ダイアモンド・オンラインで京都大学大学院工学研究科准教授の中野剛志さんが書いた米国丸儲けの米韓FTAからぜ日本は学ばないのか と言う論文を見ました。
中野さんはTPP反対で有名な方で、ネット上で彼の意見に賛成、反対の意見が良くでています。
私はTPP全体のことが判らないので、中立の立場でその概要を纏め勉強させて貰いました。 (黒字は私の意見です。)
・米韓FTAが参考になるのはTPPが実質的には日米FTAだから
米韓FTAもTPPと同じように、関税の完全撤廃に加えて、金融、投資、政府調達、労働、環境など、広くカバーしている。 (私も米国政府さえまともにコントロール出来ない金融、投資は原則反対、政府調達、労働、環境など日本の政策に関するものは日本の意志は反映させるべきだと書いてきました。)
・韓国は無意味な関税撤廃の代償に環境基準など米国製品への適用緩和を飲まされた
韓国が輸出できそうな工業製品についての米国の関税は、既に自動車は2.5%、テレビは5%程度しかない。しかも米国の2.5%の自動車関税の撤廃は、もし米国製自動車の販売や流通に深刻な影響を及ぼすと米国の企業が判断した場合は、無効になるという条件が付いている。 (日本は米国の条件を受け入れるのなら、日本も米国からの農産品の輸入についても同様の取り扱いをするとすべきと思います。)
韓国は、排出量基準設定について米国の方式を導入するとともに、韓国に輸入される米国産自動車に対して課せられる排出ガス診断装置の装着義務や安全基準認証などについて、一定の義務を免除することになった。 (前述のように環境意識の強い日本では、そのような米国の要求を受け入れたら、国内で猛烈な反発が起きるでしょう。)
・コメの自由化は一時的に逃れても今後こじ開けられる可能性大 (日本としては当然予想すべきだし、それを恐れて農業団体が反対しています。後は日本政府の決断です。)
農業協同組合や水産業協同組合、郵便局、信用金庫の提供する保険サービスは、米国の要求通り、協定の発効後、3年以内に一般の民間保険と同じ扱いになることが決まった。(私は金融、投資と同様にそれとよく似た性格をもつ保険サービスの米国化には反対です。)
・米韓FTAに忍ばされた、ラチェット規定やISD条項の怖さ さらに米韓FTAには、いくつか恐ろしい仕掛けがある。
その一つが、「ラチェット規定」だ。
ラチェットとは、一方にしか動かない爪歯車を指す。ラチェット規定はすなわち、現状の自由化よりも後退を許さないという規定である。
締約国が、後で何らかの事情により、市場開放をし過ぎたと思っても、規制を強化することが許されない規定なのだ。このラチェット規定が入っている分野をみると、例えば銀行、保険、法務、特許、会計、電力・ガス、宅配、電気通信、建設サービス、流通、高等教育、医療機器、航空輸送など多岐にわたる。どれも米国企業に有利な分野ばかりである。加えて、今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米国にも同じ条件を適用しなければならないという規定まで入れられた。 (前記のように金融、投資、保険などは対象に入れるのは反対、その他も日本はギブ・アンド・テイクの立場を堅守すべきだと思います。)
もう一つ特筆すべきは、韓国が、ISD(「国家と投資家の間の紛争解決手続き」)条項を飲まされていることである。
このISDとは、ある国家が自国の公共の利益のために制定した政策によって、海外の投資家が不利益を被った場合には、世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」という第三者機関に訴えることができる制度である。
しかし、このISD条項には次のような問題点が指摘されている。
a.審理の関心は、あくまで「政府の政策が投資家にどれくらいの被害を与えたか」という点だけに向けられ、「その政策が公共の利益のために必要なものかどうか」は考慮されない。
b.審査の結果に不服があっても上訴できない。
c.米韓FTAの場合には、このISD条項は韓国にだけ適用される
・ISD条項は米国とカナダとメキシコの自由貿易協定で導入され、国家主権が犯される事態がつぎつぎと引き起こされている。
要するに、ISD条項とは、各国が自国民の安全、健康、福祉、環境を、自分たちの国の基準で決められなくする「治外法権」規定なのである。気の毒に、韓国はこの条項を受け入れさせられたのだ。
(ISDは国の主権を冒すこと、著者が後記するように訴訟のテクニックに長けた米国企業や政府相手にする、法廷闘争に弱い日本の現状を考えると反対するしかありません。)
・ISD条項は毒まんじゅうと知らず、進んで入れようとする日本政府の愚
米国はTPP交渉に参加した際に、新たに投資の作業部会を設けさせた。米国の狙いは、このISD条項をねじ込み、自国企業がその投資と訴訟のテクニックを駆使して儲けることなのだ。日本はISD条項を断固として拒否しなければならない。 (前記のように投資に関しては絶対反対です。)
その理由は、日本企業がTPP参加国に進出した場合に、進出先の国の政策によって不利益を被った際の問題解決として使えるからだという。しかし、グローバル企業の利益のために、他国の主権(民主国家なら国民主権)を侵害するなどということは、許されるべきではない。(前記のように日本が自国の主権を護る以上相手国の主権も尊重するのが当然です。)
著者はその後、TPPの交渉で日本が得られるものなど、たかが知れているのに対し、守らなければならないものは数多くある。そのような防戦一方の交渉がどんな結末になるかは、TPP推進論者が羨望する米韓FTAの結果をみれば明らかだ。と持論を展開しています。
私は中野さんの論文をみてもまだTPP参加の良し悪しは判りませんが、唯一はっきりしているのは、もしTPP交渉に参加するのなら、千軍万馬の米国の交渉役に対して、日本の利益のために一歩も退かないタフ・ネゴシエイターを宛てるべきだと思います。
なにしろ米国は行き詰まり状態の普天間基地問題と搦めて、日本に対しTPPへの参加を迫ってきているのですから。
それにしても野田さんはこの厄介な問題を引き起こした鳩山さん、民主党政権を崖っぷちまで追い込んだ菅さんをを顧問に据えているのですから、何を考えているのでしょうね。
私は前にも書いたように、ネゴシエイターには道路公団民営化で多くの委員が辞めるなかで孤軍奮闘して一応の目途つけた猪瀬直樹さんのような人が出て来ないかなと思っているのですが、誰か良い人はいないものですかね。
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