15日の毎日放送で関口宏さんの司会、出演者は元国連事務次長の明石康さん、日本総合研究所の寺島実郎さん、「目撃 アメリカ崩壊」を書いた青木 冨貴子さん、「ルポ 貧困大国アメリカ」の堤 未果さんで米国の実情についてのレポートと討論があった。
出演者の著書のタイトルで見るようにかなり偏った放送だった。
中には米国の貧困者のための特別な教育システムの中に、イラク派遣の兵士をリクルートするシステムが組み込まれていること、そして心的外傷後ストレス障害(PTSD)に罹ったイラクからの帰還兵士が国家から放置されているなどショッキング例も記されていたが、ここでは日本にも関係ある印象に残ったものを取り上げ日本の実情と比べて見た。
[米国の抱える問題と日本]
・弱肉強食の社会
400人の富豪の総収入とその他の全国民の総収入が同じ
激増するホームレス、その中には金融経済の最前線で活躍した人達、中には元富豪と言われた人達もいる
日本:お互いに助け合ってきた農耕民族であり、そしてかっては一億総中流意識を持った経験をした日本人の性情として、このような弱肉強食の社会が受け入れられるのだろうか。
・医療格差
医療に関する大きな社会格差、高価な医療費が払えず自分で腕の傷跡を手術する人
日本:医療技術は米国にやや劣るが全国民が加入する健康保険で医療は完全ではないが安い受けられる。
後記高齢者医療制度で、保険料天引きがまた問題になっているが、どのようなシステムでも保険料は払わねばならぬことなど考えると、米国民から見れば羨ましいようなトラブルだろう。
・老後の生活資金
老後の生活資金として投資していた人が今回の株価暴落で落ち込む人達
日本:社保庁職員の怠慢のお蔭で年金問題がまだ燻り続けているが、昔のように子供たちからの仕送りで老後を過ごしていた人達は、仕送りなどなくても年金で不十分ながら何とかやって行ける。
構造改革を進めていた人達が、年金の国家の負担額を減らすために、老後に備えて自己責任での投資を勧めていたが、今回の株価暴落についてどう説明をするのだろう。
・米国型自由主義、グローバル経済の行き詰まり
自由主義経済、市場経済中心主義、金融の自由化と金の米国への還流、国内消費に頼ってきた米国経済の行き詰まり
日本:規制改革でタクシーが自由化されたが、タクシー会社の自由競争の結果、タクシーの台数の増加→収入減となったタクシー運転手の悲鳴に繋がっている。
地方自治体の競争見積が一般化した結果、零細下請け業者の競争激化→コスト削減→保護所帯の収入に劣る作業者の発生
市場経済中心主義→大企業の競争力強化→コスト削減のための派遣労働者の採用の増加→収入格差の発生と国民の総収入の減少→輸出からの転換を叫ばれている国内消費が進まないどろこか減少傾向
日本のバブル崩壊→企業立ち直りの資金提供のための貸出金利の引き下げ→銀行は自衛のために肝心の中小企業の貸し渋りをする一方で、投機資金への資金提供→政府は補正予算の中に中小企業への資金提供のため予算組み込み
官から民へ→不正業者の続発→官による監督の強化
などなどごく一部を取り上げただけだが、無制限の自由化、市場経済中心主義、官から民へにも大きな問題がある。
私は今までの小泉改革にも良い所があるが、理想論や経済や金融理論に走らず、もっと現実を見据えて日本人らしくきめの細かい配慮をし、もう少し節度のあるブレーキを効かせた構造改革、規制緩和や金融政策を進めねばならないと思う。
[米国の日本のこれから]
寺島実郎さん意見
・米国は武力では依然として世界一だが、経済面ではその弱体化、米国の一極集中から多極化、しばらくは極がなくなり多国間の話し合いで事が進んで行くのではないか
・米国は多くの問題を抱えているが、まだ他国から米国を目指してくる人が多いのも現実だ
・今回の英国を中心としするEUの金融危機の対処の仕方からみると自由主義経済一本槍の米国と違った方向を見せ始めている。これからの経済の中心はEUや日本、中国などの新興国の方に移って行くのではないか。
青木冨貴子さん、堤未果さんの意見
今の現状はブッシュさんを始めとする共和党の影響だ。今回の大統領選では人民の方を向いた民主党が勝利するのを祈っている。
[私の意見]
私は寺島さんの言うように、日本人の価値観から言えば、米国よりEUのほうがより近いような気がする。
日本はもっとEUのやり方を研究すべきだと思う。
私は6年8月にその場凌ぎの政治から抜け出すためにで、「永久に米国に依存してゆくのか」、「丸呑みのアメリカ型市場経済で日本が世界に勝てるのか」と書いてから、何度も米国主導の市場経済中心主義、経済面でも米国一本槍の日本の政策の再検討の必要性を書いてきた。
今回は米国の金融危機は米国中心の世界経済の変化の始まりかも知れないし、また何時かは米国が依然として世界の中心に戻るかもしれない。
然しはっきりしているのは、米国が永久に世界の中心であり続けることはないことだ。
もし米国が何時かぽしゃったときに、日本の世界での立場(ひょっとすると世界の孤児)はどうなるか考えておく必要があると思う。
今回の拉致問題での米国の日本に対する不誠実な対応に会っても、独立国としては外交問題は自国で処理するのは当然だから、今更米国を非難する訳にも行かず、そうかと言ってこれと言った具体的に打てる対策はない現状を見てもその必要性は明らかだ。
日本としては独立国として長い眼で見た長期戦略を研究しておく必要があるのではないか。
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参照:「その場凌ぎの政治から抜け出すために」シリーズ
石油問題と米国との関係の見直し
日本経済と社会問題の見直し
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ランクリ!
なぜアメリカが古代から中世の歴史を持つことなく世界の覇権を握るに至ったのか。なぜこれまで世界の中心であり続けることができたのか。なぜアメリカ革命は繁栄を築くことができ、対するフランス革命はファシズムと共産主義を生み出してしまったのか。建国思想、法と制度の哲学。自由とは何か⋯。
そのようなことを考えることなくステレオタイプなイメージに終始するならば、結局のところ私達日本人は歴史から何も学んでいないということではないでしょうか。
「あり余る黄金は、むしろ彼自身のからだを骨髄から腐らせる毒薬であります。外から来る強大な力がなくても、米国はいずれ近いうちに彼自身の内部から解体作用を始めるでありましょう」(米国恐るるに足らず/池崎忠孝 昭和四年)
むしろこういったゲームをやめない限りアメリカは変われないだろうという寺島さんのスタンスに近いのだと思います。はっきりと個人名で批判するのではなくシステムそのものを批判するジャーナリストは珍しいなと強い印象を受けましたね。
青木さんはそういう意味ではごく普通のアメリカ人の感覚に近いのではないでしょうか。