宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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“ロゼッタ”が彗星コマで起こる分子分解プロセスを解明

2015年06月25日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
ヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機“ロゼッタ”による観測から、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面から噴き出す水分子と二酸化炭素分子が、
急速に分解される原因が分かってきたんですねー

ただ、分解を引き起こしているのは、
これまで考えられてきた“太陽光”ではなく“電子”だったようです。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
2014年11月20日に31キロの距離から撮影

水と二酸化炭素ガスの観測

“ロゼッタ”は、2014年8月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着して以来、
彗星を周回しながら複数の搭載機器で、データを集めてきました。

搭載機器の1つ分光器“Alice”を使って、
彗星の大気の化学的組成を遠紫外線で調査。

すると、彗星のコマに存在する水と二酸化炭素の大半は、
彗星表面からの噴出に由来するものであることが示されることになります。

なので今回の研究では、
太陽によって温められて彗星表面から噴出する水と二酸化炭素ガスの性質に、
スポットを当てられることになります。

そして、彗星核近くの水分子が分解してできた水素原子と酸素原子、
および二酸化炭素分子が分解してできた炭素原子からの放射にも注目。

その結果、分子の分解プロセスが2段階であることが分かってきたんですねー


分解は太陽光でなく分子だった

太陽からの紫外線が、彗星のコマに存在する水分子に当たると、
エネルギーの高い電子が放出されて水分子が電離します。

放出された電子はコマに存在する別の水分子に当たり、
分子は2個の水素原子と1個の酸素原子に分かれ、原子がエネルギーを得ることに。

“Alice”で検出したのは、この原子が放射した特徴的な紫外線でした。

同様に、電子が衝突し分解された二酸化炭素分子からの炭素原子が放つ紫外線、
これも観測されたんですねー

この結果は、彗星のごく近くで探査を行って初めて分かったこと。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、今年の8月に太陽に最接近します。
なので、今後ますます活動が活発になって行くことになります。

“ロゼッタ”は、その活動を間近でとらえ続けるんですねー
どんな新しい発見があるのか? 楽しみですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 彗星探査機“ロゼッタ”は、一時制御不能に陥っていた

無人補給船“こうのとり”が2年ぶりに宇宙へ

2015年06月24日 | 宇宙 space
無人補給“こうのとり”5号機を搭載したH-IIBロケット5号機が、
2015年8月16日に打ち上げられます。

“こうのとり”の打ち上げは、
今回で5機目になり、4号機以来2年ぶりになるんですねー

打ち上げの時刻

打ち上げ時刻は、現時点では22時01分ごろに設定。

ただ、より正確な時刻は、
打ち上げ直前の国際宇宙ステーションの軌道によって
決定されます。

また、打ち上げが可能な予備期間として、
8月17日から9月30日までが確保されています。

この間の打ち上げ日、時刻については、国際宇宙ステーションの運用に係わるので、
国際間の調整によって決定されることになります。


H-IIBロケットも2年ぶりの打ち上げ

H-IIBはJAXAと三菱重工が開発したロケットで、
主に宇宙ステーションへ補給を行う、
“こうのとり”を打ち上げるために造られました。

当時すでに運用されていたH-IIAロケットを基に、
より打ち上げ能力を増すため、
  第1段ロケット・エンジンを2基搭載
  タンクを太くして容積を増やす
などの改良が加えられているんですねー

1号機は2009年9月11日に打ち上げられ、
これまでに4機すべてが成功を収めています。

1号機から3号機まではJAXAが運用を担当していたのですが、
4号機からは三菱重工が担当し、
H-IIAと同じ“商業ロケット”として扱われています。

5号機では4号機までと比べ、コストダウンが図られていて、
画像圧縮伝送装置の搭載数が2個から1個になるなど、
H-IIAと同様の改良が施されています。


打ち上げ後の“こうのとり”

“こうのとり”5号機は打ち上げ後、
高度200~300キロの楕円軌道に投入されます。

そして、あらかじめ登録しておいたコマンドシーケンスや、
姿勢制御系の自動シーケンスなどによって、
高度350~460キロの国際宇宙ステーションへ。

国際宇宙ステーションに十分接近すると相対停止して、
ロボットアームで引き寄せられてドッキング。
国際宇宙ステーションのロボットアームで
掴まれた“こうのとり”4号機

食料品や水、衣類、実験装置などの補給物資が、
運び込まれることになります。

その後、国際宇宙ステーションから発生した廃棄物を積み込み、
大気圏に再突入して、機体ごと燃え尽きることになります。


現在、国際宇宙ステーションへの物資輸送は、
日本・アメリカ・ロシアの3か国で行われています。

その中で“こうのとり”は、
約6トンという世界最大の補給能力を持っています。

大型装置を運ぶ唯一の定期便として、
国際宇宙ステーション運用の根幹を支えているんですねー

また、“こうのとり”はH-IIBでしか打ち上げられないので、
H-IIBと同じく今回が5機目の打ち上げになります。

2013年8月4日に打ち上げられた4号機以来、約2年ぶりの打ち上げになります。

“こうのとり”5号機の搭載物などの詳細は、今後発表されるようです。


H-IIBロケット5号機による
宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機(HTV5)の打上げについて
http://www.jaxa.jp/press/2015/06/20150609_h2bf5_j.html


こちらの記事もどうぞ ⇒ H-2Bロケット 3号機打ち上げ (小さな衛星をのせて…)

日本がブラックホールの直接検出へ挑戦!

2015年06月23日 | 宇宙 space
大阪府立大学などの研究グループが、
国内の複数の電波望遠鏡を用いて観測を行い、
日本初になる230GHz帯のVLBI観測実験を成功させました。

これにより日本も、
ブラックホールの直接検出に、大きく貢献すると期待されているんですねー


ブラックホールを検出するには

ブラックホールの存在は、
周囲の天体の運動などから、間接的に確認されているのですが、
まだ、直接的に観測されてはいません。

その存在を確認する有力な方法の1つとして、
遠く離れた複数の電波望遠鏡を用いる、
超長距離基線干渉計“VLBI”という手法が期待されているんですねー

VLBIでは、構成する望遠鏡間の最長距離と、扱う電波信号の周波数に比例して、
対象をどれだけ細かく識別できるかを表す指標“角度分解能”が向上します。

そして、ブラックホールを検出するのには、
230GHz以上の周波数が必要になると計算されています。


日本が行った実験とは

大阪府立大学が野辺山宇宙電波観測所で開発・運用している、
“OPU 1.85m望遠鏡”と“SPART 10m望遠鏡”という2つの電波望遠鏡を使用。
日本初になる230GHz帯での観測実験に成功したんですねー
国立天文台 野辺山観測所におけるVLBI観測

これまで国内のVLBI観測の実績は、86GHz程度までと低く、
世界水準と比べて遅れをとっていました。

なので今回の成果は、
国内のVLBI技術水準を引き上げることになります。

さらに、ブラックホール検出という世界的な研究分野に、
日本が大きく貢献できることを示したことになるんですねー


今回のような2台でのVLBIでは、
弱い信号を検出する能力は極めて低いのですが、
構成する望遠鏡が多くなるほど高くなっていきます。

ブラックホールの検出には、
まだまだ多くの望遠鏡の協力が必要になりますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 銀河中心ブラックホールのそばで、これまでにないフレア現象

ガンマ線バーストが起きそうで起きない超新星

2015年06月22日 | 宇宙 space
超新星爆発には、
宇宙最大規模の爆発現象になるガンマ線バーストが、
発生するものと、しないものがあります。

両者の中間にあたる天体は、長い間推測されてきたものの未発見のまま…

でも、2012年に見つかった超新星が、
この天体に相当するのかもしれないんですねー


2012年2月に、
オリオン座の銀河“NGC 1729”に出現した超新星“SN 2012ap”は、
重力崩壊型(核崩壊型)超新星の一種になる“Ic型超新星”です。

“SN 2012ap”は、
ガンマ線バーストの発生につながると思われる、
多くの特徴を持っているのですが、
これまで、そのようなバーストを起こしていない超新星になります。

どうやら、ガンマ線バーストが発生する超新星と、
そうでない超新星との間のギャップを埋める天体のようなんですねー
超新星出現前の銀河“NGC 1729”(左)。
印の箇所に出現した超新星“SN 2012ap”(右)

重力崩壊型の超新星爆発では、中心核は中性子星やブラックホールになり、
それ以外の物質は、宇宙空間にばらまかれます。

一般的な場合、
ばらまかれる物質は、ほぼ球対象に広がるのですが、
その速度は遅く、ガンマ線バーストは見られません。

でも低確率ながら、
中性子星やブラックホールを取り巻く降着円盤に、
物質が落ち込むことがあり、
この場合には、降着円盤の両端から超高速ジェットが放出されます。

これまで、ガンマ線バーストが発生する超新星爆発では、
この超高速ジェットと思われるガスの運動が見られることや、
ガスの速度が日数の経過に伴って、
減速していくという特徴が知られていました。
普通の重力崩壊型超新星(左)、
“SN 2012ap”のような中間型超新星(中)、
降着円盤と光速に近い両極ジェットにより、
ガンマ線バーストが生成される(右)

“SN 2012ap”の場合も超高速ジェットが見られ、
しかも日が経つにつれて、
ジェットが減速していくという特徴もとらえられました。

にもかかわらず、“SN 2012ap”からはガンマ線バーストが見られていません。

このことは超新星の多様性を示しているのかもしれません。

ひょっとすると、ジェットの中の粒子の重さが、
ガンマ線バースト発生の有無を分ける要因の一つなのかもしれませんね。

“すばる望遠鏡”で撮影された“はやぶさ2”の目的地

2015年06月21日 | 小惑星探査 はやぶさ2
ハワイのマウナケア山の頂上にある“すばる望遠鏡”が撮影した、
小惑星“1999 JU3”の写真が公開されました。

“1999 JU3”は1999年に発見された地球近傍小惑星で、
大きさは1キロ弱と見られています。

そして昨年の12月に打ち上げられた
小惑星探査機“はやぶさ2”の目的地でもあります。

このときの“1999 JU3”は、
地球からおよそ2億4000万キロ離れた距離にあり、
明るさは非常に暗い22.3等ほど…

でも、集光力に優れた“すばる望遠鏡”によって、
わずか30秒の露出時間で、
その姿を写し出すことができたんですねー

昨年の12月3日に打ち上げられてから半年が経った“はやぶさ2”は、
太陽を周回する軌道を順調に航行しています。

現在は、今年の12月3日に予定されている地球スイングバイに向けた、
イオン・エンジンの連続運転が完了したところ。

地球スイングバイとは、
地球の公転速度を利用して探査機の航行速度上げることと、
地球の重力を利用した軌道の変更を行う航法テクニックのことです。

これにより“はやぶさ2”は、
目的地の小惑星“1999 JU3”に向けた軌道に入ることができるんですねー

2018年の夏には小惑星“1999 JU3”に到着するようですよ。