岡山天体物理観測所などの観測から、
金属量過剰を示す3つの太陽型恒星の周りに、計5つの系外惑星が発見されました。
中心星から遠く離れた公転周期の長い惑星は、
検出例が少なく、こうした惑星系の形成を理解するうえで重要な情報になるようです。
高金属量の星
今回の研究を行ったのは、
国立天文台、東京工業大学、アメリカ・エール大学を中心とするグループ。
岡山天体物理観測所の口径188センチ望遠鏡と、
ハワイにある“すばる望遠鏡”と“ケック望遠鏡”を用いて、
高金属量星の周りの系外惑星探査を進めてきました。
金属量とは、恒星大気中に含まれる重元素(水素とヘリウム以外の元素)の量になります。
研究グループでは太陽に近い温度の主系列星の中でも、
とくに鉄の含有量が高い星を中心に惑星探査を進めています。
なぜ鉄の含有量かというと、
高金属量の恒星は、惑星が存在する確率がより高く、
さらに最近の研究では惑星形成の現場になる原始惑星系円盤も、
金属量によって特徴に違いがあるという指摘があるからです。
なので惑星形成を理解する上で、高金属量の星は興味深い対象になっているんですねー
年老いた準惑星“HD 1605”
アンドロメダ座の7.5等級の恒星“HD 1605”は、
年齢が約46億歳、質量は太陽の1.3倍、直径は太陽の3.8倍と見積もられた、
やや年老いて進化した“準巨星”という分類の恒星です。
この星の周りには2つの惑星が検出されています。
2つの惑星の軌道がほぼ円形なので、
惑星の形成後に、お互いの重力や周りの星々から、
重力の影響を長い間受けていないと考えられています。
でも、この惑星系の外側に伴天体が存在していることが分かるんですねー
遠くの伴天体は、
内側の惑星の軌道を乱してしまう(古在機構が働く)可能性があるのですが、
軌道が乱された形跡は見られず…
どうやら、この惑星系は、
外側の伴天体が、どのように内側の惑星軌道に影響するのかを知るうえで、
重要な手がかりとなるようです。
太陽よりやや熱い“HD 1666”
F型星になる、くじら座の8.2等級の恒星“HD 1666”は、
太陽(G型星)よりもやや熱い主系列星です。
年齢はおよそ18億歳、質量は太陽の1.5倍、直径は太陽の約2倍と推定されています。
この恒星には惑星が1つ検出されています。
質量が太陽の1.5倍以上の主系列星は、自転速度が非常に速いものが多く、
視線速度法による惑星探索は困難になります。
なのでこの惑星系は、
アプローチが困難な重い主系列星周りでの惑星の姿を垣間見ることができる、
貴重なサンプルといえます。
ただ、検出された惑星は非常に質量が大きく、軌道が大きく歪んでいたんですねー
この惑星系で考えられることは、
形成直後に同時に存在した惑星同士の重力で、お互いを弾き飛ばし、
系外に放り出されたり中心星に落ちてしまったりしたこと。
結果、「歪んだ軌道の惑星が1つだけ残った」
という形成シナリオ(惑星散乱)が考えられます。
“HD 1666”は金属量が非常に高いので、惑星の材料になる個体物質が多いと考えられ、
惑星がいくつも同時に形成できる余地があります。
このことも惑星散乱シナリオと合っているんですねー
2つの巨大惑星を持つ“HD 67087”
ふたご座の8.2等級の恒星“HD 67087”もF型の主系列星です。
年齢はおよそ15億歳、質量は太陽のおよそ1.4倍、直径は太陽の1.6倍と推定されています。
この恒星では、2つの巨大惑星が検出されました。
この惑星系で着目された点は、
外側の惑星だけが高い離心率を示している(軌道が細長く楕円である)ことです。
惑星散乱シナリオ(くじら座の惑星系と同じ)では、
惑星同士の重力で離心率を大きく上昇させるのですが、
外側だけが大きく歪んだ軌道を持つことについての説明は難しいんですねー
一方、古在機構(アンドロメダ座の惑星系と同じ)による軌道進化では、
伴天体からの重力を強く受ける外側の惑星の軌道だけが歪んでいることを、
説明できる可能性があるものの、そうした伴天体はなさそうでした。
また、アンドロメダ座の惑星系では、
伴天体の存在が示唆されるたにもかかわらず惑星は円軌道であり、
ふたご座の惑星系と合わせて考えると、
それぞれ理論的に予想される進化とは、対照的な特徴を持っていることになります。
これらの惑星系は、伴星の有無と惑星の軌道進化への影響を調べるうえで、
極めて重要な手がかりになると期待されています。
さらに精密な軌道決定も重要になります。
岡山天体物理観測所による継続的な観測と、
研究グループによって2004年に開始された国際プロジェクト“N2Kコンソーシアム”で、
10年以上にわたり蓄積されたデータは、長周期の惑星探査において、
世界的にも非常に大きなアドバンテージとなっています。
それは、中心星から遠く離れた惑星については、
周期が非常に長いため観測が進まず、まだ分からないことが多いからです。
研究グループでは、今後も継続的に観測を進めていくようですよ。
こちらの記事もどうぞ ⇒ 1万3000光年彼方の系外惑星
金属量過剰を示す3つの太陽型恒星の周りに、計5つの系外惑星が発見されました。
中心星から遠く離れた公転周期の長い惑星は、
検出例が少なく、こうした惑星系の形成を理解するうえで重要な情報になるようです。
高金属量の星
今回の研究を行ったのは、
国立天文台、東京工業大学、アメリカ・エール大学を中心とするグループ。
岡山天体物理観測所の口径188センチ望遠鏡と、
ハワイにある“すばる望遠鏡”と“ケック望遠鏡”を用いて、
高金属量星の周りの系外惑星探査を進めてきました。
金属量とは、恒星大気中に含まれる重元素(水素とヘリウム以外の元素)の量になります。
研究グループでは太陽に近い温度の主系列星の中でも、
とくに鉄の含有量が高い星を中心に惑星探査を進めています。
なぜ鉄の含有量かというと、
高金属量の恒星は、惑星が存在する確率がより高く、
さらに最近の研究では惑星形成の現場になる原始惑星系円盤も、
金属量によって特徴に違いがあるという指摘があるからです。
なので惑星形成を理解する上で、高金属量の星は興味深い対象になっているんですねー
年老いた準惑星“HD 1605”
アンドロメダ座の7.5等級の恒星“HD 1605”は、
年齢が約46億歳、質量は太陽の1.3倍、直径は太陽の3.8倍と見積もられた、
やや年老いて進化した“準巨星”という分類の恒星です。
この星の周りには2つの惑星が検出されています。
![]() |
2つの惑星を持つ太陽系外惑星系(イメージ図) |
2つの惑星の軌道がほぼ円形なので、
惑星の形成後に、お互いの重力や周りの星々から、
重力の影響を長い間受けていないと考えられています。
でも、この惑星系の外側に伴天体が存在していることが分かるんですねー
遠くの伴天体は、
内側の惑星の軌道を乱してしまう(古在機構が働く)可能性があるのですが、
軌道が乱された形跡は見られず…
どうやら、この惑星系は、
外側の伴天体が、どのように内側の惑星軌道に影響するのかを知るうえで、
重要な手がかりとなるようです。
太陽よりやや熱い“HD 1666”
F型星になる、くじら座の8.2等級の恒星“HD 1666”は、
太陽(G型星)よりもやや熱い主系列星です。
年齢はおよそ18億歳、質量は太陽の1.5倍、直径は太陽の約2倍と推定されています。
この恒星には惑星が1つ検出されています。
質量が太陽の1.5倍以上の主系列星は、自転速度が非常に速いものが多く、
視線速度法による惑星探索は困難になります。
なのでこの惑星系は、
アプローチが困難な重い主系列星周りでの惑星の姿を垣間見ることができる、
貴重なサンプルといえます。
ただ、検出された惑星は非常に質量が大きく、軌道が大きく歪んでいたんですねー
この惑星系で考えられることは、
形成直後に同時に存在した惑星同士の重力で、お互いを弾き飛ばし、
系外に放り出されたり中心星に落ちてしまったりしたこと。
結果、「歪んだ軌道の惑星が1つだけ残った」
という形成シナリオ(惑星散乱)が考えられます。
“HD 1666”は金属量が非常に高いので、惑星の材料になる個体物質が多いと考えられ、
惑星がいくつも同時に形成できる余地があります。
このことも惑星散乱シナリオと合っているんですねー
2つの巨大惑星を持つ“HD 67087”
ふたご座の8.2等級の恒星“HD 67087”もF型の主系列星です。
年齢はおよそ15億歳、質量は太陽のおよそ1.4倍、直径は太陽の1.6倍と推定されています。
この恒星では、2つの巨大惑星が検出されました。
この惑星系で着目された点は、
外側の惑星だけが高い離心率を示している(軌道が細長く楕円である)ことです。
惑星散乱シナリオ(くじら座の惑星系と同じ)では、
惑星同士の重力で離心率を大きく上昇させるのですが、
外側だけが大きく歪んだ軌道を持つことについての説明は難しいんですねー
一方、古在機構(アンドロメダ座の惑星系と同じ)による軌道進化では、
伴天体からの重力を強く受ける外側の惑星の軌道だけが歪んでいることを、
説明できる可能性があるものの、そうした伴天体はなさそうでした。
また、アンドロメダ座の惑星系では、
伴天体の存在が示唆されるたにもかかわらず惑星は円軌道であり、
ふたご座の惑星系と合わせて考えると、
それぞれ理論的に予想される進化とは、対照的な特徴を持っていることになります。
これらの惑星系は、伴星の有無と惑星の軌道進化への影響を調べるうえで、
極めて重要な手がかりになると期待されています。
さらに精密な軌道決定も重要になります。
岡山天体物理観測所による継続的な観測と、
研究グループによって2004年に開始された国際プロジェクト“N2Kコンソーシアム”で、
10年以上にわたり蓄積されたデータは、長周期の惑星探査において、
世界的にも非常に大きなアドバンテージとなっています。
それは、中心星から遠く離れた惑星については、
周期が非常に長いため観測が進まず、まだ分からないことが多いからです。
研究グループでは、今後も継続的に観測を進めていくようですよ。
こちらの記事もどうぞ ⇒ 1万3000光年彼方の系外惑星