三連休の中日となる日曜の夕方、雪囲い作業を中途にして、山形テルサホールに出かけました。本日の山形交響楽団第240回定期演奏会のプログラムは、
- ベルリオーズ/序曲「リア王」作品4
- ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 作品58
- ブラームス/交響曲 第4番 ホ短調 作品98
というもので、指揮は飯森範親さん、ピアノは期待の新星ニコライ・ホジャイノフさんです。
飯森さんのプレコンサート・トークで、面白いことを聞きました。全国のプロ・オーケストラで、ファンクラブを持っているのは八つあり、北から札幌交響楽団、仙台フィル、山形交響楽団、群馬交響楽団、東京都交響楽団、名古屋フィル、アンサンブル金沢、広島交響楽団なのだそうです。そのファンクラブ連盟の総会が今年は山形であり、それが今日なのだそうで、札幌市長さんが会長をつとめ、実は二階席におられたのでした。ほかにも、かなりの方がホール内におられたとのこと、もしかすると最前列かぶりつきの一団がその方々だったのでしょうか?
さて、本日の1曲目:ベルリオーズの「リア王」序曲です。楽器の並びはいつもの対向配置で、左から順に第1ヴァイオリン(8)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)、第2ヴァイオリン(7)と並びます。正面後方にフルート(2)、オーボエ(2)、その後方にクラリネット(2)、ファゴット(2)の木管セクションが位置し、その後方にはホルン(4)、トランペット(2)、最後方にコントラバス(3)とトロンボーン(3)とチューバが横一列に並んで、その右側にティンパニが配されているという形です。とかく大編成が要求されるベルリオーズで、この規模で演奏できる曲ということで選ばれたのかもしれません。コンサートマスター席には、犬伏亜里さんが座ります。
始まりはヴィオラとチェロとコントラバスの低音弦楽器群から。これにホルン、フルート、ファゴットにヴァイオリンが加わり、オーボエとフルートのひとふしが表情を変えて行きます。ティンパニが連打されるあたりは、なにやら不穏な雰囲気ですが、何度かの全休止を経て急速な音楽に転換していきます。うーむ、滅多に聴けない曲で生ベルリオーズ、たいへん貴重な機会です。シュワシュワと湧き上がってくるようにクレッシェンドする弦楽セクションや、印象的なオーボエに思わず聴き惚れました。
ここで、二曲目のために、ステージ中央にピアノが準備されます。お客さんの入りは、両サイドの最前列から二列と、二階席の最後部二列ほどが空いているくらいでしょうか。自由席の埋まり方が今ひとつのようです。でも、車イスのお客さんもおられ、これはいいことですね。
準備も終わり、今日のソリスト、ホジャイノフさんが登場します。22歳の期待の新星ということですが、若い!当方などうらやましいほどに、ほんとに若いです。でも、第1楽章:ゆったりとピアノ・ソロが始まると、8-7-5-5-3 の弦楽にFl(1),Ob(2),Cl(2),Fg(2),Hrn(2),Tp(2),Timp.という構成の、小編成だけど迫力あるオーケストラとともに奏でる音楽は、実に堂々としたものでした。カデンツァはベートーヴェン自身のものではなくて、技巧的で独特のもの。たぶん、初めて聴きます。第2楽章:遅めのテンポで。ピアノもゆっくりとしたテンポで、呟くように。ちょうど、耳の聞こえないベートーヴェンが、楽器に耳を押し当てて音を探るようなイメージでしょうか。集中と緊張。左手の音量を抑え気味に、右手の旋律を浮かび上がらせながら、小編成とピアニシモの魅力を充分に表現していました。第3楽章:一転して、軽やかに流れるように、時に爆発的に、音楽が盛り上がります。コントラバスの低音の刻みが要所にきいて、リズムが明確でティンパニも活躍。4番の終わりはこうでなくちゃ!という終わり方でした。
ホジャイノフさんのアンコールは、ビゼーの「カルメン」の旋律が次々に出てくる、すごい技巧的な曲で、思わず呆気にとられるほどです。ホジャイノフさんのピアノは、強音のダイナミックな力強ささだけでなく、弱音がすごくきれいで、生まれたときからコンパクトディスクがあった世代なんだな、と感じさせられました。
15分の休憩時には、ホワイエで旧知の友人と会い、カプチーノを手に「やあやあしばらく!」としばし歓談。彼は、米沢からの来場です。ホジャイノフさんのピアノに、世の中には若い才能が次々に登場しているんだねぇ、と率直な感想でした。
後半は、ブラームスの交響曲第4番。8-7-5-5-3の弦楽セクションは変わらずに、Fl(2),Ob(2),Cl(2),Fg(3),Hrn(4),Tp(2),Tb(3),TimpとTriangle という楽器編成です。ただし、Fl(2)のうち1本はピッコロ持ち替え、FgとTbは、それぞれコントラファゴットとバス・トロンボーンを含みます。
第1楽章:ホールに響き渡る金管の音、力のこもった音楽です。楽章の終わりの音の響きの透明感が、素晴らしいです。第2楽章:ホルンに木管が加わって始まります。弦のpiz.にホルンとオーボエ、このあたりの魅力的なこと。弦楽アンサンブルの美しさ。ClとGfのひとふしがそっと加わるところなど、実にシャイな味わい。含羞のブラームスですね~。第3楽章:がらりと曲調が変わって、輝かしい音楽に。ティンパニが活躍、トライアングルが絶妙のバランスで聞こえます。第4楽章:トロンボーン部隊も加わり、パッサカリアの楽章。やや情念的な弦をバックに、足達さんのフルートの大ソロ!思いあふれるような音楽と、それを断ち切るように鳴り響く古風で強固な音。一つの楽器に受け持たせるのではなくて、次々に受け渡されていく。この音楽は、実に細やかなtexture を持っていることを、あらためて感じます。そして、コントラファゴットもバストロンボーンも加わった音の威力で総奏。最後まで見事な緊張感で貫かれた演奏でした。良かった~!
演奏の後に、恒例のファン交流会が開かれました。
もしかしたら、全国のファンクラブの方々は、この持ち方などが視察の目的だったのかもしれず、他のオーケストラのファンクラブではどんなふうに運営しているのか、興味深いところです。
こちらは、飯森さんのインタビュー。
当方は、ホジャイノフさんの「My Favorites」というCDを購入、ご本人にサインしてもらって、大喜びで帰宅しました(^o^)/tanjun~
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ブラームスの4番といえば、しばらく前に、亡父の鎮魂の旅にCDを1枚だけ持参して、繰り返し聴いたのがこの曲でした。あれからだいぶなるように感じていましたが、まだ五年前のことなのですね。うーむ、早いような遅いような、不思議な感じです。
(*1):
ブラームス「交響曲第4番」を聴く~「電網郊外散歩道」2009年8月