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天王星や海王星の作られ方が分かるかも? アルマ望遠鏡がとらえた巨大氷惑星の形成現場

2016年09月21日 | 宇宙 space
若い恒星の周囲に広がるガスやチリでできた円盤をアルマ望遠鏡で観測したところ、
円盤の中の暗い隙間の1つに、小さなチリが多く存在していることが分かりました。

ここに何があるのかを調べて見ると、
どうやら海王星程度の大きさの巨大氷惑星が存在しているようです。
  2万5000光年彼方に、天王星のような巨大氷惑星を発見

惑星が作られる現場

系外惑星の探査では、ここ数年で様々なタイプの惑星が数多く発見されています。

でも、それらの惑星が形成される過程を調べるには、
若い恒星を取り巻くチリやガスの円盤を観測することが必要になるんですねー

それは、こうした“原始惑星系円盤”の中で惑星が生まれるからです。

  原子惑星系円盤とは、
  新しく生まれた恒星の周囲を取り巻く濃いガスやチリが回転している円盤。


今回の研究では、約175光年彼方の恒星“うみへび座TW星”をアルマ望遠鏡で観測。

年齢1000万歳と若いこの星の周りには原始惑星系円盤が存在し、
LPレコードの溝のような複数の隙間も見つかっています。

このような隙は、円盤の中に惑星が存在すると作られることが理論的に予測されています。
なので隙間の構造を調べれば、惑星形成の過程や様子が分かるはずなんですねー
“うみへび座TW星”と隙間構造


電波でチリを観測

研究では半径22天文単位のよく目立つ隙間に着目し、2波長の電波で観測を行っています。

  1天文単位は太陽から地球までの距離。

異なる周波数の電波の強度はチリの大きさに関係しているので、
強度を比較することで、円盤内のチリの大きさが場所によって、
どのように異なっているのかが分かります。

そして観測から明らかになったのが、この隙間では大きいチリ(数ミリ)が少なく、
小さいチリ(数μミリ)が多く残っていることでした。

円盤内に惑星が存在し隙間を作っている場合、
円盤のガスとチリの相互作用によって、大きめのチリが隙間の中からはじき出され、
隙間の中には小さいチリのみが残ると予想されています。

今回の観測結果は、この予想と一致していたんですねー

観測結果と理論研究とを比較してみると、
惑星の重さは海王星より少し重いくらいであることもわかりました。
隙間構造と惑星質量の関係の予測線

さらに、中心星から22天文単位という距離は、
太陽系では天王星と海王星の軌道の間に相当することや、
“うみへび座TW星”が太陽とほぼ同じ重さだということを考えると、

この隙間で誕生している惑星は、
天王星や海王星とよく似た巨大氷惑星になる可能性が高いと考えられます。
“うみへび座TW星”と原始惑星系円盤、惑星のイメージ図

今後の研究で目指すのは、電波偏光をとらえる観測によって、
チリの大きさをより正確に見積もること。

また、隙間でのガスの量を調べるための観測では、
惑星の質量をさらに精度よく求めることもできるようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ これまでの理論と一致しない惑星の誕生