
これまで知られてきた“グールド帯”は、
存在そのものに疑問が投げかけられているんですねー


星の位置や運動を観測

“ヒッパルコス”は、
1989年に打ち上げられたヨーロッパ宇宙機関の位置観測衛星です。

1993年まで観測を続け、
星々の位置や運動の高精度なデータをもたらしてくれたんですねー

“ヒッパルコス”の観測データからは2次元の地図が作成され、
太陽系の近傍に関する理解や知識は大きく変わることになります。

でも、2次元に投影した地図では、
見かけの構造が現れてしまったり、反対に重要な構造が隠れたりしてしまうので、
3次元宇宙のすべての特徴は表せませんでした。


スペクトル型

太陽の光をプリズムに通すと、虹の七色にわかれますよね。
これは他の恒星からの光でも同じです。

この色の系列をスペクトルと言い、
色は紫、藍、青、緑、黄、だいだい、赤と中間の色を含めて順番に並んでいて、
光の波長の順(短い方から長い方へ)なんですねー

なのでスペクトルとは、
光(波)を波長ごとに分解したときの成分ととらえることもできます。

太陽のスペクトルをよく見ると、
ところどころに黒い線(暗線)が入っているのが分かります。

これをフラウンホーファー線と言い、
この1本1本の黒い線は、太陽の大気中にある特定の原子(やイオン)に対応しています。

太陽の大気中の原子(やイオン)が、
特定の波長の光を吸収するため黒い線ができます。

もちろん他の恒星からのスペクトル中にも、
このようなフラウンホーファー線を見ることができます。

なので、フラウンホーファー線の位置によって、
恒星の大気中に、どのような原子が存在しているのかが分かるんですねー

スペクトル型は、恒星をその発光のスペクトルの種類や強さによって分類したもので、
恒星の表面温度とともに恒星の色とも深く関係しています。

今回の研究で行ったのは、
太陽から約1500光年以内にあるスペクトル型がOやBの恒星“OB型星”の、
3次元分布図作成。

OB型の恒星”には、オリオン座の三ツ星やリゲル、しし座レグルスなどがあり、
太陽は近すぎて色がよく分かりませんが、
遠くから見れば黄色に見えるG型の恒星になります。

これにより、2次元で見たときとの違いが示され、
高温星の分布に新たな構造があることや、
OB型星がどのように形成されたのかが分かってきます。
(左)天の川銀河(イメージ図)、
(右)太陽系近傍のOB型星の分布を示した3次元立体図。


太陽系近くにある3つの巨大な流れ

太陽系の近傍には、
高密度の星団とOB型星がゆるく集まってできた、
3つの巨大な流れのような構造があるようです。

1つ目の構造は、
“さそり座”から“おおいぬ座”まで達する1100光年以上にわたるもので、
6500万年以上の星形成の歴史があると見られています。

“ぼ座”にある2つ目の構造は、500光年以上の範囲に広がっていて、
その歴史は3000万年ほどと考えられています。

そして、“オリオン座”に位置する3つ目の構造が、
最も重要な意味を持つようです。


巨大な流れから分かった星の起源

“オリオン座”にある、
地球から250~800光年の距離に位置する5つのOB型星は、
これまで起源が謎で、約1300光年の距離にある「オリオン座大星雲ではない」と、
考えられてきました。

でも、3つ目の構造の発見によって
遠く離れたこれらの星々は、実は1000光年以上の長さを持つ、
2500万年の星形成史がある巨大な構造の一部らしいという、
答えが出ることになります。

さらに研究チームでは、
“オリオン座”の赤色巨星であるペテルギウスについても発表。

これまで、よく分かっていなかったペテルギウスの起源が、
新たに発見したOB型星のグループ“Taurion”だということです。

また、これまで“グールド帯”として知られてきた構造が、
実は幻影かもしれないという内容も発表されています。

これまで“グールド帯”は、
長さ3000光年にわたる不完全な環状構造を持つOB型星の集まりだと、
思われてきました。

でも、これは2次元に投影した結果表れた見せかけの構造なんだとか…
“グールド帯”は、2次元投影が見せるものをだますという完璧な例だそうです。

今回の研究では、25年も前の“ヒッパルコス”のデータが、
現在の技術を使うことで研究に恩恵をもたらしてくれること、
そして3次元立体視の可能性を、はっきりと示す結果になりました。

ただ、太陽系近傍の本当の姿を明らかにするには、
現在のモデルでは不十分…

形成から進化にいたるまで、
まだまだ多くのことを学ぶ必要があります。
研究は始まったばかりですね。


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