普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

安倍さんの再研究(ビジョンを持った首相待望論)

2007-10-15 07:19:08 | 安倍内閣

 福田さんが首相になり国会が始まった。
 彼の所信表明演説で何に重点にしようとしているのか良く判らなかったし、皆が予想したように、その国会運営は話し合いと言う名のクリンチ作戦だ。
 私に言わせれば、日本語の「抱きつき作戦」の方がよりぴったり来るような気がする。

 勿論、突然の首相指名やねじれ国会の現状、米国の北朝鮮への対応の変化など考えれば、彼の対応はそれなりの意味があり、その批判はまだ早すぎると思う。

 然し福田さんの登場で、またビジョンを持った首相の待望論が何となく起きつつあるようだ。
 昨日の日テレの朝の番組でも石原慎太郎さんと桜井よし子さんが出てきて今の政治家にビジョンがないことを嘆いていた。
 桜井さんは福田さんが所信表明演説で党是である、憲法改正や、教育などに触れなかったと言って、石原さんから今の情勢では仕方がないとたしなめられていた。

 その観点から改めて安倍さんの研究をしてみたい。

[安倍さんの考えと実績]
 安倍さんの所信表明を見ると、
「美しい国」の基本理念から、
・活力に満ちたオープンな経済社会の構築
・財政再建と行政改革の断行
・健全で安心できる社会の実現
・教育再生
・主張する外交への転換
・憲法の見直し、憲法改正手続きに関する法律案の早期成立
など主張する意欲に満ちた演説だった。

 そしてその実績は、宮島理さん 
の資料を借りると、
・中国、韓国の関係改善
・再チャレンジ試験(国家公務員中途採用者選考試験)
・雇用対策法改正(年齢差別禁止義務化)
・パート労働法改正(均衡待遇)
・教育基本法改正
・教育改革関連法(脱ゆとり、教員免許更新制度など)
・社会保険庁解体法
・年金時効撤廃法
・国家公務員制度改革法(天下り禁止・人材バンク化)
・防衛庁の省昇格
・海洋基本法
・日豪安全保障宣言(日米豪印の関係強化)
・国民投票法(憲法改正準備)
・北朝鮮経済制裁(国連で日本主導)
・年金時効撤廃法の成立、相談窓口の早期設置、第三者機関の始動
・攻めの農政(中国へコメ輸出開始)

など大きな他の首相なら何年もかかる仕事を僅か1年足らずでやってきた。

[安倍さん失敗の原因]
 然し何故かその業績はマスコミでは
殆ど黙殺され、参院選での敗退→続投→国会の所信表明演説の直後に辞任と言う最悪の結果に緒わってしまった。

 その原因は、
1.年金問題など、多年の膿が一気に噴出したことや地方や社会格差など小泉改革の負の遺産が出始めたなど本来彼の責任でないことで批判を浴びたこと。

2.それに対して安倍さんは戦後レジームの脱却を言ったが、私が何度も書いたように、その前の段階の小泉政治の脱却または見直し を言うべきだった。
  そして小泉政治の残してきた負の遺産の処理を終わった段階で、戦後レジームの脱却を言っても良かった筈だ。
  それを言っておれば小泉さんが残した自民党にとっての負の遺産の復党問題の処理で安倍さんにとってプラスに作用した筈だ。

3.安倍さんの理想と現実
で書いた下記のような対応の拙さや政治手法の幼さがマイナスになって作用した。
・内閣の閣僚には「美しい国」の大臣には相応しくない人達が混じっていた。
・慰安婦問題で、一旦謝罪したものはあっさり認め、それ以上つべこべ言わないと言わなければ良かったのに、軍の強制がなかったと言って事態を悪化させた。
・問題閣僚を異常に弁護し、安倍政権のクリーンなイメージを悪くした。
・憲法改正を参院選の争点にするのは良いが、一方では集団的自衛権の憲法解釈の諮問機関を立ち上げ、野党から安倍さんは戦争するための憲法改正を考えているとの攻撃材料を与えた。
・安倍さんの建てた各種諮問機関からは、「美しい国」に相応しくない管理強化の提言ばかり。
・小手先、見え透いたそして問題の多い新人材バンク制度、ふるさと納税制度などの施策
・国民投票法案などの強行裁決などの目立つ国会運営

4.上に書いたような、安倍内閣の手法の幼さ を、慰安婦模擬裁判の誤報で、安倍さんから痛めつけられた(と思っている)、朝日新聞とそれに乗せられたマスコミから執拗に攻撃された。
 特に選挙中と言うのに、赤城さんの絆創膏まで追求されるなどの、マスコミの攻撃は異常としか言えない。

 読売テレビの辛坊治郎さんが、政治と金の問題で参院選前あれだけ追求していたのに、現在のより重大な問題を含む福田さん、小沢さんなどの政治と金の問題をマスコミが追求しないのはおかしいと言っていたが私も同感だ。

5.参院選に彼が通した法案の数の多さを自慢して、国民に強行採決の多さを思いださせた。
 小沢さんを取るか自分を取るかと言って、敗戦→続投宣言で攻撃のまととなった。

6.その結果として参院選大敗→小沢さんのテロ特措法強硬反対→辞任となった。

以上を総括して言えば安倍さんが、
・最初から二次内閣のような重厚な内閣を作れば良かったこと。
・所謂お友達内閣の考え方の基本にあるリーダーシップの勘違い(自分で皆やって仕舞う)→裸の王様状態になったこと
慌て過ぎ急ぎ過ぎたこと
政治手法が幼かったこと
・小泉さんのような必要な時の冷酷さ がなかったこと。
などの処理のしようによってはどうでもなる問題で失脚して仕舞ったような気がする。
 さらに言えばその基本に彼のお人好しさと、正直さ も影響しているかもしれない。

[ビジョンと実行力のあるリーダー]
 以上のような安倍さんの評価から考えて、石原さん達が言う様な、日本にビジョンを持った政治家が日本に何人いるだろうか。

 そうかと言って、いくら実行力があっても、米国一辺倒、日本の実情に合わない米国の年次要望書どおりの改革や米国型市場経済主義一本槍のビジョン(これがビジョンと言えるのかな?)を遮二無二実行した、小泉さんのような指導者はもうこりごりだ。

 また、憲法の規定に国連の条項の記載もないのに、国連公認の軍隊なら自衛隊を派遣して戦争しても合憲だと言う小沢さん見たいな人でも困る。

 環境問題、国の格差や国内の社会格差の増大など考えると現在の市場経済主義は行き詰まり状態だし、中国の台頭→日本企業競争力の低下→賃金の低下→貧困化と社会格差の発生、膨大な赤字、凶悪、家庭内の殺傷事件の多発、少子高齢化など基本的な問題が山積している。

 是非、先々を見据えた、ビジョンを持つ実行力を持つ政治家が出て欲しいものだ。

  然し実際はそう言う人達がいても、安倍さんではないが、実際にやって見て貰わなければ判らないのが困る。

 その点から一応指導者としてビジョンがあるが政治手法の幼さを露呈した安倍さんなどが、その問題に就いて反省し(とうに嫌となるほどしていると思うが)、リーダー・シップのあり方を勉強して、再起を期して貰いたいものだ。

 私は彼が在任中に、一度首相を経験したあと、一度(円満に)下野して再度より大物の首相として、再起すべきだとブログに何回か書いたが、あのような辞め方ではもう完全に政治生命を断たれたのだろうか

 私としては、自民、民主に適当な人が出ない場合、彼のように政治家として人柄が善くてビジョンを持つ人が、雌伏何年の後に再起することを願っているのだが。


参照:
 カテゴリー → 安倍内閣


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2 コメント

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Unknown (無党派A)
2007-10-15 22:35:56
山本大成さん、
いつも貴重なアドバイスを頂きまして有り難うございます。
私も山本さんの言われるようになって欲しいと思います。
今後ともなお一層のご助言とサポートをお願い致します。
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安倍首相のビジョンが脈々と受け継がれていくのでは? (山本大成)
2007-10-15 16:54:26
 安倍首相の退陣には、本当に残念な思いがしました。
 政治手法は拙かろうが、若狭を前面に出した中央突破をはかって欲しかったと残念でなりません。

 非常にタイミングの悪い辞任ではありましたが、これまでの内閣であったら内閣の命運をかけ名場通らなかった重要法案を幾つも通しましたし(これがマスコミをはじめとした一部の方達の勘に障ったのでしょうね)、戦略的な外交を端緒に付けた功績は、評価されてしかるべきだと考えています。

 ただ、在任期間が短くはありましたが、これまで表にあまり出ることのないビジョンを持った人たちに実際仕事をさせる事によって、「人」を残すことが出来たように思います。
 安倍首相の再起が仮になかったとしても、安倍首相の今回の挫折をも自らの教訓とした幾人もの人によって、仮に一時頓挫することはあっても、日本は前に進んでいくことが出来ると感じています。
(出来れば手遅れにならない段階で、前に進んで欲しいですが...。)

 
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