電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ヒンデミット「ヴィオラと弦楽オーケストラのための葬送音楽」を探してみた

2024年11月28日 06時00分50秒 | -オーケストラ

先日の山響こと山形交響楽団の定期演奏会で、ジュリアン・ラクリンさんがヴィオラを演奏しながら指揮をしたヒンデミットの「ヴィオラと弦楽オーケストラのための葬送音楽」を初めて聴きました。ラクリンさんのソロも山響の弦楽セクションの演奏もたいへん良かったので、ジョージ五世を悼み作曲されたというこの曲をもう一度聴きたいと、YouTube であれこれ探してみました。Google で

Hindemith viola string trauermusik YouTube

で検索すると、いくつか見つかりました。

まず、曲の終わりの部分だけですが、ジュリアン・ラクリン指揮、Sarah McElravy のヴィオラ、Kristiansand Symphony Orchestra の演奏;

Hindemith • Trauermusik for Viola and Strings • Sarah McElravy • Kristiansand Symphony Orchestra

映像から、この曲をラクリンさん自身のヴィオラと指揮で聴くことができた貴重な機会を、実に印象的に思い出します。

続いて、パーヴォ・ヤルヴィ指揮、Antoine Tamestit のヴィオラ、フランクフルト放送交響楽団による全曲の演奏;

Hindemith: Trauermusik ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Antoine Tamestit ∙ Paavo Järvi

パウル・ヒンデミットは、1895年11月に生まれて1963年の12月に亡くなった現代の作曲家です。「画家マティス」や「ウェーバーの主題による交響的変容」などが代表的作品ですが、いわゆる「現代音楽」とは違って、意外に聴きやすいです。先日がちょうど亡母の命日でしたので、習慣に従い仏壇にお線香を上げた後でヒンデミットの音楽を聴きました。おそらくは、天上の母もヒンデミットも、「おやおや」と苦笑していることでしょうが(^o^)/ それでも良い音楽は心を鎮めてくれる面があります。 

 

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山響第321回定期演奏会でモーツァルト、ヒンデミット、シューマンを聴く

2024年11月25日 06時00分55秒 | -オーケストラ

晩秋の日曜日、午前中に地域の防災訓練を実施した後、午後には山響こと山形交響楽団の第321回定期演奏会のために、山形市の山形テルサホールに向かいました。雲の切れ間から太陽がのぞくお天気となり、風は冷たいけれど車内はぽかぽか暖かく感じます。ホールに到着すると、まもなくプレコンサートトークが始まりました。今回のプログラムは、

  1. モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216 Vn: ジュリアン・ラクリン
  2. モーツァルト:交響曲 第36番 ハ長調「リンツ」K.425
  3. ヒンデミット:ヴィオラと弦楽オーケストラのための葬送音楽 Vla: ジュリアン・ラクリン
  4. シューマン : 交響曲 第4番 ニ短調 作品120

というもので、山形交響楽団を指揮するのもジュリアン・ラクリンさんですので、ヴァイオリン、ヴィオラ、指揮の三刀流!です。実は首席コンサートマスターの髙橋和貴さんは、ウィーンでラクリンさんに師事した間柄なのだそうです。そんなわけで、最初は髙橋さんが西濱事務局長に答えます。ある日本の評論家がウィーンでインタビューした時、クラウディオ・アバドとリッカルド・ムーティが、まだ若い20代のラクリンさんに注目して「覚えておくように。後々、彼は素晴らしい音楽家になるだろう」と言ったのだとか。そして実際そうなりました。そのラクリンさんが登場、今回の曲目について語ります。魅力的なヴァイオリン協奏曲第3番の後、「リンツ」交響曲はモーツァルトの若い頃の作品と比較して少し楽器編成が大きくなり、充実してくる。ヒンデミットはジョージ5世の葬儀に際して急遽作曲された美しい曲。シューマンはクララと結婚した直後の幸福な時期を反映した明るい曲、とのことです。西濱事務局長が、山形牛が食べられるように、また来てほしいとお願いすると、ラクリンさんは、美味しいビーフと素晴らしいオーケストラと山形のホスピタリティと別れて、明日帰らなければいけないのが悲しい、また来たいとのことでした(^o^)/

さて、第1曲:モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番。楽器編成と配置は、ステージ左から順に第1ヴァイオリン(8)、第2ヴァイオリン(7)、ヴィオラ(5)、チェロ(5)、その右手後方にコントラバス(3)という弦楽5部、正面後方にフルート(2)、オーボエ(2)、その後方にホルン(2)というものです。「なにかいいことありそうな」期待を抱かせる始まり、という印象を持っている曲の冒頭、華やかな高音域を強調するのではなく、弦楽の中音域を前に出した響きです。もしかしたら、ヴァイオリンとヴィオラの両方を演奏するジュリアン・ラクリンさんは、こういう響きが好きなのかもしれない、と感じます。息を呑むような静けさの中、展開されるカデンツァの見事なこと。第2楽章のやわらかな始まりも、中音域を大切にしているように感じられます。第3楽章の楽しさも見事で、独奏ヴァイオリンと指揮と両方をこなす姿は颯爽としたものでした。

聴衆の拍手に応えて、アンコールは J.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番、BWV1004、第3曲サラバンドでした。絶妙の弱音のコントロールに魅了されました。

続いて第2曲はモーツァルトの交響曲第36番「リンツ」です。編成と配置は、左から 1st-Vn(8), 2nd-Vn(7), Vla(5), Vc(5), Cb(3) の弦楽5部、正面後方に Fl(2), Ob(2),  Hrn(2), Tp(2), その奥に Timp. というものです。第1楽章:アダージョの序奏に続きアレグロ・スピリトーソ。いきいきとしていて、かつ堂々としている音楽です。第2楽章:アンダンテ。弦楽が中心となる緩徐楽章。山響の弦楽アンサンブルの澄んだ響きはまた一段と美しく、見事です。リズムがおもしろい第3楽章:メヌエットから第4楽章:プレストへは休み無しに続きます。うーむ、指揮者ラクリンさんの面目躍如といったところでしょうか。最前列までほぼ満席の聴衆はおお喜び。

ここで、15分の休憩が入りました。ホワイエではコロナ禍前のようにコーヒー等のサービスが入っていて、お客さんが思い思いにくつろいでいました。このあたりも、なんだか嬉しくなります。

後半に入り、第3曲はヒンデミットの「ヴィオラと弦楽オーケストラのための葬送音楽」です。ヴィオラを持ち、ラクリンさんが登場、英国王ジョージ五世の訃報に接してわずか一日で作曲されたという音楽を、作曲家と同じようにヴィオラを演奏しながら8-7-5-5-3の弦楽セクションを指揮します。初めて接する曲ですが、とてもいい音楽だと感じました。

聴衆の拍手に応えていったん袖に引っ込んだ後に、山響の楽員が勢揃いし、ラクリンさんが指揮棒を持って登場します。第4曲、シューマンの交響曲第4番です。Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(4), Tp(2), Tb(2), Timp. と弦楽5部という編成のこの曲、出だしはちょっと暗い感じで始まるけれど、実はシューマンがクララと結婚した頃の作品を十年後に改訂して発表したもので、けっこう明るく力強さもある音楽です。ですから昔風に、いかにも重々しく演奏されるとちょっと違うなあと感じてしまうのですが、そこはラクリンさん、速めのテンポで活力に富むいきいきとした表現です。モダン・ティンパニをけっこう力いっぱい叩いているし、金管も高らかに鳴り響きます。緩急をうまく使って、パンチの効いた盛り上がりは、パワフルな若々しいシューマンという感じ。演奏が終わるとブラヴォーが飛び、すごい拍手でした! いや〜、良かった!

そういえば、ラクリンさん、山響の満席のお客さんの中に、若い人がけっこう多いことに驚いていたそうです。実はスポンサーとなっている山形食品等の企業が若い高校生等を招待するパートナー事業をやっているからという説明を聞いて、それは良いことだね〜と感心していたそうな。確かに、世界的にはクラシック音楽の演奏会では聴衆の高齢化が進んでいるのが悩みだそうで、その意味では山形の「音楽教室→パートナー事業→聴衆を育てる」試みが着実に歩みを進めていることは稀有な現象なのかもしれません。

世界の一流演奏家が山形に来て山響でその力を発揮してくれることに感謝しつつ、そういう環境を育て維持している山響と地域の力に誇りを持って良いのかな、と嬉しくなりました。

 

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山響第320回定期演奏会でプーランク、シュポーア、シューベルトを聴く

2024年10月21日 06時00分02秒 | -オーケストラ
昨日の日曜日は午前中に総合防災訓練で朝早くから動員され、くたびれて帰宅して一休みしてから、午後のお楽しみ、山響こと山形交響楽団の第320回定期演奏会に出かけました。今回のプログラムは、

  1. プーランク シンフォニエッタ
  2. シュポーア クラリネット協奏曲第2番
  3. シューベルト 交響曲第4番「悲劇的」
     指揮、クラリネット:ポール・メイエ、山形交響楽団

というものです。

開演前のプレコンサート・トークでは、西濱事務局長と通訳の愛甲(?)さんとメイエさんの3人が登場して、プーランクやシュポーア、シューベルトなどの魅力と聴きどころを語ります。共通するのは移り変わっていく変化の美しさが魅力、という点でしょうか。シュポーアでは独奏クラリネットだけでなくオーケストラが室内楽的なやりとりを聴いてほしいこと、シューベルトでは interesting and fantastic、19歳のシューベルトが人の心に訴えかける優しさと甘さ、優雅さを感じる、とのことでした。なるほど。

演奏が始まります。第1曲め:プーランク「シンフォニエッタ」の楽器編成と配置は、ステージ左から第1ヴァイオリン(8)、第2ヴァイオリン(6)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)、その右後方にコントラバス(3)の弦楽5部に、正面奥にフルート(2)とオーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)とファゴット(2)、木管の両脇には左にハープ、右にティンパニ、正面最奥部にはホルン(2)とトランペット(2)となっています。もちろん、いずれも現代楽器です。プレトークで話題に出たヴァイオリンの新入団員は杉山亮佑さんといい、第2ヴァイオリンの第3プルトに座っていた人じゃないかな。
長身のメイエさんは指揮台なしでも奥まで見えるようで、指揮棒もなし。曲はリズミカルに始まる冒頭から楽しさにあふれ、とてもステキな、魅力的な音楽でした。

2曲め:シュポーアのクラリネット協奏曲第2番です。メイエさんがクラリネットを持って登場、ステージ中央の奥の方、フルートとオーボエに近い位置に聴衆に向かって立ちます。たぶん、あの位置が木管楽器の響きがよく聴き取れ、合わせやすいポジションなのかも。楽器編成は独奏クラリネットとフルート(2)、オーボエ(2)、ファゴット(2)、ホルン(2)、トランペット(2)、ティンパニと弦楽5部というもので、クラリネットは降り番になります。シュポーアという作曲家は1784年生まれで1859年に没していますので、ちょうどベートーヴェンと同時代の人のようです。それに合わせて、ホルン、トランペットはバルブのないナチュラルタイプ、ティンパニはバロック・ティンパニを使います。第1楽章:アレグロ、第2楽章:アダージョ、第3楽章:ロンド・アラ・ポラッカ。独奏クラリネットのあっけにとられるような見事な演奏と、一体感のあるオーケストラがほんとに見事でした。

聴衆の拍手に応えて、メイエさんのアンコールはスティーブン・ソンドハイムの「センド・イン・ザ・クラウンズ」という曲で、不思議な雰囲気を持った音楽でした。思わず聴き惚れてしまいました。

ここで休憩があり、後半はシューベルトの交響曲第4番です。

楽器編成は、Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2) に Hrn(4)-Tp(2)、それに Timp. と弦楽4部です。やはり時代に合わせてホルン、トランペットはナチュラルタイプでバロック・ティンパニで演奏されます。これにより、金管楽器がやけに突出するということがなく響きのバランスが良くなることと、ティンパニが抜けの良い音でリズムがいきいきしてくるという長所があります。シューベルトでは特にそれを感じられるだろうと期待大です。第1楽章:アダージョ・モルト〜アレグロ・ヴィヴァーチェ。ゆっくりめのテンポで、シューベルトの響きを大切に演奏しているように感じられます。第2楽章:アンダンテ、第3楽章:メヌエット、アレグロ・ヴィヴァーチェ。第4楽章:アレグロ。いいなあ。声高に叫んだり主張したりしない、優しさのある音楽。移り変わる響きやリズム、楽想の変化を味わい楽しむような演奏に、若いシューベルトの魅力をたっぷりと味わうことができました。良かった〜!

聴衆から「ブラーヴォ!」の声がかかり、大きな拍手に応えてオーケストラのアンコールがありました。それがシューベルトの「ロザムンデ」間奏曲。馴染み深いチャーミングな音楽に、すっかり魅了されました。



次回、第321回定期は、11月23日(土)・24日(日)、山形テルサホールで、ウィーンフィルのジュリアン・ラクリンさんの指揮、ヴァイオリン、ヴィオラで、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番、交響曲第36番「リンツ」、ヒンデミットの「ヴィオラと弦楽オーケストラのための葬送音楽」、そしてシューマンの交響曲第4番というプログラムです。これも楽しみです。



帰路はすっかり暗くなった郊外路を車で走りましたが、田んぼはすっかり稲刈りが終わり、晩生種のリンゴが見られるだけになっています。そうか、もう10月もあと10日ほどを残すばかり。秋たけなわというよりも、そろそろ晩秋の時期に入るんだなあ。

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雨降りの午後、オーマンディの音楽三昧

2024年10月20日 06時00分06秒 | -オーケストラ
昨日は、妻が大学の同窓会の役員会とかで外出しましたので、一人でタマネギ畑の再耕耘とマルチシート張りを済ませ、あとは植えるばかりとしました。午後からは天気予報のとおりに雨になりましたので、家に戻ってトーストを焼き、今年のサクランボ「紅さやか」のジャムで簡単な昼食としました。
のんびりお風呂に入り、着替えてさっぱりした後で、音楽三昧となりました。

自室の簡易な PC-audio で、パソコンの Ubuntu Linux 上の音楽再生ソフト Rhythmbox で Ormandy で検索したら、かなりたくさん表示されましたので、その中から選んだ曲目は、

  • サン=サーンス 交響曲第3番
  • チャイコフスキー 交響曲第5番
  • オーケストラの休日

いずれもフィラデルフィア管弦楽団の演奏です。

パソコンから USB 経由で Topping の DAC を経由し、ONKYO のミニコンポ CR-555 で同 D-N7TX スピーカを鳴らしますので、当然のことながらオルガンの重低音などは無理、無理(^o^)/ でも、例えば後半の思わずアクセルを踏みたくなるような闘争心が湧き上がる(^o^)音楽に、不思議と「音楽を聴いたぞ〜」という満足感があります。そしてチャイコフスキーの5番。これもいいなあ。フィラデルフィア管の名技を堪能できる「オーケストラの休日」も、肩の力を抜いてぼーっと音楽に浸るのに適した曲目です。

すでにパブリックドメインになっているようで、YouTube でも「オーケストラの休日」と同じ録音をいくつか見つけました。
Rameau: La Poule, Ormandy & PhiladelphiaO (1965) ラモー 雌鶏 オーマンディ

Foster: Camptown Races, Ormandy & PhiladelphiaO (1965) フォスター 草競馬 オーマンディ


おかげで、昨日はゆっくり骨休めができました。で、今日は? 総合防災訓練の動員で午前中かかる予定。その後は大きなお楽しみが待っています。

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山響第318回定期演奏会でモーツァルト、ニキシュ、ブラームスを聴く

2024年06月16日 06時00分21秒 | -オーケストラ
週末の土曜夜、山形市の山形テルサホールで、山響こと山形交響楽団の第318回定期演奏会を聴きました。プログラムは

  • モーツァルト:歌劇 「魔笛」K.620 序曲
  • モーツァルト:ミサ曲 ハ長調「戴冠式ミサ」K.317
  • ニキシュ:ファンタジー(オペラ 「ゼッキンゲンのトランペット吹き」 のモチーフによる)
  • ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
      阪 哲朗 指揮、山形交響楽団、辻 彩奈(Vn)、上野 通明(Vc)
      ソプラノ:老田 裕子、アルト:在原 泉、テノール:鏡 貴之、バリトン:井上 雅人
      合唱:山響アマデウスコア

というもので、合唱を含む多彩なプログラムです。これと同じ曲目で、6月20日に東京、21日に大阪公演が予定されており、「さくらんぼコンサート」としてサクランボのプレゼントや物産販売もある人気の公演なのだそうです。

恒例のプレコンサートトークでは、西濱事務局長と常任の阪哲朗さんが登場、曲目の紹介と共に、合唱団アマデウスコアが定期演奏会に登場するのはコロナ禍以来はじめてであることや、終演後のアフタートークが復活することなどをアナウンス。そういえばホワイエで飲み物を提供するなどほんとにしばらくぶりのような気がしました。

さて1曲め:モーツァルトの歌劇「魔笛」序曲です。ステージ上には左から第1ヴァイオリン(8)、コンサートマスター席には髙橋和貴さんが座ります。右回りでチェロ(5)、ヴィオラ(5)、第2ヴァイオリン(7)、コントラバス(3)はチェロの左後方です。正面後方にはフルート(2)とオーボエ(2)、その奥にホルン(2)とクラリネット(2)、ファゴット(2)、最奥部にトランペット(2)とトロンボーン(3)、木管の右後方にバロック・ティンパニという楽器編成・配置です。もちろん、ホルンやトランペットは作曲当時に使われていたのと同じバルブのないナチュラルタイプで、当時の響きに近づいた演奏と言えます。演奏が始まると、三度鳴らされる冒頭の和音が透明感が高く、しかも速いテンポで奏される主部は活気があり心地よい。いかにも「これから楽しいドラマが始まるよ〜」といった雰囲気が横溢しています。

2曲めはモーツァルトの「戴冠式ミサ」です。編成は独唱4部(Sop,Alto,Ten,Bar)に混声4部合唱、オーケストラは 1st-Vn, 2nd-Vn, Vc, Cb の弦楽4部、珍しくヴィオラが休みです。これに Ob(2), Fg, Hrn(2), Tp(2), Tb(3), Timp, Org というもので、これは意図的なものなのか作曲当時のオーケストラの事情によるものなのかは不明。でも、ヴィオラのないオーケストラというのも考えにくいので、たぶん内声部の響きをオルガンで受け持つことにより、教会の響きに適合した透明感のあるものにしようという意図なのかもしれないと思うようになりました。
冒頭の「キリエ」の始まり、子音の「k」が強く明確に発音されるのを聴くと、ああ、いいコーラスだなあといつも思います。独唱も見事でしたし、合唱の純度の高さと当時のナチュラルタイプの楽器を使用しヴィヴラートを抑制したオーケストラにオルガンの響きが加わり、まさに教会堂の中のミサの雰囲気でした。



ここで15分の休憩。さっとホワイエに移動し、物販の様子をのぞきます。TシャツやCD/DVDはすでに購入済みだし、今回は辻彩奈さんのCD「ベリオ/ヴァイオリン協奏曲集」を購入しました。



3曲め、ニキシュの「ファンタジー」です。ニキシュと言えばあのニキシュ、ベルリン・フィルの伝説的名指揮者ですが、当時は指揮者は作曲をすることが多かったそうで、そう言えばマーラーもR.シュトラウスも指揮者でした。ジョージ・セルも若い頃は作曲をしていたし、セルがヨーロッパから引っ張ってきたブーレーズやスクロヴァチェフスキももともとは作曲家だったのですから、驚くことではない。むしろ、昨年春に長井市で阪哲朗さん指揮の山響で日本初演されたネッスラーの歌劇「ゼッキンゲンのトランペット吹き」のモチーフにより作曲されたもの、というところが注目点でしょうか。
楽器編成は、ヴィオラも戻って 8-7-5-5-3 の弦楽5部に Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(4), Tp(2), Tb(3), Timp, BassDrum, Cymbal, Triangle, Harp というものです。
この曲を聴くのはもちろん初めてですが、Tp首席の井上直樹さんが朗々と奏するTpソロに、オーケストラが後期ロマン派ふうの濃厚なバックをつける、なかなかカッコいい魅力的な曲になっています。東京と大阪の「さくらんぼコンサート」では、初めて耳にする音楽ファンも多いのではなかろうか。期待して良い音楽だと思います。

そして4曲め:ブラームスのVnとVcのための二重協奏曲。独奏 Vn と Vc に二管編成のオーケストラというものですが、晩年のブラームスが交響曲第5番としてはじめは構想していたというだけあって、並のコンチェルトではありません。冒頭のオーケストラの強い響きの中で奏されるチェロの力強さ、緊張感、瞑想の中に独奏ヴァイオリンが鋭く入ってきます。この二人の集中力は素晴らしく、思わず音楽に引き込まれます。山響も手に汗握るような充実の演奏を聴かせて、ホール内は咳き一つない集中力でした。独奏部あり室内楽のような二重奏あり、ヴァイオリン協奏曲やチェロ協奏曲のようなところもあり、オーケストラのシンフォニックな響きを堪能するところもあり、晩年のブラームスらしい、実に多彩で見事な音楽です。ブラヴォー! 辻彩奈さんも上野通明さんも阪哲朗さん指揮の山響も、ほんとに素晴らしかった。

アンコールは、辻さんと上野さんの二人で、J.S.バッハの「インヴェンション第1番」を。これも良かった〜!



終演後、ホワイエで久しぶりにアフタートークと称して演奏者とファンとの交流会が行われました。あまり正確ではないけれど、印象に残った発言を記憶により再現してみると、


阪さん いろいろなことが単純にコロナ前に戻っただけではない。コロナ禍でいろいろなことがあった。音楽は不要不急の存在なのかと迷うこともあったし、そんな中で支援のありがたさを感じた。本当に大切なものとそうでないものが見えたように思う。

辻さん 2回目のブラームスの二重協奏曲。1回目は堤剛先生とで緊張した。今回は同世代の上野さんとの共演で、また違うブラームスになったように思う。
上野さん ブラームスにはチェロ協奏曲がないので、チェロ奏者には大切な曲。今回はとても良い経験になった。山響は親切で熱心なオーケストラだと感じた。

とのことでした。これまでアンケートに何度か辻さんをリクエストしてきましたが、上野さんにもぜひまた山響に来てほしいと強く思いました。

※独奏者アンコールのことを書き忘れていたので、追加しました。

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週末は山響の第318回定期演奏会でモーツァルトとブラームスほか

2024年06月15日 06時00分42秒 | -オーケストラ
サクランボの収穫が全部終わったため、この週末は晴れて演奏会三昧、山響第318回定期演奏会の予定です。5月末から農作業にがんばったご褒美のようなタイミングで、なんだか嬉しい。今回のプログラムでは、辻彩奈さんのヴァイオリンが再び聴けるのは嬉しい。しかも上野通明さんのチェロでブラームスの二重協奏曲というのが楽しみです。もう一つは、モーツァルトの「戴冠式ミサ」。ソリストの顔ぶれはもちろんですが、久々に山響アマデウスコアの合唱が聴けるのが楽しみです。

  • モーツァルト:歌劇 「魔笛」K.620 序曲
  • モーツァルト:ミサ曲 ハ長調「戴冠式ミサ」K.317
  • ニキシュ:ファンタジー(オペラ 「ゼッキンゲンのトランペット吹き」 のモチーフによる)
  • ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
      阪 哲朗 指揮、山形交響楽団、辻 彩奈(Vn)、上野 通明(Vc)
      ソプラノ:老田 裕子、アルト:在原 泉、テノール:鏡 貴之、バリトン:井上 雅人
      合唱:山響アマデウスコア

なんだか日照り続きのお天気で、野菜や果樹にも水やりが大事になってきているようです。朝晩の涼しいうちに、水やりをしておきましょう。

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リストの交響詩「タッソー、悲劇と勝利」を聴く

2024年06月06日 06時00分07秒 | -オーケストラ
過日、ネットラジオの「rondo_klausupro.m3u」を開いたら、たまたまリストの交響詩「タッソー、悲劇と勝利(tasso, lamento e trionfo)」が流れてきました。このネットラジオ局は、通常の mp3 形式の局よりも高音質で流しているせいか、思わずはっとするような深い音で音楽が流れました。あいにくLPでもCDでもこの曲は手元にありません。ネットで探してみると、いくつかの動画を見つけることができました。

youTube より、まずはカラヤン指揮ベルリン・フィル、1976年の録音から。
Liszt: Tasso - Lamento e trionfo, Symphonic Poem No. 2, S. 96 (After Byron)


続いて、コンスタンティン・シルヴェストリ指揮フィルハーモニア管、1958年の録音。
Liszt: Tasso, Lamento e Trionfo; Silvestri & The Phil (1958) リスト タッソー、悲劇と勝利 シルヴェストリ


もともとの題材はゲーテの『タッソー』だそうで、1950年刊の岩波文庫には翻訳があったようですが、残念ながら青空文庫にも収録されていないようです。自己の才能を過信する傲慢な詩人タッソーが破綻する話のようですが、リストはゲーテのこの作品のどこに共感し、作曲をしたのだろう? ちょっと興味があります。



というわけで、某密林から購入。こういうときには通販は便利。



昨日の農作業の記録;

■雑草対策に空き区画の耕耘
■トウモロコシの苗の植え付け
■ダイズの苗の植え付け
■サトイモの追肥

お天気もよく、よく働きくたびれました。今朝は早朝からモモの防除です。


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ヴォーン・ウィリアムズ「交響曲第5番」のCDを購入する

2024年06月01日 06時00分30秒 | -オーケストラ
先日の山響定期ではじめて実演に接したヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番、YouTube 等でいつでも聴けるとはいうものの、やっぱりCDでほしい、ということで、某密林に注文しました。演奏は、私の高校〜大学生時代にビクターから発表されていたアンドレ・プレヴィン指揮のロンドン交響楽団によるものです。映画音楽からクラシック音楽への転身ということで、当時は一種のキワモノ扱いされることもあったプレヴィンのレコードは、私のお財布の中身ではとても買えませんでしたので、一種の懐かしさからくる選択かもしれません。彼の晩年は、N響とのモーツァルトなど、とてもチャーミングな演奏を聴かせてくれていました。達者なピアノでジャズや映画音楽をやっていた時代は生活のためで、ほんとの希望はクラシック音楽をやりたかったんだ、ということをどこかで言っていましたが、私の小規模なCDライブラリの中でも、サン=サーンスの「七重奏曲」、メンデルスゾーンやシューマンのピアノ三重奏曲、ラフマニノフの交響曲第2番、あるいはアシュケナージとのプロコフィエフのピアノ協奏曲全集など、けっこう購入しています。ですが、学生時代に指をくわえて見ていたあのLPと同じ録音をCDで購入するというのは、ちょいと嬉しいものです。ある意味、半世紀ぶりの再会みたいなものでしょう。

届いたCDはさっそく Ubuntu Linux の RhythmBox でリッピングして、自室の簡易な PC-audio で聴けるようにしたほか、車のCDプレイヤーに持ち込んで、がんがんかけております。ヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番、やっぱりいいなあ。

【追記】YouTube で、まさにこの録音を見つけました。アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン響。
Vaughan-Williams Symphony No. 5 (Previn/LSO)


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山響第317回定期演奏会でマルケス、グリーグ、ヴォーン・ウィリアムズを聴く(2)

2024年05月20日 05時42分00秒 | -オーケストラ
土曜日の山響定期、後半はヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番です。ヴォーン・ウィリアムズというと、私のイメージは1970年頃にビクターから出ていたLPレコードのジャケットで、「海」とか「南極」とかの筆文字が縦書きされていたものです。たしかアンドレ・プレヴィン指揮のロンドン交響楽団の演奏だったと思いますが、もちろん私のお小遣いでは買えるわけがなく、以後数十年、実際に演奏に親しむことはありませんでした。結婚し、郷里にUターンして山形交響楽団や山形弦楽四重奏団の定期演奏会に通うようになって、「グリーン・スリーヴスによる幻想曲」や「トマス・タリスの主題による幻想曲」、あるいは「幻想的五重奏曲」などに接するようになりましたが、実際に交響曲の演奏に接するのは初めてです。手元には交響曲第5番のLPもCDもありませんので、事前に YouTube で聴いてみましたが、なんだか茫洋としていて今ひとつつかめない。これは虚心に実演に接するしかあるまいと考えて臨んだのでした。

第1楽章、プレリュード、モデラート〜アレグロ、テンポ1。開始は録音で聴くほど弱音ではなく、実演の良さで全体に明瞭に聞こえます。作曲された年代が第二次世界大戦の最中といいますが、そんな暴力と破壊のイメージではなく、むしろ優しい音楽に聞こえます。最後のホルンがミュートを付けて終わるように、威勢のよい強奏が目立つ音楽ではない。
第2楽章、スケルツォ、プレスト・ミステリオーソ(神秘的に)。例えばトロンボーンのコラール風の部分があったとしても、目立たずに全体の中にそっと色合いを添えるといったふうで、テンポが速いスケルツォではあるのですが、不思議な印象です。
第3楽章、ロマンツァ、レント。弦楽の響きがいいなあ。ここではイングリッシュホルンの音色が耳に残ります。高い音域をオーボエで、低い音域をイングリッシュホルンで、併奏するフレーズのなんと魅力的なこと! ホルンの旋律をトランペットが受けて高揚し、全体が静まっていきますが、管楽器のオルガン的な響きと弦楽合奏の息の長いゆるやかな響きが盛り上がりを作ります。コンサートマスターのヴァイオリン・ソロに導かれて、ミュートを付けたホルンやヴィオラやチェロなど、静かに祈るように終わります。ここのところ、いいなあ。大好きになりました。
第4楽章、パッサカリア、モデラート。チェロが主題を奏して始まる音楽は、管と弦にティンパニも加わり次第に力強さが増しますが、音楽の形式はパッサカリアです。緊密な響きはモダニズムが支配的だった大戦前の時代を感じさせません。音楽が祈るように静かに終わる時、作曲された当時の戦時下のロンドンと同様に、ウクライナやアラブでの戦争をふと思ってしまいます。



初めて実演に接したヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番は、ノーブルな音楽と聴きました。ネットで聴くのとは異なり、実演に接して初めてとても良い曲だと実感しました。良い機会を与えてくれた山響と指揮の藤岡さんに感謝です。ありがとうございます。

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山響第317回定期演奏会でマルケス、グリーグ、ヴォーン・ウィリアムズを聴く(1)

2024年05月19日 21時10分13秒 | -オーケストラ
日曜日に地域行事の予定が入っていたため、山響こと山形交響楽団の第317回定期演奏会は土曜日の夜に聴くことにしました。夕方から出かけた山形テルサホールは、幸いに駐車場も混雑せずに入ることができました。今回のプログラムは、



  1. アルトゥロ・マルケス:ダンソン・ヌメロ・ドス (ダンソン 第2番)
  2. グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
  3. ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲 第5番 ニ長調
     ペーター・ヤブロンスキー(Pf)、藤岡幸夫 指揮、山形交響楽団

というものです。開演前のプレトークは西濱秀樹事務局長と指揮の藤岡幸夫さんのお話でしたが、マルケスのダンソン第2番は山響の団員の中からリクエストがあって実現したのだとか。メキシコの現代音楽の代表的な曲だそうで、期待が持てます。グリーグのピアノ協奏曲は、初夏の季節に不思議に聴きたくなる曲ですが、ヤブロンスキーさんという世界のビッグネームの登場で、こちらも期待大です。そしてヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番。今まであまり馴染みのない曲目ですので、YouTube 等で予習はしたものの、本当の所はよくわからず、実演に期待することとして参加したものです。その意味では、たいへん興味深いプログラム。これを逃してなるものか!

第1曲、メキシコの現代作曲家アルトゥロ・マルケスの代表曲、ダンソン第2番。ステージ上の楽器編成と配置は、左から第1ヴァイオリン(10)、第2ヴァイオリン(8)、チェロ(6)、ヴィオラ(6)、右端にコントラバス(4)の弦楽5部、コンサートマスター席には犬伏亜里さんが座ります。今回、ヴァイオリン群の左端にピアノが加わり、中央奥に木管楽器、フルート(2:うち1はピッコロ持ち替え)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)、木管の左右にホルン(4)とトランペット(2)、さらに右奥にはトロンボーン(3)とテューバの金管群、正面最奥部にティンパニ、その左にパーカッションとしてクラベス、スネアドラム、サスペンド・シンバル、ギロ、トムトム、バスドラムが並び、3人の奏者で演奏します。クラベスというのは拍子木のような2本の棒で音を出すもので、ギロというのはヒョウタンの外側に刻みを入れて、それをこすって音を出すもので、いずれも民族楽器に分類されるものでしょう。
演奏が始まると、弦のピツィカートとピアノとクラベスのリズムをバックにクラリネットが長めの旋律を奏でますが、これが酒場の雰囲気というのか、いかにも南米風で楽しい。トランペットもカッコいいし、演奏する楽員のみなさんもノリノリで、いやー、いい曲、いい演奏を聴きました(^o^)/

2曲めはグリーグのピアノ協奏曲です。楽器編成はやや整理され、中央にピアノ、10-8-6-6-4 の弦楽5部、これに Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2) の木管と Hrn(4)-Tp(2)-Tb(3) の金管、それに正面最奥部の Timp. というものです。ヤブロンスキーさんは北欧の人らしくスラリとした背の高い人で、颯爽と登場です。
第1楽章、アレグロ、モルト・モデラート。ピアノの左手、低音のキレがすごい。リアルで生々しさがあります。実演でもLPやCDでも何度も聴いているおなじみの音楽ではあるのですが、管のフレーズにピアノが優しくそっと合いの手を入れていることに初めて気づきました。
第2楽章、アダージョ。優しい弦の響きの中でピアノが静かにつぶやくように始まる緩徐楽章ですが、沈潜的な指揮の中でホルンが見事に決まります。
第3楽章、アレグロ・モデラート、モルト・エ・マルカート。ほんとに明晰なピアノで、オーケストラも触発されたように次第に熱を帯びて、チェロのトップと独奏ピアノの対話もいい感じ。オーケストラの強奏はときに独奏ピアノを上回る音量ですが、合間にはときどき胸元からハンカチを出し、汗を拭きながらの余裕のある演奏です。ピアノの見事さには思わず唖然呆然。いやー、良かった!

アンコールは、バツェヴィチのピアノソナタ第2番の第3楽章。グラジナ・バツェヴィチ(1909-1969)はポーランドの女性作曲家らしいです。初めて聴きましたが、思わずあっけにとられるほど見事な演奏でした。



ここで休憩が入ります。後半のヴォーン・ウィリアムズは、また明日の記事で。ちょいと1回では終わらない感じです。

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サッリネンの交響曲第2番をあらためて聴いてみる

2024年03月21日 06時00分12秒 | -オーケストラ
連日、雪混じりの寒い日が続きます。「寒の戻り」とはよく言ったもので、当地山形ではほんとにブルブル寒いです。幸いに、寺の役員会も地域自治会の総会も終わり、各種団体の役員改選なども一段落して、畑仕事にも不向きな、心安らかに休めるお天気なのかも。

退職してからは、未聴のCD等を繰り返し聴く「通勤の音楽」の時間がなくなり、新たな音楽に接するには山響等の演奏会を機会とすることが多くなりました。直近の定期演奏会でいえば、サッリネンの交響曲第2番「交響的対話」Op.29あたりでしょうか。そういえば、あの「パーカッションのための協奏曲」みたいな音楽はずいぶん印象的な曲でした。

昔なら、「もう一度聴きたい」→「CD等を探す」→「売ってない」ということで諦めるしかなかったところですが、今はネットで検索すればどうにかなる時代です。たまたま Google で

Sallinen symphony 2

で検索してみたら、いくつか動画を見つけることが出来ました。オッコ・カムさん指揮のものもあり、これはいいと何度も再生して聴いてみました。動画のうち、音声の方は演奏そのものなわけですが、画像のほうはまるっきり静止したイメージで、ステージ狭しと並んだパーカッションを奏者がダイナミックに打ち鳴らす生の演奏の印象とはだいぶ違うように感じます。



AULLIS SALLINEN. SYMPHONY Nº2


そんなことを言っていても、実際に自分の耳で聴くことができるのはありがたい。サッリネンの交響曲第2番、こういう緊張感のある音楽を楽しめるようになったのは、バルトークやプロコフィエフなど20世紀前半の音楽に聴き馴染んでからのように思います。一口にクラシック音楽と言っても、実に多彩な世界です。

もう一つ、サッリネンの「サンライズ・セレナーデ」Op.63、同じくオッコ・カムさんの指揮です。

Aulis Sallinen - Sunrise Serenade Op. 63


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山響第315回定期演奏会でサッリネン、ニールセン、シベリウスを聴く

2024年03月11日 06時03分51秒 | -オーケストラ
春なのに雪が舞うお天気が続いた3月、山形市のテルサホールで山響こと山形交響楽団の第315回定期演奏会を聴きました。今回のゲストはフィンランドの世界的な巨匠指揮者、オッコ・カム氏です。若い頃に、カラヤン指揮者コンクールで優勝(1969年)して一躍有名になった頃のことはよく覚えていますが、まさか当地・山形で何度も間近に接することができるとは思ってもいませんでした。前回の演奏会(*1)ではオール・シベリウスのプログラムで、「フィンランディア」、交響曲7番、2番というものだったと記憶していますが、コロナ禍での来日中止を経て今回再びの来演。サッリネンとシベリウスがフィンランド、ニールセンがデンマークですから、北欧の音楽に焦点を合わせた、待ちに待った演奏会です。

今回のプログラムは、

  1. サッリネン:交響曲 第2番「交響的対話」作品29
        *パーカッション 常盤紘生(山響首席奏者)
  2. ニールセン:フルート協奏曲 FS 119  フルート: 知久翔(山響首席奏者)
  3. シベリウス:交響曲 第1番 ホ短調 作品39
      オッコ・カム指揮、山形交響楽団

というもの。

指揮のオッコ・カムさんに西濱事務局長がインタビューするプレコンサートトークが興味深いものでした。サッリネンは長く交友が続く大切な作曲家で、オッコ・カムさん自身が今回の曲の初演者でもあるそうです。また、今回ソロをつとめる常盤さんと知久さんのお二人について、才能ある若い奏者で音楽の背後にあるものをとらえて演奏しようとする姿勢が素晴らしいと評価。ニールセンについては、ニールセンが以前住んでいた家を買い取り、現在オッコ・カムさんが住まわれているのだそうで、西濱さんが羨んでいました(^o^)/ 



さて1曲め、サッリネンの交響曲第2番 作品29 〜ソロ・パーカッションとオーケストラのための交響的対話〜という作品ですが、ステージ上には正面中央にマリンバ、ヴィヴラフォン、トムトム、ボンゴ、バスドラム、スネアドラム、アンティーク・シンバル、ゴング、ギロ、タムタム等の独奏パーカッション群が配置され、目を引きます。指揮台はこの後方で、弦楽5部が左から 10-8-6-6-4 の配置です。左手後方にハープ、正面後方にフルート(2)、オーボエ(2),その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)の木管群が並び、金管楽器は左手にホルン(4)、右手にトランペット(3)、トロンボーン(2)、テューバという楽器編成と配置になっています。
弦楽が下降する音階のような音を奏する中で、ヴィヴラフォン等が同様に下降音階を奏でたかと思うと、一転してパーカッションの本領発揮!なんてかっこいいんだろう。ソロの常盤紘生さんが真っ赤なシャツで登場した気持ちもわかるなあ。ネットで予習していったとはいうものの、実演の迫力と魅力は桁違いのものでした。

聴衆もやんやの拍手喝采、常盤さんのアンコールは、ネヴォイシャ・ヨハン・ジヴコヴィッチ「ヴィヴラフォンのためのスオミネイト」でした。



ステージ上からパーカッション群が退き、こんどはニールセンのフルート協奏曲です。楽器編成と配置は、左から 10-8-6-6-5 の弦楽5部に、正面奥に Ob(2), Cl(2), Fg(2) と木管楽器が並びますが、Fl は独奏フルートだけのようです。金管楽器は左手奥に Hrn(2) と正面奥 Timp. の右側に Bass-Tb だけで Tp がありません。ちょっと変わった編成です。独奏フルートの知久翔さん、冒頭から素晴らしい音と演奏。素人目にも難しそうなところを難なく吹き、ニールセン晩年の音楽を見事に表現します。例えばフルートの高い音とクラリネットの低い音の対比と掛け合いは魅力的ですし、弦楽の美しい響きが突然に荒々しく変わったりするところなど、1927年に完成された音楽らしく現代的な要素もあり、説得力のある音楽と感じます。ちなみに、Timp. は先のソリストの常盤さんが黒の衣装に早着替えのマジックを見せて参加していました。山響団員はタフでなければつとまらないのかも(^o^)/

聴衆の盛大な拍手を受けて、ソリスト・アンコールはドビュッシーの「シランクス」。神秘的な響きに思わずほぉーっとため息がもれました。

ここで15分の休憩。後半は、シベリウスの交響曲第1番です。Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(4), Tp(3), Tb(3), Tuba, Timp. Perc, Harp に弦5部という楽器編成です。第1楽章の冒頭の Timp. のロール?に始まり、クラリネットのモノローグが長く続きますが、これが実にいいのですよ! この曲の魅力にここでぐっとつかまれるのです。そして弦楽によって奏でられる音楽。オッコ・カム指揮の山響は、この曲の魅力を充分に聴かせてくれたと思います。音楽は悲劇的な要素をはらんでいるのですが、正直に言って、あんまり幸せすぎて終楽章のあたりではほとんど意識が落ちていたくらいです(^o^)/
いや〜、今回もほんとに良い演奏会でした。



終演後、お隣に座っていたご婦人に声をかけられました。「◯◯◯です」、ええっ、いやいや全然気が付きませんで失礼しました。某庄内の笛吹きさんの奥様でした。ずいぶんお久しぶりですが、そういえば我が家の母娘猫が元気だった頃、某千代丸クンをかわいがっていたはず、その後の消息もお聞きできませんでしたが、いろいろ懐かしく思い出してしまいました。



(*1): 山形交響楽団第268回定期演奏会でオール・シベリウス・プログラムを聴く〜「電網郊外散歩道」2018年4月

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シベリウスの交響曲第1番のいろいろな演奏を聴いてみる

2024年03月10日 06時00分05秒 | -オーケストラ
山響こと山形交響楽団の定期演奏会に予定されている曲目の中で、サッリネンとニールセンも大きな楽しみの一つですが、そうは言っても聴き馴染みのあるシベリウスの交響曲第1番が期待大です。手元にはCDのカラヤン盤があり、ずっと聴いています(*1)が、その他にはパブリック・ドメインの恩恵でアンチェル指揮チェコフィルの演奏(*2)や渡邉暁雄指揮日本フィルの演奏(*3)も楽しんでいます。

その他にも、様々な演奏に接してみようと、YouTube で探してみました。例えばパーヴォ・ヤルヴィ指揮、パリ管の演奏。

Jean Sibelius - Symphony No 1 in E minor, Op 39 - Järvi


続いて、ユッカ・ペッカ・サラステ指揮、ラハティ交響楽団の演奏。

Sibelius: Symphony No. 1 - Jukka-Pekka Saraste & Lahti Symphony Orchestra


ふだんの日常生活で楽しむことができるという点では、コンピュータ・ネットワークの時代の恩恵を痛感しますが、今回の定期演奏会は、パソコンのディスプレイとミニコンポの簡易 PC-audio で見て聴く音ではなくて、よく響く音響の良いホールで、眼の前で生身の演奏家が繰り広げる演奏会です。正直に言って、これは何ものにも勝る音楽体験でしょう。今回のオッコ・カム指揮山響の生の演奏が楽しみです。

(*1): カラヤンとベルリン・フィルの「シベリウス/交響曲第1番」を聴く〜「電網郊外散歩道」2008年3月
(*2): シベリウス「交響曲第1番」カレル・アンチェル指揮チェコフィル〜「クラシック音楽へのおさそい〜Blue Sky Label〜」より
(*3): シベリウス「交響曲第1番」渡邉暁雄指揮日本フィル〜「クラシック音楽へのおさそい〜Blue Sky Label〜」

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山響第314回定期演奏会でパウルス、チャイコフスキー、メンデルスゾーンを聴く

2024年02月12日 06時00分52秒 | -オーケストラ
鼻づまり症状が出て寝不足な今日この頃、なんとか頑張って山響こと山形交響楽団第314回定期演奏会に出かけました。少し出遅れたせいもあって、駐車場はどこも満車、仕方なく霞城セントラルの屋内駐車場に車を入れて、会場の山形テルサホールに向かいましたら、この日は県民ホールの反田恭平&ジャパン・ナショナルオーケストラツアー2024というコンサートとぶつかっていたのですね。テルサホールの山響定期はチケット完売、満席だそうで、幸いでした。今回のプログラムは、

  1. スティーヴン・パウルス:スペクトラ
  2. チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ長調 Op.23 上原彩子(Pf)
  3. メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調「イタリア」Op.90
     キンボー・イシイ指揮、山形交響楽団

というものです。

開演前のプレトークが面白かった。指揮のキンボーさん、山形入りしてさっそく財布を無くしたんだそうで、周囲の人が一緒に探してくれて、まもなく無事に見つかったそうです。西濱事務局長も銀行のキャッシュカードを落として「これ誰のですか〜」と言われているのに気づいたことがあるのだそうで、うっかりなお二人というよりも、「山形あるある」かも(^o^)

さて、1曲め、「スペクトラ」という現代曲の楽器編成と配置は、左から順に第1ヴァイオリン(8)、第2ヴァイオリン(7)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)と指揮者を囲み、右端にコントラバス(3)となります。正面奥の前列にフルート(1)とオーボエ(1)、後列にクラリネット(2)とファゴット(1)、木管の左にホルン(2)、右にトランペット(1)とトロンボーン(1)というやや縮小した編成で、再後列にパーカッションが陣取り、ティンパニ、シロフォン、タムタム、スネアドラム、サスペンド・シンバル、ドラ、ウッドブロック、ムチ、シンバルと多種多彩。見ているだけで面白そうです。
演奏が始まると、いわゆる現代音楽の難解さはなく、鮮烈で楽しいものでした。特に第2楽章の2本のホルンが弦楽合奏と協奏するところや、第3楽章のパーカッションが活躍するところなど、とても魅力的に感じました。常盤さんのティンパニの迫力、平下さんの目を見張るマレットさばき、三原さんのスネアドラム?が思い切りが良くてナイス!でした。

2曲めは、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番です。ステージ中央にピアノが引き出され、8-7-5-5-3 の弦楽5部に Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2) の木管群、その左に Hrn(4)、右に Tp(2)-Tb(3)が並び、正面最奥部に Timp. という楽器配置です。上原彩子さんは鮮やかなピンクのドレスで登場、力強くダイナミックで、それでいて弱音部は限りなく優しく、もう素晴らしい演奏! 私もこの曲を聴くのはしばらくぶりでしたので、前日まで清水和音盤とかギレリス盤とかいろいろなCDを聴いて予習してきましたが、素晴らしい演奏を前にしてみんな吹っ飛びました。ブラヴォー!
そしてアンコールがまたため息ものでした。ラフマニノフの「幻想的小品集 メロディ Op.3-3 ホ長調」だそうですが、聴衆も息を呑む静けさの中に音楽が流れ、この時間がいつまでも続いてほしいと思うほど。



休憩の後は、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」です。ピアノが後方に退き、楽器配置は 8-7-5-5-3 の弦楽5部に Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(2), Tp(2) に Timp. という編成。違うのは、ホルンとトランペットがバルブなしのナチュラル・タイプであることと、ティンパニもバロック・ティンパニを用いることです。このあたりは、作曲当時の楽器や奏法に準じることで、作曲家が思い描いた当時の音に近づけるという山響の特徴でもあります。
演奏が始まると、指揮のキンボーさん、中〜低音をしっかりと響かせて、その上で歌うように意図しているようで、例えば第2楽章ではチェロやコントラバスの持続する動きがよくわかります。第3楽章で突出しないナチュラル・ホルンが破綻なくバランス良く鳴らされると、ヴィヴラートを最小限に抑えたヴァイオリン群が入ってくるときのキラキラした輝かしさは例えようがない魅力です。終楽章、沸騰するようなサルタレロ。変なたとえですが、小さなミルクパンの沸騰ではなくて、中低音の土台の上に乗って、大鍋の沸騰みたいな迫力がありました(^o^)/



ああ、良かった。今回も良い演奏会でした。次回3月9日・10日の第315回定期は、世界の巨匠オッコ・カムさんが再び登場、これも特別な楽しみです。山響がある限り、私の楽しみはまだまだ続きそうです。



ところで、いただいたチラシの中で、遅筆堂文庫山形館のトークイベントで山形交響楽協会専務理事の西濱英樹さんの図書館トークの案内がありました。2月18日の日曜日の14時から東ソーアリーナにて。面白そう、行ってみたいと思ったら、ナンタルチヤ! 同日同時刻にサクランボの剪定講習会が入っているではないですか! すでに申し込み済で、うーむ、残念無念。遅筆堂文庫さん、何かの機会に、ぜひ皆さんに公開してくださいな。お願いしま〜す(^o^)/

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シューベルト「八重奏曲」をセル指揮クリーヴランド管の演奏で聴く

2024年01月05日 06時00分57秒 | -オーケストラ
元旦の寺の行事が終わると翌2日には他寺の住職が来宅、以後も来客があるかもしれないと留守にもできず、自宅にじっとしています。妻はときどき買い物に出かけますが、私はひたすら客待ちしながら主人兼主夫業に勤しむのみ。昔は「正月には掃除や水仕事、煮炊きなどはしないものだ」と言われたものでしたが、それは下男下女などを抱えていた地主の時代の慣習で、主婦を慰労するだけでなく奉公人を家に戻して休ませる意味もあったことでしょう。でも今どきは男性も包丁を持ち洗い物等をしなければ「協力的でない」という理由で離婚届を出されてしまうような時代です。また、これだけ食生活が多様で豊かになった時代に、冷たいおせち料理だけで朝昼晩を過ごすのは飽きてしまいます。いきおい、私が積極的に新しいメニューを開拓して、昼食だけでなく夕食も作るような意気込みで取り組むことが期待されて…いるのかな?

さて、私の好きな音楽、シューベルトの「八重奏曲」は、もともと少し規模が大きいけれども室内楽曲の範疇に入る曲(*1)です。ところが、作曲をよくし編曲が大好きで、スメタナの弦楽四重奏曲「我が生涯より」を管弦楽曲に編曲して演奏(*2)している指揮者ジョージ・セルが手兵のクリーヴランド管弦楽団を振った演奏が録音されているという情報をだいぶ前に入手しておりました。LPやCD等を探してはいましたが見つからず、ヒマにまかせてネットで探してみようと思い立ちました。

Schubert Octet Szell Cleveland

うん、これだね! ドンピシャで見つかりました。1965年のライブ録音のようです。

Schubert, Octet, D. 803; arr. Szell: Szell/Cleveland/live in 1965


もちろん、フルオーケストラではなく、4-4-4-3-2 の弦楽5部に Cl, Fg, Hrn が加わった、縮小編成になっています。ライブですので微小なキズはありますが、自然なテンポ、しなやかな弦楽、魅力的な管楽器の響きに、もしかしたらシューベルト自身がオーケストラ版を編曲していたらこうんなふうだったかもしれないと思ってしまいます。



能登半島沖地震の続報は、たいへんな状況のようです。東日本大震災の際は、津波被害を受けた太平洋沿岸部を目ざして、日本海側からもあばら骨のように通じた東西の道路を通って救援が入りましたし、空路も例えば山形空港から24時間体制で救援ヘリが飛んだように、隣県からの支援ができました。今回は半島部ということと地形的な要素に加えて津波被害もあり、陸路も空路も海路も困難が大きいようです。義侠心から救援に入ろうとした自家用車の列がかえって渋滞を引き起こし、救援車両の走行を妨げている面もあるとのこと。今はまだその時期じゃない。羽田空港の事故も、おそらくは1分1秒を争う緊急重要任務と認識した海上保安庁機と、通常の安全運行を最優先とする管制側との認識のズレが背景にあったための悲劇なのではないかと想像しています。揚陸艇で陸揚げした重機が動き出せば、また少しは状況が変わってくるかと思いますが、今はただ祈るばかりです。

(*1): シューベルトの八重奏曲〜「電網郊外散歩道」2010年4月
(*2): スメタナ「我が生涯」(ジョージ・セル編曲による管弦楽阪)〜「クラシック音楽へのおさそい〜Blue Sky Label〜」より、あるいは YouTube でも Smetana:String Quartet No.1 by Szell, Cleveland orch.

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