月末直前の日曜日、老母の新型コロナワクチン接種を予約した日でしたので、指定の集団接種会場に向かいました。30分前に行ったはずが、駐車場にはすでに多くの車が駐車しており、大勢の人が集まっていました。考えてみれば、都会では集団接種を受けるにも電車やバスなど公共交通機関を乗り継いで行かなければいけないわけで、ドア・ツー・ドア、車椅子で移動でき、受付してまもなく予防接種なんて贅沢なことなのかもしれません。接種後は特に変わったこともないそうで、風邪を引いてもいられないと、畑仕事もお休みとしたようです。
であれば、私も安心して出かけられると、午後から山形交響楽団第293回定期演奏会に出かけました。
本日のプログラムは、
というものですが、期待するのはやはり初めて聴くトマジの「トロンボーン協奏曲」です。
会場に入ってびっくり。編成がずいぶん拡大されて、ステージ上が狭い(^o^)/
左から、第1ヴァイオリン(10)、第2ヴァイオリン(8)、チェロ(6)、ヴィオラ(6)、その右後ろにコントラバス(4)と、10-8-6-6-4 という弦楽五部。正面奥に、ピッコロ、フルート(2)、オーボエ(2)、その後方にクラリネット(2)、ファゴット(2)、さらにその後方にホルン(4)とトランペット(2)、トロンボーン(3:うち1はバストロンボーン)、チューバの金管群、木管楽器の左にハープ、金管楽器の左にはティンパニとパーカッションという編成・配置です。
この拡大された編成で始まったボロディンは、活発なリズムにのって全体がダイナミックに響き合う中に要所で見事な独奏が聴けるもので、特におなじみの「だったん人の踊り」では、例えばオーボエの印象的なフレーズとクラリネットの速いパッセージなど、「山響、うまいなあ!」とあらためて大満足。以前、雑誌『レコード芸術』に付録のCDに山響の録音がサンプラーとして掲載(*1)されたことがありますが、あのときもたしかボロディンだったはず。
ソリスト中川英二郎さんが白いシャツ姿で登場、なんだか隣の会議場からちょいと抜け出してきたといった風情です。トマジのトロンボーン協奏曲は、大編成オーケストラが爆演するタイプではなく、むしろピアノ伴奏では音色が単調になるのでオーケストラを使った、みたいなぎゅっと集中緊縮型の曲。でもトロンボーン・ソロはすごいです。長身の中川さん、腕も長いのでスライドさせるのも全く苦にならないみたい。初めて聴きましたがなかなかいい曲で、小編成アンサンブルやピアノ伴奏などと共演するのも別の味があって魅力的かも。
ソリスト中川さん、引き続きラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」を弦楽合奏と共に。ほんとに軽々と音が出るのにびっくりします。とてもいい雰囲気のラヴェルで、聴き惚れました。
一転して、アンコールはボサノバと言うかジャズ風というか、無伴奏で「イパネマの娘」を。これも良かった〜。
ここで、20分の休憩です。
プログラム後半は、リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」です。山響定期では、2010年3月の第203回定期演奏会(*2)で、広上淳一さんの指揮、高木和弘さんのヴァイオリンで聴いていますので、実に11年ぶりです。今回は、コンサートマスター髙橋和貴さんのヴァイオリンがシェエラザード姫を演じることに。編成を拡大した弦楽の中で咆哮する金管部隊の重量級の響きが素晴らしく、序奏の後に登場するヴァイオリンによるシェエラザード姫の主題が実に繊細な響きで、対比の妙に引き込まれました。ハープも、木管やチェロの独奏部も、官能的な弦楽セクションの響きも、実に良いなあ。管弦楽をたっぷり堪能して、今回も実に良い演奏会でした。
帰途、車を運転しながら思ったのは、山形テルサというホールの大きさに対して今回の編成は響きの純度を保つにはもしかしたら上限に近いのかもしれず、この響きの純度とスケールを自宅で一般的な音響機器で再現しようとするのはそもそも無理なのだろうなあ。やっぱり、ナマの演奏会に通うことは音楽を堪能するという点で大きな喜びであり、満足感が大きいと感じます。新型コロナウィルス禍の中にあっても、わざわざ演奏会に出かけるのは、それがあるからなのだろう。もちろん、一般的な演奏会のプログラムには乗らないような、特別な曲目を調べたり楽しんだりできるという点で、録音や録画の役割は大きいと日々感じてはおりますけれど。
(*1):『レコード芸術』3月号に山形交響楽団の記事と演奏録音CDが付録に〜「電網郊外散歩道」2014年2月
(*2):山響第203回定期演奏会「ペテルブルグの栄光」を聴く〜「電網郊外散歩道」2010年3月
であれば、私も安心して出かけられると、午後から山形交響楽団第293回定期演奏会に出かけました。
本日のプログラムは、
- ボロディン:歌劇「イーゴリ公」第二幕より "だったん人の娘たちの踊り" "だったん人の踊り"
- トマジ:トロンボーン協奏曲
- ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(トロンボーンと弦楽のための)
- リムスキー=コルサコフ :交響組曲「シェエラザード」作品35
飯森範親 指揮 山形交響楽団、中川英二郎(Tb)
というものですが、期待するのはやはり初めて聴くトマジの「トロンボーン協奏曲」です。
会場に入ってびっくり。編成がずいぶん拡大されて、ステージ上が狭い(^o^)/
左から、第1ヴァイオリン(10)、第2ヴァイオリン(8)、チェロ(6)、ヴィオラ(6)、その右後ろにコントラバス(4)と、10-8-6-6-4 という弦楽五部。正面奥に、ピッコロ、フルート(2)、オーボエ(2)、その後方にクラリネット(2)、ファゴット(2)、さらにその後方にホルン(4)とトランペット(2)、トロンボーン(3:うち1はバストロンボーン)、チューバの金管群、木管楽器の左にハープ、金管楽器の左にはティンパニとパーカッションという編成・配置です。
この拡大された編成で始まったボロディンは、活発なリズムにのって全体がダイナミックに響き合う中に要所で見事な独奏が聴けるもので、特におなじみの「だったん人の踊り」では、例えばオーボエの印象的なフレーズとクラリネットの速いパッセージなど、「山響、うまいなあ!」とあらためて大満足。以前、雑誌『レコード芸術』に付録のCDに山響の録音がサンプラーとして掲載(*1)されたことがありますが、あのときもたしかボロディンだったはず。
ソリスト中川英二郎さんが白いシャツ姿で登場、なんだか隣の会議場からちょいと抜け出してきたといった風情です。トマジのトロンボーン協奏曲は、大編成オーケストラが爆演するタイプではなく、むしろピアノ伴奏では音色が単調になるのでオーケストラを使った、みたいなぎゅっと集中緊縮型の曲。でもトロンボーン・ソロはすごいです。長身の中川さん、腕も長いのでスライドさせるのも全く苦にならないみたい。初めて聴きましたがなかなかいい曲で、小編成アンサンブルやピアノ伴奏などと共演するのも別の味があって魅力的かも。
ソリスト中川さん、引き続きラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」を弦楽合奏と共に。ほんとに軽々と音が出るのにびっくりします。とてもいい雰囲気のラヴェルで、聴き惚れました。
一転して、アンコールはボサノバと言うかジャズ風というか、無伴奏で「イパネマの娘」を。これも良かった〜。
ここで、20分の休憩です。
プログラム後半は、リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」です。山響定期では、2010年3月の第203回定期演奏会(*2)で、広上淳一さんの指揮、高木和弘さんのヴァイオリンで聴いていますので、実に11年ぶりです。今回は、コンサートマスター髙橋和貴さんのヴァイオリンがシェエラザード姫を演じることに。編成を拡大した弦楽の中で咆哮する金管部隊の重量級の響きが素晴らしく、序奏の後に登場するヴァイオリンによるシェエラザード姫の主題が実に繊細な響きで、対比の妙に引き込まれました。ハープも、木管やチェロの独奏部も、官能的な弦楽セクションの響きも、実に良いなあ。管弦楽をたっぷり堪能して、今回も実に良い演奏会でした。
帰途、車を運転しながら思ったのは、山形テルサというホールの大きさに対して今回の編成は響きの純度を保つにはもしかしたら上限に近いのかもしれず、この響きの純度とスケールを自宅で一般的な音響機器で再現しようとするのはそもそも無理なのだろうなあ。やっぱり、ナマの演奏会に通うことは音楽を堪能するという点で大きな喜びであり、満足感が大きいと感じます。新型コロナウィルス禍の中にあっても、わざわざ演奏会に出かけるのは、それがあるからなのだろう。もちろん、一般的な演奏会のプログラムには乗らないような、特別な曲目を調べたり楽しんだりできるという点で、録音や録画の役割は大きいと日々感じてはおりますけれど。
(*1):『レコード芸術』3月号に山形交響楽団の記事と演奏録音CDが付録に〜「電網郊外散歩道」2014年2月
(*2):山響第203回定期演奏会「ペテルブルグの栄光」を聴く〜「電網郊外散歩道」2010年3月