akikoの「活動」徒然記

活動弁士佐々木亜希子の身の周りの出来事やふと感じたこと

茅ヶ崎館で観る『 不如帰 』映画上映会

2008-11-03 | 活弁
湘南庭園文化祭2008 茅ヶ崎館で観る徳富蘆花原作『 不如帰 』映画上映会
日本映画ゆかりの茅ヶ崎館で、文人徳富蘆花の名作『 不如帰 』がサイレントフィルムとトーキーで上映され、大正11年のサイレントフィルムに活弁をつけさせていただきました。

前日、北海道千歳空港からの最終便で帰り、深夜にイレギュラーで今週の「やぐちひとり(C)」のナレーション収録をし、帰宅してみれば1時半。朝の茅ヶ崎館へ向かう車の中ではうつらうつら…でしたが、茅ヶ崎の空気を吸って生き返りました。

明治31年に発表されベストセラーとなった小説『不如帰』はサイレント時代にもたくさん映画化されていますが、残っているのはおそらく大正11年の松竹蒲田作品だけ。浪子に、日本最初のスター女優栗島すみ子。彼女の相手役として人気を博した岩田祐吉が、川島武男。脚本・監督は、後に栗島の夫となる池田義臣(義信)。
現存するフィルムが本来の半分以下(8巻→3巻)のため、語りで補いつつの活弁。今回のために改めて原作を読みなおし、文体とともに明治の封建制や日清戦争中の上流階級の悲喜こもごもを味わうことができました。愛し合う二人が、病魔や家の制度や周囲の嫉妬、思惑に引き裂かれていく。しかし互いの愛の絆切れることなく死してなおともにと願う悲恋の物語は、時代が変わっても涙を誘います。
さて、この作品の中には、貴重な戦場の実写映像が日清戦争の旅順の戦いシーンとして使われています。某資料にはこれが「日清戦争の実写フィルム」とあるのですが、考えてみれば日清戦争は1894~95年。まだキネトスコープも日本に入っていない時期で、日露戦争(1904~05)の旅順(1905.1.1)での映像と考えるのが妥当なようです。「あの映像は日露戦争ですね」と仰った年輩のお客様には頭が下がります。

もう一篇上映された昭和7年のウエスタン・トーキー『不如帰』は、浪子を水谷八重子、武男を大日方伝が演じています。舞台を昭和7年に置き換えているせいか、二人の声のせいか、水谷八重子の健康的な印象のせいか、あまり薄幸の悲恋物語の感が薄く…。ただ、調度品や背景などは面白く観ました。片岡中将邸に使われているのが現在の目白クラブ(当時の学習院宿舎)らしい…とか。

今回も茅ヶ崎館は予約でいっぱい。お客様はほとんどが私よりはるかに人生の先輩で、二作品の映像を見ながら昔を懐かしんで下さっていました。
以前、この茅ヶ崎館での公演には、桑田圭祐さんのお姉さまもいらして下さり、声をかけて下さいました。とても明るく素敵な方で、楽しく会話したことが思い出されました。若くして亡くなられ残念です。

今回も誠にありがとうございました。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。


コメント (6)
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