電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第313回定期演奏会でベートーヴェン、ハイドン、ブラームスを聴く

2023年11月20日 18時24分01秒 | -オーケストラ
11月19日(日)の午後、山形市の山形テルサホールで山響こと山形交響楽団の第313回定期演奏会を聴きました。少し出遅れたこともあり、駐車場が軒並み満車になっていましたが、霞城セントラルの屋内パーキングに停めることができ、まずは会場へ。ホールに入り、西濱事務局長と指揮の鈴木秀美さんのプレトークを聴きました。鈴木秀美さんは山響の首席客演指揮者となって10年になるらしい。そういえば私も鈴木秀美さんの指揮のときにはかなり勇んで出かけているような気がします。なんと言っても、ハイドンのシンフォニーや初期シューベルトの魅力などを教えてくれたのが、鈴木秀美さんと山響の演奏でしたので。今回も、次のように魅力的なプログラムとなっています。

    バロック、モダン二つの世界で世界を席巻する名手 佐藤俊介と鈴木秀美 待望の共演が実現する!蘇るベートーヴェン
  1. ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61 Vn:佐藤俊介
  2. ハイドン:交響曲 第83番 ト短調「めんどり」Hob.I:83
  3. ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
     鈴木秀美 指揮、山形交響楽団

今回の独奏者の佐藤俊介さんは、もちろん私も初めて聴きます。Wikipedia 等によれば、若くして才能を発揮し、モダン、ピリオド、両方で優れた演奏を示しながら世界的な活躍を続けている39歳、使用する楽器は羊の腸を素材とするガット弦を用いて演奏することが多いそうで、このあたりはチェロ奏者としての鈴木秀美さんとの共通点になっています。山響でもぜひ共演したいと願っていたけれどなかなかスケジュールが合わず、今回ようやく共演が実現したということのようです。

さて、今回は最初から協奏曲。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲という大名曲を演奏します。楽器配置は、弦楽が左から第1ヴァイオリン(8)、チェロ(5)、その奥にコントラバス(3)、ヴィオラ(5)、第2ヴァイオリン(7)という 8-7-5-5-3 という編成の対向配置です。正面奥に木管楽器が、フルート(1)とオーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)とファゴット(2)、正面最奥部にバロックティンパニが位置し、左にホルン(2)、右にトランペット(2)と金管楽器が並びますが、例によって両方ともナチュラルタイプのようです。
第1楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポから。バロック・ティンパニの抜けの良い音が800席のホールに気持ちよく響きます。管楽器の響きもバランスの良いまろやかさ。弦楽セクションの奏者の皆さんの表情がとてもいきいきしているみたい。開始される独奏ヴァイオリンの音色は、しなやかでやわらかく暖かい音。しかも、澄んだ音がホールの上方に上っていって消えていくようです。なるほど、これがガット弦とピリオド奏法と響きの良い小ホールとの相乗効果か。佐藤俊介さんの演奏は実に見事で多彩なもので、独奏部分だけでなく全奏でも奏いているみたい。カデンツァはメンデルスゾーンの頃のダヴィドフという人のものだそうです。鈴木秀美さんの指揮も、強弱等の対比を活かしながら活気があり推進力があります。思わず熱くなってしまう演奏でした。

満場の拍手に応えて、アンコールはバッハの無伴奏。残念ながら、会場を出るときに作品名、作品番号等の表示を撮影するのを忘れてしまいましたので、私のような素人音楽愛好家にはこれ以上の詳細は不明(^o^)/

ここでプログラム前半が終わり、15分の休憩となりました。
後半の最初は、ハイドンの交響曲第83番「めんどり」です。もちろん、私にとって実演では初めての機会ではなかろうか。8-7-5-5-3 の弦楽5部に Fl(1)-Ob(2)-Fg(2)-Hrn(2) という楽器編成です。鈴木秀美さんは指揮棒無しで登場。第1楽章:アレグロ・スピリトゥオーソ。この編成からは考えられないような迫力の始まりです。第2楽章:アンダンテ。例えば2nd-VnとVlaがpで奏すると次にはいきなりfで弦の全奏が対比されるというように鋭い対比を見せ、穏やかな緩徐楽章とひとくくりにはできません。第3楽章:メヌエット、アレグレット〜トリオ。おすましした舞曲ではなくて、けっこう活発なメヌエットです。第4楽章:フィナーレ、ヴィヴァーチェ。軽やかで晴れやかなアレグロ。全部の楽器が緊密なアンサンブルを展開しますが、とりわけ弦楽セクションがすごい!その中でFlとObが浮かび上がります。音楽が一度終わった風に見せかけてまた再開して思わず拍手しそうになるなど、ハイドン先生のお茶目さもチラリ(^o^)/

そして最後はブラームスのハイドン・ヴァリエーション。8-7-5-5-3 の弦楽5部に Piccolo, Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), ContraFg(1), Hrn(4), Tp(2), Timp, Triangle という楽器編成です。指揮棒を持って登場した鈴木秀美さんは、実は「ハイドン・ヴァリエーション」を振るのは今回の定期演奏会が初めてなのだそうで、そんなこともあるのかと妙な感心をしました。
穏やかな表情の例の主題、そして変奏は切れ込みの鋭い対比を付けて、ブラームスの充実した音楽を奏でます。オーケストラの規模や奏法、ホールの大きさなどにもよるのでしょうか、言い方はヘンですが、ある種「茫漠としたブラームス」ではなくて「明晰なブラームス」に近いかも。例えばラスト近く、三原さんのトライアングルの音、今までCD等ではあまり意識したことがありませんでしたが今回はほぼ聴き取れて、主題をそっくりそのままなぞっているのではないのだな、と作曲家の芸の細かさを感じました。

今回も、良い演奏会となりました。最近、終演後に団員の皆さんがお見送りしてくれるのが定例となってきたようです。ニコニコ笑顔で帰途に着くことができ、これも嬉しいことです。

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山響第312回定期演奏会でコダーイ、サン=サーンス、サラサーテ、ドヴォルザークを聴く

2023年10月23日 06時34分40秒 | -オーケストラ
よく晴れた秋の日曜日、山響こと山形交響楽団の第312回定期演奏会を聴きました。今回は、小林研一郎さんの指揮、瀬崎明日香さんのヴァイオリンで、次のようなプログラムとなっています。

  1. コダーイ「ガランタ舞曲」
  2. サン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」 Vn:瀬崎明日香
  3. サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」 Vn:同上
  4. ドヴォルザーク「交響曲第8番」
     小林研一郎 指揮、山形交響楽団

いつもは、指揮者が登場して西濱事務局長とトークをするのですが、今回は何か趣向があるようで、左奥に使わないはずのピアノが置いてあります。指揮者に代わって登場したのは、今回の独奏者の瀬崎明日香さん。先ごろ逝去された山形交響楽協会会長の三井嬉子さんの思い出や、指揮者のコバケンこと小林研一郎さんのことなどを話しました。それから指揮者の小林さんが紹介されて登場、というよりも、話しながらピアノに向かい、コダーイのガランタ舞曲の旋律を紹介した後、フルートの知久翔さん、オーボエの柴田祐太さん、クラリネットの川上一道さんの三人に吹いてもらい、その魅力を話します。続いてホルンの勇壮な旋律とチェロの聴きどころを紹介、なるほど、あまり知られていない曲目の魅力を紹介して親しんでもらおうということなのだな。コバケンという愛称で親しまれている理由がわかりました。川上さんを山本さんと間違えた小林さんのおちゃめさも、苦笑しながらちゃんと手を挙げた川上さんも、筋書き通りにはいかない本番の面白さかも(^o^)/

それで、第1曲め、コダーイの「ガランタ舞曲」です。作曲家の石川浩さん執筆のプログラムノートによれば、この曲は「1933年に創立80週年を迎えたブダペスト・フィルハーモニー協会の祝賀行事のために書かれた作品」だそうで、2017年に飯森範親さんの指揮で聴いて以来(*1)、実演では二度目となります。楽器編成と配置は、左から第1ヴァイオリン(10)、第2ヴァイオリン(8)、チェロ(6)、ヴィオラ(5)、その右にコントラバス(4)と、ヴァイオリン群を増強、ヴィオラが少ないけれど、コントラバスも増やしているようです。正面奥にフルート(2)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)、その奥にトランペット(2)、木管の左にホルン(4)、正面最奥部のティンパニの左にトライアングル、スネア・ドラム、グロッケンシュピールのパーカッションが並ぶ、というものです。
出だしのチェロの哀感を持った旋律が勇壮なホルンに引き継がれて曲が始まると、ダイナミックで美しい音楽となります。フルートからオーボエ、クラリネットと見事に引き継がれる例の部分も本当に魅力的で、リズムも響きも多彩な音楽・演奏に魅了されました。聴衆も爆発的な拍手、でも指揮者が言うとおり、「こんなスゴイ演奏には起立して表すべき」でしょう。スタンディングオベーションでした。

この後、独奏者の場所を取るためにヴァイオリン・パートを左に少し下げますが、楽器編成と配置は変わらず。左袖から独奏者が登場、少し緑色がかった水色のドレスで、瀬崎明日香さんの登場です。指揮者は先の「ガランタ舞曲」では暗譜でしたが、今回はスコアを置いているようです。サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」は、「序奏と気まぐれなロンド(輪舞曲)」というような意味でしょうか、スペイン風というかジプシー風というか、エキゾティックで高度に技巧的な音楽で、思わずリズムに乗せられてしまいます。大きな拍手に続き、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」を演奏します。オーケストラが哀愁を帯びて開始すると、独奏ヴァイオリンがやっぱりジプシー風の「あの」旋律を奏します。どうしても独奏ヴァイオリンに聴き惚れてしまいますが、寄り添うオーケストラの美しさも特筆モノです。とりわけ瞑想的なところ、弱音部の繊細な響きは素晴らしかった。
聴衆の大きな拍手に応えて、アンコールはドヴォルザーク「ジプシー歌曲集」から「我が母の教え給いし歌」を無伴奏で。今回はジプシー音楽との関連をテーマにしたということでしょうか、独奏ヴァイオリンがロマ出身のソプラノ歌手のように歌い、こちらも素晴らしかった。



ここで、15分の休憩です。

後半は、ドヴォルザークの交響曲第8番。楽器編成は、Fl(2,うち1がピッコロ持ち替え)、Ob(2,うち1がイングリッシュホルン持ち替え)、Cl(2)、Fg(2)、Hrn(4)、Tp(2)にTb(3)とTubaが加わります。弦は1st-Vnの最後尾に瀬崎明日香さんが加わり、なんとも豪華な 11-8-5-6-4 という編成。バランス的に弦の中低域パートには負担がかかるのかもしれませんが、ゲストの参加に楽員の皆さんの志気は高まっているようです。私の大好きなドヴォルザークの8番、お天気の良い果樹園で仕事をするときに聴きたい曲のナンバーワン、しんねりむっつりするのではなくて、やっぱり開放的に持てる力を存分に発揮するのが合うのかもしれないと思わせる爆発でした! 音楽の心を届けるのは客席だ!と言わんばかりに客席の方を指差しながら指揮する姿に、音楽と楽員をコントロールするのではなくて、あるいはひそやかにコントロールしながらも、演奏者の自発的な気持ちを引き出すのがコバケン流なのだなと感じさせる演奏でした。ブラーヴォ! スタンディングオベーションでした。

山響の定期演奏会には珍しく、アンコールがありました。山響との共演を約束していた三井嬉子さんを偲び、約束を果たしましたよと「ダニーボーイ」を。その後、三井さんは山響がしんみり終わるのは喜ばないだろうからと、ドボルザークの交響曲第8番、第4楽章の最後の爆発をもう一度! 楽員の皆さんも手を振ってお別れしました。ほんとに良い演奏会でした。



この前、写真撮影が解禁となるタイミングが事務局から明示されましたので、少しだけ撮影してみました。指揮者の指示でホルンセクションが起立し、聴衆の拍手を受けている場面です。いいなあ。写真を見ると思い出されます。

(*1): 山形交響楽団第264回定期演奏会でコダーイ、ニーノ・ロータ、ブラームスを聴く〜「電網郊外散歩道」2017年11月

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山形交響楽団第311回定期演奏会で酒井健治、モーツァルトを聴く

2023年09月11日 06時00分18秒 | -オーケストラ
9月10日の土曜日は、早朝から河川清掃ボランティアで草刈り作業に従事。前日はやはり早朝から農事実行組合の農業用水路の草刈りでしたので、2日続けての早朝労働となりました。終了後も思い立って反対側の堤防の管理用道路が蔓性の草がはびこっていましたので、これも刈り払いをして軽トラックが通れるようにしましたので、やや疲労気味。朝食後に昼寝をしようと思っていたら、野暮用が次々に発生して寝そびれてしまい、昼食後に山響定期のマチネに直行です。

駐車場は何かイベントがあったらしく混み合っていましたが、会場の山形テルサになんとか駐車できました。ホールに入ると、ステージ上はなんだか祭りの会場のような楽器の混み具合で、思わずびっくりです。西濱事務局長と指揮の阪哲朗さんに加えて、今回のプログラム最初の曲目「ジュピターの幻影」の作曲者、酒井健治さんも登場し、ヨーロッパ時代の話や曲についての話などを聞きました。滑舌の良い早口で、西濱さんとの掛け合いを聞いていると、どうやら関西のノリみたい(^o^)/

本日のプログラムは、

  1. 酒井健治:ジュピターの幻影
  2. モーツァルト:ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K.467 務川慧悟(Pf)
  3. モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調「ジュピター」K.551
      阪哲朗指揮、山形交響楽団

というものです。

最初の曲目、酒井健治さんの「ジュピターの幻影」の楽器編成と配置がスゴイ。ステージ左から第1ヴァイオリン(8)、チェロ(4)、ヴィオラ(4)、第2ヴァイオリン(7)の対向配置、コントラバス(2)は左後方です。中央奥にフルート(2,うち1はpicc持ち替え)、オーボエ(2,うち1はEngHrn持ち替え)、その奥にクラリネット(2,スライドホイッスル持ち替え)、ファゴット(2,蛇腹ホース持ち替え)、木管楽器の両サイドに左がホルン(2)、右がトランペット(2)とやや小ぶりの編成ですが、その奥に並ぶパーカッション、鳴り物がスゴイ! プログラムノートによれば、アンティーク・シンバル、ヴィヴラフォン、チャイム、スプリングコイル、サスペンド・シンバル、ポリブロック、ウッドブロック、ムチ、タムタム、ラチェット、オクトブロック、ワルトトイフェル、マリンバ、ティンパニ、トムトム、トライアングル、ギロ、バスドラム、スネアドラム、ウォーターホーン、ハーモニックパイプ だそうです。

演奏が始まると、変わった響きの中にもところどころにモーツァルトの「ジュピター」交響曲の旋律が顔を出します。不思議な響きは何の音なのか、おそらく単一の音ではないのかも。ダイナミックに高揚する音楽と言うよりはむしろ、静的な祈りの音楽に近いのかもしれません。

続いて、ステージ中央にグランドピアノが引き出され、第2曲め、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番です。楽器編成と配置は、パーカッションはバロックティンパニだけになり、1st-Vn(8), Vc(5), Vla(5), 2nd-Vn(7), Cb(3) と通常編成に戻った弦楽5部に、Fl, Ob(2), Fg(2), Hrn(2), Tp(2), Timp というもので、弦楽5部の配置は同じで、Cl の位置に Hrn が座り、Tp の右にバロックTimp. という配置です。もちろん、ホルンとトランペットはモーツァルトが作曲当時の形のナチュラルタイプです。
演奏が始まるとなんとも気持ちが良い。ピアノの音は美しいし、溌溂とした音楽は耳に快いものです。早朝の作業の疲れもあってか、不覚にも第2楽章をうとうとしてしまいました。演奏者の皆さんには申し訳ないことながら、第3楽章の華々しい音楽に気持ちよく目覚めたという、なんとも締まらない状況です。でも、アンコールで演奏してくれたモーツァルトのピアノ・ソナタ イ短調 K.310 の第1楽章は、速いテンポで心に訴える力のある演奏でした。ぐっと来ました。

ここで15分の休憩です。
休憩の間に、山響の新しいCDの予約をしてきました。村川千秋指揮によるシベリウスの交響曲第3番ほか。ちょうど第3番のCDは持っていなかったので、願ったりかなったりです。9月22日頃に届く予定。これは楽しみです。

さて後半は、モーツァルトの交響曲第41番ハ長調「ジュピター」です。楽器編成と配置は、8-7-5-5-3 の弦楽5部は対向配置。これに Fl(1), Ob(2), Hrn(2), Fg(2), Tp(2), Timp. が加わります。ホルン、トランペットはナチュラルタイプ、バロックティンパニは1曲めの楽器配置の関係で右奥のトランペットの並びです。
この曲は手持ちのLPやCD等の録音も何種類かあり、実演でも飯森範親さん、鈴木秀美さんとの演奏等を聞いていますので、いわばふだんよく聴きなれた音楽の部類に入るでしょう。でも、阪哲朗さんとの「ジュピター」も良かった。オーケストラの響きが豪華でティンパニが効果的に作用し、抑制と開放が巧みに組み合わされた、実に聴き応えのある演奏でした。終楽章のフーガのところなど、ずっと聴いていたいと思わせる充実したもので、ほんとに良かった。聴衆の拍手の大きさと熱がよく物語っていたと思います。

終演後、気分良く帰宅しようと思っていたら、落とし穴がありました。駐車場から出ようとしたら、なんと、駐車券が見当たらない! いつものサンバイザーのカード入れにないのです。胸ポケットなどを焦って探しましたがどこに置いたのか記憶にない。後続の車は苛ついているだろうし、老害と言われても仕方がない事態です。スタッフの人に訳を話して誘導してもらい、車を駐車場に戻して隅から隅まで探しました。そうしたら、なんとショルダーバッグの背側ポケットにありました! おそらくは、いつものサンバイザーに入れようと思ったが一瞬やまぎん県民ホールと勘違いし、事前精算機で精算できるように胸ポケットに入れようとして、汗で湿ってしまうのを防ぐためにショルダーバッグの背ポケットに入れた、という流れだったのでしょう。

教訓:できるだけいつもと同じようにする。いつもと違うことをしたときは、意識してそれを覚えておく必要がある。


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山響・仙台フィル合同演奏会でドビュッシー、ラヴェルを聴く

2023年07月24日 06時00分48秒 | -オーケストラ
梅雨が明けた日曜の午後、山形市の県民ホールで、山響こと山形交響楽団と仙台フィルとの合同演奏会が開かれました。「東北ユナイテッド」と称して東北の2つのプロオーケストラが合同演奏会を開く試みは、すでにだいぶ回を重ねていますが、パンフレットには残念ながらそうした経緯を記録したデータはありません。このブログで検索してみると、最初に合同で演奏会を行ったのは、どうやら2012年のマーラーの交響曲第2番「復活」のとき(*1)らしい。以後、レスピーギ三部作やR.シュトラウス作品、あるいはマーラーの5番、ブルックナーの8番など、演奏規模が大編成を要するものを取り上げてきています。2020年からは「東北ユナイテッド〜東北は音楽でつながっている〜」と位置づけて取り組まれています。昨年は山響の50周年イヤーでしたが、今回は創立50週年を迎えた仙台フィルの記念年にあたりますので、仙台フィルの桂冠指揮者パスカル・ヴェロさんを迎えて、お得意のフランスものを取り上げた演奏会、ということになります。



開演前のプレトークは、山響の西濱事務局長が紹介して登場した指揮のパスカル・ヴェロさん、仙台フィルのコンサートマスター西本幸弘さん、そして今回出番が多い山響フルート奏者の知久知久さんの三人です。パスカル・ヴェロさんと知久さんは、同じパリ高等音楽院(のだめカンタービレ・ヨーロッパ編の舞台になった学校)で学んだ先輩後輩だそうで、フランス語でやりとり。うーん、フランス語ができるなんて、実にうらやましい(^o^)/ これに対して西本さんのほうは会場の山形県民ホールを絶賛、縄で縛って仙台に持って帰りたいほどだそうで、これにはパスカル・ヴェロさんも同意します。たしかに、宮城県民会館は私が学生時代の頃からの建物ですので、かなり老朽化しているのは確かだろうと思います。おそらく、2011年の東日本大震災の復興事業に予算を取られるため後回しにされて、仙台フィル50周年には間に合わなかったのだろうと推測しているところです。

さて、今回の合同演奏会のプログラムは、

  1. ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
  2. ラヴェル:ダフニスとクロエ 第2組曲
  3. ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ(管弦楽版)
  4. ラヴェル:ラ・ヴァルス (管弦楽版)
  5. ラヴェル:ボレロ

というもので、オールフランス音楽。開演前のステージを見ると、その規模の大きさがわかります。ざっと見たところ、ステージ左から第1ヴァイオリン(12)、第2ヴァイオリン(12)、チェロ(8)、ヴィオラ(9)、コントラバス(6)という、12-12-9-8-6 型の弦楽セクションに、正面奥に木管・金管、パーカッションもかなりの人数になるようですが、オペラグラスを忘れてしまい、左奥のハープ2台とチェレスタ2台のほかの詳細は不明。



客席の照明が落ち、楽員の皆さんが登場します。今回のコンサートマスターは仙台フィルの西本さんのようで、脇に山響の平澤さんかな。残念ながら、県民ホールの客席照明はストンと真っ暗に近い状態になりますので、山形テルサと違い、手元でメモすることもできません。したがって全体的な漠然とした印象になってしまいますが、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」では、冒頭のフルート・ソロが見事で、その後の弦楽の量感を感じさせてくれるものでした。次はラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲。規模の大きいオーケストラ音楽を堪能させてくれる曲目です。すっきりした涼感を感じさせる面もあり、この季節にはぴったりかも。

ここで15分の休憩となりました。念のためお手洗いに行ってきましたが、とくに知人に出会うようなことはなし。なにせ客数が多いからなあ。テルサホールの2.5倍のキャパシティですから、顔見知りに出会う確率もそれなりに低下するのでしょう。

後半は、「高雅で感傷的なワルツ」と「ラ・ヴァルス」と続きます。鳴り物いっぱいでカラフルな管弦楽の響きを味わいます。そして弦楽セクションと木管楽器群の間に小太鼓が陣取り、「ボレロ」が始まります。3拍子の同じリズムをずっと繰り返すうちに、しだいに演奏者と聴衆の高揚感が一体化していく、そんな魔法のような音楽。大きな編成のオーケストラだけに、音のヴォリューム効果も絶大です。演奏が終わると、待ってましたとばかりにブラーヴォ!が出ました。

聴衆の大きな拍手に応えて、パスカル・ヴェロさん、アンコールのサービスです。しかも曲の途中から始めても含めて2回も! 曲は、ドリーブの「コッペリア」から、「スワニルダのワルツ」。後半はワルツとボレロ、3拍子で統一したんだよ、ということでしょうか。粋なプログラムというべきでしょう。



今朝になって、朝刊を見たら驚きました。地元紙・山形新聞にはすでにこの演奏会の記事が掲載されているではありませんか! 伊藤律子記者の署名記事で、コンパクトによくまとまった内容でした。某素人音楽愛好家ののんびりした記事とはだいぶ違います。さすがです(^o^)/



ただ、新聞社の表記基準により仕方がないのでしょうが、指揮者のパスカル・ヴェロさんのお名前が「ベロ」さんになっているのはどうも違和感があります。小学校でも英語教育が始まっているご時世に、「B」と「V」を区別しない表記基準は、時代遅れになりつつあるのではなかろうか。固有名詞や学術用語などについては、もう「ヴェルディ」「ヴェローナ」「ヴェニス」で良いのではなかろうか。

(*1): 山響・仙台フィル合同による第222回定期演奏会でマーラーの交響曲第2番「復活」を聴く〜「電網郊外散歩道」2012年7月

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山響第310回定期演奏会でベートーヴェン、ロゼッティ、ドヴォルザークを聴く(2)

2023年06月20日 06時49分35秒 | -オーケストラ
畑仕事にくたびれて寝てしまった昨日の続きです。

プログラムの後半は、ドヴォルザークの「スラブ舞曲第1集」です。楽器編成と配置は、8-7-5-5-3 の弦楽5部に正面奥に Picc, Fl(2), Ob(2)、その奥に Cl(2), Fg(2)、その奥に Tp(2), Tb(3)、管楽器群の右側に Hrn(4)、左側に Timp. と Perc. というものです。パーカッションはバスドラム、トライアングル、シンバル等が見えます。Fl の客演は以前にも出演した鈴木芽玖さんで、他に2nd-Vn、Hrn、Perc. にも客演が入っているようです。

第1曲、ダイナミックで豪快な始まりで印象的な曲ですが、あらためて気づいたのは、バスドラムがこの迫力を生んでいる要因になっていること。CDでは気づきにくいところでした。
第2曲、ややずらしたブゥオーっという始まりは意図的なものでしょう。そのことで、素朴で田舎風なところが表されるからかも。
第3曲、田舎風なのんびりした空気が一転して明るく快活に、そしてまた田舎風に戻ります。どこか懐かしげな風情です。
第4曲、同じくのんびりした田舎の風情で、山登りで言えば下り道。可愛いものや美しいものも目に入り、風景も広々と全体が見えるような爽快さがあります。
第5曲、速いテンポで。勢いのある、活力のある音楽です。
第6曲、VcとCbのウンパッパから始まり、映像的に言えば踊り手の足首がクローズアップで見えるような舞曲です。
第7曲、Obのひょうきんな音色で、ロバの旅路みたいな始まりです。ロバもだいぶ頭数が多そうですが(^o^)/ この曲も Perc. が出ずっぱりです。
第8曲、爆発的なエネルギーを持った音楽、Timp. の活躍もあり、オーケストラも聴衆も一体となって大盛り上がりです。曲の終わりにブラヴォー!が出ました。そういえば、コロナ禍以来しばらくぶりにブラヴォーを聞いた気がします。良かった〜!



終演後、購入したバボラークさんのCDにサインしてもらおうと列に並んでいると、しばらくぶりに某庄内の笛吹きさんご夫妻にもお会いしてお元気そう。バボラークさんに「素晴らしかった」と伝えると、にっこり笑って「アリガトゴザイマス!」 この親しみやすさも人気の秘密なのかも。




購入したCDは、デュカス、カントルーブ、フランセ、サン=サーンス等の「フレンチ・リサイタル」と、室内楽版のモーツァルト「ホルン五重奏曲、ホルン協奏曲第1・第4番」です。梅雨の合間に、これから聴くのが楽しみです。

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山響第310回定期演奏会でベートーヴェン、ロゼッティ、ドヴォルザークを聴く(1)

2023年06月19日 06時00分42秒 | -オーケストラ
6月の第3日曜日、例年であればサクランボの収穫シーズン真っ盛りなのですが、今年は例年になく早い収穫で農作業も一段落、安心して山響こと山形交響楽団(*1)の第310回定期演奏会に出かけました。お昼を早目に食べ、時間に余裕を持って出かけた結果、駐車場は無事に確保でき、会場の山形テルサホールに入場します。恒例のプレトークは西濱事務局長と指揮者の二人でやり取りするのがパターンなのですが、今回は指揮者のラデク・バボラークさんがドイツ語で話すということで、ドイツ語はさっぱりの西濱事務局長のために特別通訳をゲストに迎えたとのこと。誰だろうと思っていたら、なんと、常任指揮者の阪哲朗さんでした(^o^)/



パンフレット内の阪さんの文章の中にも触れられていましたが、実は阪さんがスイスのビール歌劇場で働いていた頃、チューリヒの国際音楽コンクールでスイス・ロマンド管弦楽団と共にビール歌劇場管弦楽団も伴奏を受け持っていたのだそうです。今から30年前の1993年に、まだ10代のバボラークさんがホルンでコンクールに参加し、1位なしの2位になったのだそうな。楽員は2位じゃなく1位だろうと審査委員長に食い下がった一幕があったのだそうです。阪さんとバボラークさんはそのとき初めて言葉を交わした御縁でしたが、バボラークさんはベルリン・フィル等の首席奏者を経て指揮をするようになり、30年後の今は互いに山響の指揮者として仕事をしている不思議さに驚く、とのことでした。うーむ、それは本当にご縁としか言いようがないですね〜。

さて、本日のプログラムは、

  1. ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」作品84 序曲
  2. ロゼッティ:ホルン協奏曲 変ホ長調 C.49/K.III:36 ラデク・バボラーク(Hrn)
  3. ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」作品. 72c 序曲
  4. ドヴォルザーク:スラヴ舞曲集 第1集 作品46
      ラデク・バボラーク指揮、山形交響楽団

というものです。素人音楽愛好家としての楽しみポイントは、まずロゼッティのホルン協奏曲という音楽に初めて接することと、ベートーヴェンの序曲をどんなふうに鳴らすのか指揮者としての方向性への興味、そして何と言ってもチェコではニューイヤーコンサートの曲目となるというドヴォルザークのスラブ舞曲集第1集を生で聴けること、でしょうか。

第1曲、ベートーヴェンの劇音楽「エグモント」序曲です。楽器編成とステージ上の配置は、正面左から第1ヴァイオリン(8)、第2ヴァイオリン(7)、ヴィオラ(5)、チェロ(5)、右端にコントラバス(3)という 8-7-5-5-3 の弦楽5部に、正面奥にフルート(2)、オーボエ(2)、その後方にクラリネット(2)、ファゴット(2)、正面最奥部にトランペット(2)、右奥にホルン(4)、左奥にはバロック・ティンパニというものです。コンサートマスターは高橋和貴さん。
「エグモント」序曲の冒頭、わざとずらしたようなズザーっという始まり方に、ヨーロッパのオーケストラの響きの流儀だと感じます。そして、中〜低音域をしっかり響かせて、力強い堂々たる音楽の歩み、立派な響きです。ああ、いいなあ。盛り上がって曲を終えた後、指揮者は木管セクションを立たせ、次いで全員を立たせて聴衆の拍手を受け、退きました。

次は、期待の第2曲め、ロゼッティのホルン協奏曲です。楽器編成はぐっと小さくなって、6-6-4-3-2 の弦楽5部にHrn(2), Ob(2)というもの。真ん中の指揮台を撤去し、ここに独奏ホルンと指揮のバボラークさんが立ちます。初めて聴くロゼッティの変ホ長調のホルン協奏曲、第1楽章:アレグロ・モデラート。小さめな編成のオーケストラが優雅な主題で始まると、ここがけっこう長くて、なかなか独奏ホルンが始まりません。まもなく独奏ホルンが同じ主題を奏して協奏曲らしい展開となりますが、印象的にはモーツァルトと同じ時代というのが頷ける雰囲気です。ただし、ぐっと技巧的なパッセージも多く、苦もなく流れるように演奏され、柔らかい音色が弦楽ともしっとりとマッチするのを体感すると、名手の名手たる所以を実感します。この印象は、第2楽章:ロマンツェ、アダージョ・ノン・タントに入っても変わらず、弱く優しく吹奏される音楽の、独奏ホルンの音が静かに響く時間が実に貴重な経験です。そして第3楽章:ロンド、アレグレット・ノン・トロッポと指示された、速く軽やかな音楽です。独奏ホルンは、非常に速いパッセージも難なく通過し、軽快さも感じさせます。チェロのピツィカートのムチのような音も面白いものです。初めて聴く曲ですから断片的な印象にとどまりますが、モーツァルトとほぼ同時代の音楽、モーツァルトのホルン協奏曲に影響を与えたと言われているらしい優雅な音楽に満足した日でした。

3曲めはベートーヴェンの歌劇「フィデリオ」序曲です。楽器編成は 8-7-5-5-3 の弦楽5部に Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(4), Tp(2), Tb(2), Baroque Timp. というものです。ベートーヴェンらしい、劇的な開始です。管楽器群の互いに溶け合ったようなハーモニーがステキで、バロック・ティンパニの音と共に次第に緊張感が高まります。爆発するようなエネルギーと共に展開される音楽は、聴きなれた序曲ですが、また新鮮な印象を受けました。

ここで15分の休憩。物販も再開されたようで、せっかくですので新TシャツとバボラークさんのCD2枚を購入して来ました。

(〜今日は畑仕事でくたびれましたので、この続きのドヴォルザークはまた明日〜)

(*1): 山形交響楽団公式ホームページ

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山響第309回定期演奏会でモーツァルト、ライネッケ、ベートーヴェンを聴く

2023年05月15日 06時00分11秒 | -オーケストラ
日曜日、午前中はまずまずのお天気でしたので、寺の役員会の資料を準備してから桃の摘果作業を実施、午後の山響定期演奏会に備えて早目に切り上げ、昼食を済ませました。ところが、そこで痛恨のミス! いつもだと昼食後は鼻詰まりの治療にカルボシステイン錠だけを服用するのですが、たまたま1錠だけ残っていたフェキソフェナジン錠も一緒に飲んでしまったのです。朝と晩に1錠ずつ服用することになっていますので、朝と昼では通常の血中濃度よりもかなり高くなったためでしょうか、運転中にも強烈な眠気に襲われました。ああそうだ、はじめはアレルギー性鼻炎の治療にジルテック錠を用いていたのですが、通勤時の運転が眠気で危険を感じてアレグラへ、後にフェキソフェナジンに変更してもらったのでした。なんとか山形テルサにたどり着き、座席に座ってあとは眠っても大丈夫な体制で開演を待ちました。



プレトークは西濱事務局長と阪哲朗さん。定期会員と協賛企業の増加が報告され、山響の経営危機の頃に定期演奏会を1回2公演から1回1公演に減らしたことがあり、それをもとに戻す最初の回にワルター・アウアーさんが出演(*1)してチケットが完売したのだそうな。それは記憶にあります。もう一つ、阪哲朗+山響のベートーヴェン交響曲シリーズDVDは、今回の第3番の収録であとは第9番を残すのみとなりましたが、やっぱり選集と全集では意味合いが違いますので、来年の夏頃に県民ホールで第9番をやりたいとのことでした。眠気にぼーっとしていますが、それは楽しみです。

さて、第1曲はモーツァルト「アンダンテ」ハ長調、K.315 です。楽器編成はぐっとこじんまりしていて、指揮台の左脇にソリスト(フルート)が立ち、それを取り囲むように、左から第1ヴァイオリン(6)、チェロ(3)、ヴィオラ(4)、第2ヴァイオリン(5)、コントラバス(2)はチェロの左後方に位置します。正面後方にはオーボエ(2)、ホルン(2)という配置です。山響の優しく穏やかな弦楽合奏に管がそっと合いの手を入れる中でフルートの旋律が奏でられます。フルート協奏曲の緩徐楽章として書かれたらしいのですが、まるでオペラのプリマドンナのアリアのようで、これはもうフルート奏者の見せ場です。最後のカデンツァの見事さ!

2曲めはライネッケのフルート協奏曲です。ライネッケという人はロマン派の作曲家で、ブルッフやグリーグの先生でもあるという程度の認識で、作品のCDは持っていませんし、実演はもちろん、TVやFM等の放送でもたぶん接したことはないと思います。その意味では、予習のために「Reinecke flute concerto」で検索してなんどか聴いた YouTube 動画が初めての体験でしょう。
楽器編成は、独奏フルートに加え、Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2)-Hrn(4)-Tp(2)、Timp,Triangle に 8-7-5-5-3 の対向配置の弦楽5部というものです。先のモーツァルトと比べるとコントラバスが3本になった影響か、オーケストラのズシンと来る響きが印象的です。第1楽章:アレグロ・モデラート。第2楽章:レント・エ・メスト。第3楽章:フィナーレ、モデラート。ティンパニがバロックティンパニでないことに気づき、よくよく解説を見たら、この作品は作曲者の最晩年にあたる1908年、84歳のときの作品なのだそうで、意外なほどロマン派しているなあと驚きました。ステキないい曲です。CDがほしいなあと思うほどに、素人音楽愛好家にとっては思いがけず未知の分野が拓けたような感覚があります(^o^)/

ブラヴォー!の掛け声が飛び、聴衆の拍手に応えてアンコールはドビュッシーの「シランクス」でした。無伴奏フルートの神秘的な響きに魅了されました。



しかし、いつも感じますが、このアンコールの曲名を知らせてくれる手書きの文字、とても読みやすくおしゃれな書体で、いいなあと感じます。こういうところも、山響の関係者の皆さんの努力の現れなのかも。

後半はベートーヴェンの交響曲第3番変ホ長調、泣く子も黙る名曲中の名曲「エロイカ」です。楽器編成は、Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2)-Hrn(3)-Tp(2) に Timp. そして 8-7-5-5-3 の弦楽5部です。作曲当時の楽器の状況に合わせて、Hrn と Tp はもちろんナチュラルタイプで Timp もバロック・ティンパニです。こういうふうに、古楽器だけでなく古楽奏法も取り入れて作曲当時に近づけた演奏をするのが山響の特色あるスタイルです。そしてその効果は、冒頭のティンパニの強打でも明らかです。快適なテンポで、柔らかさのある若々しいベートーヴェン。一時代前の、重々しく遅めのテンポで英雄の巨大さを表そうとしたものとは一線を画する、歌心ゆたかな現代のベートーヴェンと言うべきでしょう。ナチュラルブラスの響きで聴く「エロイカ」は、突出しない good balance で、木管や弦楽の魅力も引き立たせていました。指揮の阪哲朗さん、コンサートマスターの犬伏亜里さん、山響の皆さん、素晴らしい演奏をありがとうございました。



ここからは余談ですが、速めのテンポで躍動する第4楽章で、例の演歌みたいな旋律が歌い始めるところ、レガートっぽく演奏されるといかにも演歌みたいで個人的に違和感がある箇所なのですが、あそこも力強く区切るように演奏され、演歌っぽくなくて良かった(^o^)/
間違えて飲んでしまった抗アレルギー薬の眠気効果にも負けずに頑張った第309回定期、今回もほんとに良い演奏会でした。良かった〜(^o^)/

写真は、休憩時に購入したアウアーさんのCD。これから農作業の合間に楽しみに聴きましょう。



そうそう、来年夏の第九で完結するという阪哲朗+山響のベートーヴェン交響曲全集DVD、ぜひ欲しいです。今から楽しみです。

(*1): 山形交響楽団第252回定期演奏会で西村朗、モーツァルト、ベートーヴェンを聴く(1), (2)〜「電網郊外散歩道」2016年5月



おまけ。山形テルサの入り口付近です。若葉の季節が目に鮮やかで、ひそかにヒッチコック監督しています(^o^)/

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こんどの週末は山響第309回定期演奏会

2023年05月12日 06時00分10秒 | -オーケストラ
若葉の季節となったこんどの週末は、山響こと山形交響楽団の第309回定期演奏会(*1)が開かれます。今回のプログラムは、

  1. モーツァルト:アンダンテ ハ長調 K.315
  2. ライネッケ:フルート協奏曲 ニ長調 作品283  ワルター・アウアー(Fl)
  3. ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調「英雄」作品55
      阪 哲朗 指揮、山形交響楽団

というもので、ウィーンフィルの首席奏者ワルター・アウアーさんのフルートを聴くことができるというところが注目です。また、阪哲朗さんと山響の「エロイカ」を聴くのも楽しみ。これは野菜苗の植え付けがまだ完了していないなどといってはいられません。万難を排して、今日中にサトイモ苗の植え付けを終わらせて、週末の山響定期、クラシック音楽三昧に向かわねば。

(*1): 第309回定期演奏会・山形交響楽団〜山響公式WEBサイトより

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畑仕事が終わった後にはお気に入りの音楽を聴こう

2023年04月23日 06時00分02秒 | -オーケストラ
昨日は、早朝から(*1)サクランボの満開期とリンゴの開花前の防除を行い、シャワーを浴びて一休みしていたら、お昼まで寝入ってしまいました。遅い昼食の後、のんびりとお気に入りの音楽を聴きました。寝起きで少しぼーっとしているときは、何を聴こうか、曲目がパッと決まりません。そういえば、先日の山響の定期演奏会で聴いたチャイコフスキーが良かったなあ。チャイコフスキーの4番の交響曲を聴いてみよう。いつもはジョージ・セルがロンドン響を指揮したデッカ盤の録音等を選ぶことが多い(*2)のですが、今回はすでにパブリック・ドメインになっているオーマンディ指揮フィラデルフィア管による1963年の録音を聴きました。

Tchaikovsky: Symphony No. 4, Ormandy & PhiladelphiaO (1963) チャイコフスキー 交響曲第4番 オーマンディ


うん、いいなあ。激遅情念系の演奏はどちらかといえば苦手ですが、こういう演奏は好物です(^o^)/
もう一つ、ブラームスのハンガリー舞曲集をハンス・イッセルシュテット指揮北ドイツ放送交響楽団による1962年の録音で。

Brahms: Hungarian Dances (Orchestral ver. Complete), Schmidt-Isserstedt (1962) ブラームス ハンガリー舞曲集


できればこういう録音をお供に脚立に上り、桃の摘花作業を楽しみたいところですが、枝に引っかかりやすいイヤホンを使わないポータブルなMP3等のUSB再生機器というと、なぜか某国製品くらいしか見当たらず、手持ちの SCHUSONS 製品は電源SWが不安定になってしまってます。それなら、SONY の CD/SD/USB ラジカセを畑で乾電池で運用するというのはどうなのだろう?

(*1): 果樹園の防除を早朝に行う理由と訪花昆虫のこと〜「電網郊外散歩道」2021年4月
(*2): パブリック・ドメインになった音楽の中でも〜チャイコフスキー「交響曲第4番」を聴く〜「電網郊外散歩道」2016年9月

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山響第308回定期演奏会で尾高惇忠、ショスタコーヴィチ、チャイコフスキーを聴く

2023年04月17日 06時00分34秒 | -オーケストラ
創立50周年の記念年を過ぎて新たに百周年を目指す、山響こと山形交響楽団の新シーズンの幕開けとなる第308回定期演奏会を聴きました。今回のプログラムは、

  1. 尾高惇忠 「音の旅」(オーケストラ版、抜粋)
  2. ショスタコーヴィチ チェロ協奏曲第1番 変ホ長調 Op.107 矢口里菜子(Vc)
  3. チャイコフスキー 交響曲第4番 ヘ短調 Op.36
      広上 淳一 指揮、山形交響楽団

というものです。発表されたときから楽しみにしていましたので余裕を持って出かけたはずでしたが、なんと! 駐車場がどこも満車です! 山形テルサの駐車場も、やまぎん県民ホールの駐車場も、ワシントンホテルの駐車場も、駅ビルの駐車場も、どこもみな満車! 仕方がないので、最後の手段でちょいと料金が高いけれども確実に空いている可能性の高い霞城セントラルの屋内駐車場にしたら、なんとかセーフでした。事情を聞いてみると、どうやらやまぎん県民ホールで開かれているミュージカル「ジキルとハイド」の影響らしい。そっちか〜!



さて、山形テルサホールに入り、プレコンサートトークを待ちます。今回は西濱事務局長と広上淳一さんの掛け合い漫才になるかと思ったら、むしろ「広上淳一、大いに吠える! オーケストラは街の顔、コミュニティの中核だ!」の巻でした。広上さんによれば、オーケストラはその街の人が育てていくもので、その街やその国の品格を表す。むしろ、都市の顔、コミュニティの中核と言ってよい。中には政治や経済界の影響力のある人でも、オーケストラはベルリン・フィルやウィーンフィルがあればよいとさえ言う人がいるが大きな間違いで、むしろ成金的傲慢さに通じるものと言うべき。日本国内にプロのオーケストラは38団体あるが、山響は今や世界的レベルになっている。リップ・サービスでも何でもなく、山形の人たちはそのことを誇ってよい。オーケストラは1つでも潰してはいけないのだ、とのことでした。全く同感です。

ステージ上はいつもの編成よりもかなり拡大されたもので、指揮台を中心にして左から第1ヴァイオリン(10)、第2ヴァイオリン(8)、チェロ(5)、ヴィオラ(6)、コントラバス(3)、要するに 10-8-6-5-4 の弦楽五部となっています。コンサートマスターは、高橋和貴さん。正面奥にはフルート(2)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)、この木管セクションの左側にハープとチェレスタが配置され、木管群の奥にはホルン(4)とトランペット(2)、さらにその後方、ステージ最奥部にはティンパニを中央に、右手にトロンボーン(3)とチューバ、左手にパーカッションがずらりと並びます。内訳は、シンバル、バスドラム、スネアドラム、サスペンド・シンバル、シロフォン、グロッケンシュピール、です。この編成で演奏されるのが尾高惇忠「音の旅」抜粋です。もともとは14曲からなるピアノ連弾用の作品なのだそうですが、オーケストラ版では新たに1曲を加えて15曲としたもので、その中から5曲を選んで抜粋したもの、だそうです。第1曲「小さなコラール」、第2曲「森の動物たち」、第4曲「優雅なワルツ」、第6曲「エレジー」、第16曲「フィナーレ〜青い鳥の住む国へ〜」というもので、もちろん初めて耳にしましたが、昨年秋に広上淳一さん指揮で初演された、なんだか可愛らしい面もある佳曲と感じました。

ステージ上は一部の配置が変更され、第1ヴァイオリンがやや左に移動してソリストのスペースを空けて、ここに独奏チェロが来ます。楽器編成は、10-8-6-5-4 の弦楽5部に、Fl(2:うち1はPicc持ち替え)、Ob(2)、Cl(2)、Fg(2:うち1はCont.Fg持ち替え)、Hrn(1)、Timp.、Cel. というもので、かなり異色のものです。深い緑色のドレス姿で登場したチェロ独奏の矢口里菜子さんは、小川和久さんと共に山響のチェロ首席奏者で、今回は矢口さんが抜けたためにチェロ(5)という形になっているようです。ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番は、実演では2006年9月の第175回定期演奏会で、工藤すみれさんの独奏で一度だけ聴いています(*1)。このときもたいへん興味深く聴きましたが、さて今回の演奏は;
第1楽章、アレグレット。特徴的な忙しないようなリズムで始まり、オーケストラもこれに応じます。矢口さんの集中がスゴイ。聴き手にもピリピリと伝わります。ホルンも独奏的に働き、緊迫感を高めます。
第2楽章、モデラート。弦楽合奏が重々しく奏される中に、弔いの歌のようなホルンの音が響きます。チェロが瞑想的な旋律を奏で、クラリネットが深い音を聴かせます。オーケストラも悲歌を歌い、チェロとチェレスタの静かなかけあいの緊張感! ティンパニの遠い轟きの中で静かに終わりますが、休みを入れずにそのまま次の楽章へと移っていきます。この第3楽章が独奏チェロの長大なカデンツァで、多彩な技巧を駆使しつつ表現されるのは、多くの視線の中にあって一人奮闘する高揚感なのか、苦闘する孤独感なのか、それとももう少し別のものなのか。ここもアタッカで次の楽章へ。第4楽章、アレグロ・コン・モト。冒頭の主題をしつこく繰り返しながら聞かせるショスタコーヴィチ節は、ある意味、何かに追われながら逃げているようなスリリングな展開でした。いや〜、オーケストラも独奏チェロも、良かった〜!
聴衆の拍手に応えて、矢口さんのアンコールは「鳥の歌」でした。カザルスが国連で演奏したときと同じく、鳥たちがピース、ピースと歌っていると伝えたかったのでしょうか。

休憩の後、3曲めはチャイコフスキーの交響曲第4番です。この曲は、チャイコフスキーにとっては夫人との離婚問題で自殺未遂まで引き起こすほどの失意の時期を経て、フォン・メック夫人の経済的・精神的な応援によりようやく回復期に入る頃の作品です。基本的には暗いトーンが流れているのですが、その中でも印象的な工夫が織り込まれ、個人的にはチャイコフスキー作品の中でお気に入りの音楽となっています。
楽器編成は、10-8-6-6-4 の弦楽5部、チェロが6になったのはショスタコーヴィチでソロを聴かせた矢口さんが定位置に戻ったから。演奏家もなかなか大変です。木管が Picc(1)-Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2) となっており、ピッコロはFl(2)の持ち替えではなくて小松崎さんが担当。金管は Hrn(5)-Tp(2)-Tb(3)-Tuba とこちらも増強。最奥部正面にティンパニ、その左側にバスドラム、シンバル、トライアングルのパーカッションが位置しています。第1楽章、今回の演奏で気づいたことは、ティンパニがほとんど常にバックでリズムを刻んでいること。そういえば、プログラムでも常磐紘生さんが★(首席奏者)になっています。そういえば、今回のプログラムでは3曲ともティンパニが大活躍していることに今更ながら気づいた次第。第2楽章、弦のピツィカートの中でオーボエが主題を奏し、これがチェロに移ってやがて弦楽合奏になっていきますが、このときの木管の、あるいはホルンやトランペット等のバックがほんとにすてきです。
第3楽章、終始、弦楽セクションが弓を置いてピツィカートで奏されますが、広上さん、踊るように指揮をします。こういうところ、チャイコフスキーはかなりアバンギャルドだったのかもしれません(^o^)/
もう一つ、コントラバスの piz. はやっぱり迫力が違います。そして Ob の一声でガラリと変わり、弦楽セクションがお休みで管楽セクションの出番となるあたりの切り替えも、チャイコフスキーはかなり割り切ってる気がする(^o^)/
第4楽章、ここは何と言ってもシンバルの大爆発! 決して明るい曲ではないけれど、カッコいい音楽です。いつもの山響よりも拡大されたパワフルな響きで、こうした伸びやかな演奏もいいものです。広上淳一さんの面目躍如といったところでしょうか。良かった〜!



しかし、昨年と比べて今年の定期会員数が100人も増え、某ミュージカルの山形公演とぶつかっても定期演奏会がほぼ満席になるというのは、山響の評価と人気がいよいよ高まってきているということだな。これはたいへん喜ばしいことです。次回の定期演奏会も楽しみです。

(*1): 山形交響楽団第175回定期演奏会を聴く〜「電網郊外散歩道」2006年9月

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「山響サンクスコンサート2023〜日新製薬プレゼンツ」を聴く

2023年03月24日 07時10分12秒 | -オーケストラ
山形県の天童市に本社と工場を持つ日新製薬株式会社は、ジェネリック医薬品を中心に製造開発する企業です。近年の好調を背景に、企業メセナとして毎春3月に山響のコンサートを開き、招待客や一般市民等にオーケストラに親しむ機会を提供しています。私はこれまで2016年、17年、18年、22年、23年と聴いていますが、定期演奏会とは異なり親しみやすい演奏会で、毎回楽しみに聴いています。今回は、

  • 前半〜モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」K.492より
  • 後半〜オーケストラ名曲集

という構成でした。

開演前に山響の西濱秀樹事務局長が登場し、山響の簡単な紹介と日新製薬の会長さんを紹介します。スポンサーの日新製薬の会長さんの話によれば、昨今の同業他社の不始末で医薬品の供給に影響が出ており、会社として全力を挙げて対応しているのだそうです。そのため工場も三交替勤務にせざるをえない状況で、工場の拡張でなんとか二交代に戻したいとのことでした。このあたり、団塊世代とその下の世代の退職、少子化の影響で人手不足が深刻化しており、たいへんだなあと感じます。
もう一つ、西濱さんの話であらためて驚いたことがありました。山響ができてからずっと取り組んでいるスクールコンサートでは、子どもたちに本物の生の音楽を届けて来ているわけですが、演奏を聴いた子どもたちの述べ人数が300万人に達するとのことでした。山形県の人口がおよそ100万人ですので、おそらく山形県の子どもたちは生のオーケストラの演奏を何度も聴いていることになります。これは実はスゴイことなのではなかろうか。

今回、当たった席はだいぶ前の方の右手でしたので、ちょうどパーカッションあたりのステージを見上げる形になりました。そのため楽器配置が判別しにくい面がありましたが、前半のモーツァルトは編成を絞り、たぶん左から第1ヴァイオリン(6? or 8?)、チェロ(3)、ヴィオラ(3)、第2ヴァイオリン(6)の対向配置、コントラバス(2)はチェロの左後方に配置です。正面奥にフルート(2)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)、右手奥にホルン(2)、一番奥にトランペット(2)という形でしょうか。入場時のパッと見では、ホルン、トランペットともにナチュラルタイプのようで、作曲当時の楽器を使用することで響きの効果の再現をねらっているようです。

  1. 歌劇「フィガロの結婚」序曲
  2. 第1幕 フィガロとスザンナの二重唱「5、10、20」 深瀬廉(Bar)、佐藤亜美(Sp)
  3. 第1幕 フィガロとスザンナの小二重唱「たとえばもし、奥方様が」 深瀬廉(Bar)、佐藤亜美(Sp)
  4. 第1幕 フィガロのカヴァティーナ「もし踊りをなさりたければ」 深瀬廉(Bar)
  5. 第3幕 伯爵とスザンナの小二重唱「ひどいやつだ!なぜ今まで長いこと」 深瀬廉(Bar)、佐藤亜美(Sp)
  6. 第3幕 レチタティーヴォと伯爵のアリア「訴訟に勝ったと!」 深瀬廉(Bar)
  7. 第3幕 フィナーレ「さあ、行進曲だ…行きましょう」 オーケストラで
  8. 第4幕 フィナーレより「すべては静かで穏やかだ」〜「平和を、仲直りを、僕の甘い宝よ」「苦悩のこの日を」  深瀬廉(Bar)、佐藤亜美(Sp)、阿部花音(Sp)、安孫子留架(Ten)、松倉望(Bs)、土田拓志(Bs)

バリトンの深瀬廉さんの経歴等は、

山形市の出身。東京芸術大学卒業、同大学院修士課程修了、ベルリン芸術大学大学院オペラ科並びに歌曲科を修了。第60回学生音楽コンクール第1位、学部卒業時に松田トシ賞など各賞を受賞、第28回市川新人演奏家コンクール最優秀賞、第26回日本ドイツ歌曲コンクール第2位、第29回ラインスベルク国際声楽コンクール入賞、平成29年度文化庁新進芸術家海外研修制度研修生、2016・2018年度ロームミュージックファンデーション奨学生。甲子園や在独日本大使館で国歌独唱を務める。国内外のオペラではモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」のレポレッロ役、ラヴェル「スペインの時」のラミーロ役などに出演、演奏会ではフォーレ「レクイエム」やベートーヴェンの「第九」などでソリストを務める。ベルリン交響楽団、ブランデンブルク国立管弦楽団フランクフルト、山形交響楽団などと共演。声楽を大島幾雄、藤野祐一、福島明也、吉原輝、Carola Hoen の各氏に師事。現在は山形大学講師。

とのことです。

今回は途中で衣装を変えてフィガロと伯爵と両方を歌いました。ホールは多目的ホールですので決して音響的に歌いやすい環境ではないと思いますが、ステージのできるだけ前方に立つことでなんとか響きを掴みながら歌えたでしょうか。しかし、オーケストラをバックにホール全体に響く歌声というのは、あらためてスゴイものです。よく通る天与の声に磨きをかけた歌声は、フィガロのいきいきとした活力と共に伯爵の役柄も歌い分けて、バリトンの歌声の魅力を味わうことができました。また、スザンナ役の佐藤亜美さんほか出演の皆さんは、山形大学および同大学院の学生さんとOBの方々だそうで、真っ赤なドレスの佐藤亜美さんは最初は少し恥ずかしそうなところも感じられましたが、徐々に役柄に慣れてきたみたいで、初々しいスザンナという感じでした。

全体に、サンクスコンサートでは初のオペラということでしたが、やっぱりオペラの場合、どんな場面で何を歌っているのか、よくわからない面があります。正直言って、簡単なストーリー紹介か、できれば字幕があると助かるのになあと感じました。

後半は『愛の名曲の花束』と題して、オーケストラ名曲集となりました。もちろん曲によりますが、楽器編成はモーツァルトのときよりもだいぶ拡大されて、8-7-5-5-3 の弦楽5部に Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(4), Tp(2), Tb(3), Tuba, Harp, Timp. にパーカッションというものです。

  1. ヨハン・シュトラウスⅡ世:ワルツ「春の声」
  2. ブラームス編曲:ハンガリー舞曲第5番
    ●指揮者に挑戦コーナー(ハンガリー舞曲第5番)
  3. エルガー:愛の挨拶
  4. モリコーネ:ガブリエルのオーボエ オーボエ独奏:柴田祐太(山響)
  5. ヴォーン・ウィリアムズ:グリーンスリーブスの主題による幻想曲
  6. スメタナ:交響詩「わが祖国」よりモルダウ

ウキウキするような「春の声」で始まり、ハンガリー舞曲第5番でお手本を聴かせた後で、恒例の「識者指揮者に挑戦」コーナー。今回は滋賀県在住という若い男性の薬剤師さんと小学生の女の子でした。おそらくは招待客のお一人であろう男性の薬剤師さんは、子供時代にもオーケストラを聴いたことはなかったそうで、生オーケストラを聴くのは初めてだそうです。うーむ、やっぱり本県の子どもたちは山響の恩恵をしっかり受けているぞ(^o^)/
小学生の女の子は、指揮棒の動きより少し遅れて音が出てくるオーケストラの特性から、しだいにテンポが遅くなるという落とし穴にもはまらずに、自分のテンポで指揮を完遂(^o^)/ いい記念になったことでしょう。


  (開演前のステージ右側の様子)

今回、一緒に行った妻は、モリコーネの「ガブリエルのオーボエ」がたいへん気に入ったそうです。私は、今回「モルダウ」のパーカッションで、バスドラムと共に鳴り響くシンバルの音が、大きさの異なる2種類のシンバルを使い分けていることを発見! そうだったのか! 微妙に異なるあの「ジャーン」は、鳴らし方によるものではなかったのだな! よく知った曲と思っていても、実はまだまだ新しい発見があるのですね。なんか、すごく得した気分(^o^)/

アンコールは、ブラームスのハンガリー舞曲第1番。阪哲朗さんの指揮による山響の、柔らかな、でも芯の通った演奏が、懐かしさを感じさせるブラームスの音楽の魅力をホールいっぱいに広げていました。また聴きたいなと思ってしまうひとときでした。

(*1): Ren Fukase 深瀬 廉〜twitter

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カリンニコフ、クチャル、ウクライナ国立響という語に反応して

2023年03月20日 06時00分35秒 | -オーケストラ
日曜朝のNHKラジオ「音楽の泉」で、カリンニコフの交響曲第1番が取り上げられていました。一時、熱心に聴きましたが、最近はしばらくごぶさたでしたので、懐かしく聴きました。当日はスヴェトラーノフ指揮N響の演奏でしたが、私にとってカリンニコフといえば、何と言ってもテオドレ・クチャル指揮ウクライナ国立交響楽団によるナクソス盤です。第1楽章だけですが、こういう演奏です。

カリンニコフ: 交響曲第1番:第1楽章[ナクソス・クラシック・キュレーション #ゴージャス]


今となっては四半世紀前、「ジャスコ東根店」がまだ東根温泉入口にあった頃、その西向にブックバーンという書店があり、そこでナクソスの千円盤CDが売られていました。これが私のナクソス・レーベルとの出会いで、カタログの人気ナンバーワンに「カリンニコフ/交響曲第1番&第2番」というタイトルが挙げられており、おや?と思ったものでした。それがきっかけで同CDを購入、美しい旋律に魅了され、テオドレ・クチャル指揮ウクライナ国立交響楽団というクレジットが記憶に残りました。



指揮のクチャルさん、1963年生まれのウクライナ系米国人らしい。クリーヴランド音楽院卒といいますから、クリーヴランド管の演奏なども日常的に耳にしていたのではなかろうか。ウクライナ国立交響楽団の活動は、昨今のロシアの侵略戦争の渦中にあって、今はどうなっているのだろう。引っ張り出したCDでこの音楽を聴きながら、上の子どもが高校に入学する頃、仕事も充実していたあの頃を思い出しつつ、戦火の中のオーケストラの現状を思うこの頃です。

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山響第307回定期演奏会でハイドン、ブルックナーを聴く

2023年03月13日 06時00分14秒 | -オーケストラ
よく晴れた日曜日、午前中にサクランボ果樹園の剪定枝の片付けをしてまだまだ終わらない量にため息をつき、午後から山響こと山形交響楽団の第307回定期演奏会に出かけました。会場の山形テルサ方面の駐車場は確定申告等で混雑するであろうと考え、早目に出かけたのが大正解、なんとか駐車場を確保してプレトークに間に合いました。

西濱事務局長が登場し、今回のソリスト堤剛さんと山響創立名誉指揮者の村川千秋さんとの友情と長い間の協力を紹介し、指揮の飯森範親さんに話を振り向けます。飯森さんは遅咲きの作曲家ブルックナーについてかなり詳しく紹介してくれました。それと、今回の新基軸として楽器配置の変更を行っていることも紹介。

さて、本日のプログラムは、

  1. ハイドン:チェロ協奏曲 第2番 ニ長調 Hob.VIIb:2  Vc: 堤剛
  2. ブルックナー:交響曲 第7番 ホ長調 WAB 107(ハース版)
      飯森範親 指揮、山形交響楽団

というものです。

1曲め、ハイドンのチェロ協奏曲。楽器編成とステージ上の配置は、中央左にソリストと右に指揮台、そして左から第1ヴァイオリン(6)、チェロ(3)、ヴィオラ(4)、第2ヴァイオリン(6)、左奥にコントラバス(2)、中央奥にホルン(2)とオーボエ(2)、というものです。作曲された時代を考え、かなり編成を絞っての演奏となります。三大チェロ協奏曲というと、このハイドンの2番とシューマン、ドヴォルザークのチェロ協奏曲を指すようですが、80歳のソリストにとってはこれまで何度演奏したかわからないくらいでしょう。その名曲の、おなじみの序奏がやわらかに奏でられる中に独奏チェロが入ってくるときの伸びやかな雰囲気が、なんともいえずいいなあ! 若い時代ならば音楽をねじ伏せようとする勢いが喝采をあびるのかもしれませんが、そうではなくて、かけがえのない時の流れを懐かしみ音楽を愛しむような、そんな演奏でした。考えてみれば、60年も前の若い頃に、米国で一緒に音楽を学んだ仲間の一人が故郷にオーケストラをつくり、草創期の苦闘の時代には来演して支えたそのオーケストラが、今50年の記念の年を迎えている。そんな感慨を持ちながら、しみじみチェロの音はいいなあと思ったことでした。

聴衆の拍手の中、創立名誉指揮者・村川千秋さんが花束を持って登場、堤剛さんに贈ります。90歳の指揮者が80歳の独奏者に花束を贈る、50周年記念年の最後にふさわしい光景に、飯森さんも思わず感激の様子でした。そして堤剛さんのアンコールは、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲第1番から、第1曲「前奏曲」。ゆったりと奏されるチェロの響きに、やっぱりバッハはいいなあとため息でした。

休憩の前に、西濱事務局長から連絡が入り、3月25日(土)の16時から、YBC(山形放送)TVで山響のドキュメンタリー番組が放送されるとのこと。また、音楽雑誌「モーストリー・クラシック」の4月号で山響が取り上げられ、本文6ページのほか、表紙も山響が飾っているのだそうな。休憩時の物販で提供とのことでしたので、急ぎかけつけましたが、残念ながらタイミングでアウト! 幸いに終演後に追加で提供とのことで整理券をゲットし、あわせて堤剛さんのCDでフランクとR.シュトラウスのソナタと三善晃の「母と子のための音楽」を収録したものを購入して自席に戻りました。



休憩後の後半は、ブルックナーの交響曲第7番です。この曲は、2013年1月の第226回定期演奏会(*1)で取り上げられ、後に山響のレーベル YSO-Live からCDになっています(*2)から、9年ぶりの再演ということになります。前回の演奏の時と楽器編成や配置で変わった点というと、「新基軸」との言葉にあったとおり、コントラバスの数と配置でしょうか。前回、2013年には 10-8-7-6-5 という弦楽5部でコントラバス(5)は左後方に配置されていましたが、今回は弦楽5部が 10-8-6-6-4 という編成で、指揮者を中心に向かって左から 1st-Vn(10)、Vc(6)、Vla(6)、2nd-Vn(8)、コントラバス Cb(4) は正面最奥部になっています。正面奥に木管が二列、Fl(2)とOb(2)、Cl(2)とFg(2) が並び、その左に Hrn(5)、右に Wagner Tuba(4)、木管の奥には金管が横一線に Tp(3)、Tb(3)、Tuba、その後ろの最奥部に Cb(4) と Timp. という並びです。

演奏が始まると、ヴァイオリンのトレモロに続いてホルンとチェロが「ブルックナー開始」を告げると、迫力ある低音が正面からビンビン響いてきます。ホールの大きさと響きの特徴を知っている飯森さんらしい工夫と感じます。さらに、Tp, Tb, Tuba が横一線に並んで一斉に奏する時、迫力ある高音から低音まで光のスペクトルのように左右に広がります。この効果も、残念ながら我が家のスピーカーからは出せません。実演ならではの音響的な楽しみです。今回、いわゆる「ブル7」の演奏で気づいたのは、ティンパニが大きく連打するところだけでなく、その後もずっと鳴っていることでした。CDで聴いているときには気づきませんでしたが、目で見て演奏を聴いていると、たしかに背後にティンパニの連打が聞こえ、印象的に意識されます。また、第2楽章で Wagner Tuba と Vc, Vla が奏する中に Vn や Cb 等が加わっていくところ、悲痛というか厳粛というか、深い感情が呼び起こされると感じました。第3楽章スケルツォ、第4楽章フィナーレと進み音楽が高揚していくところは、この曲を聴く喜びとなります。曲が終わり、飯森さんの指揮棒がまだ下りきっていないうちに拍手が始まってしまったけれど、パワフルな演奏を聴き終えてじっとしていられなかった人がたぶんいたのでしょう。気がせいて待ちきれなかったということで、まあ、仕方がないのかも(^o^;)>poripori

拍手の中、飯森さんがオーケストラの団員一人ひとりに握手、挨拶をしていきます。常任指揮者、音楽総監督として山響の発展・飛躍を成し遂げ、阪哲朗さんにバトンを引き継ぎ、今後は桂冠指揮者として山響を見守る立場に変わるわけですが、来年は予定がなくても、今後また山響で意欲的なプログラムを聴かせてほしいものです。一人の音楽愛好者として、また山響ファンの一人として、飯森範親さんに心から感謝をしたいと思います。

コロナ禍への対応も少しずつ変わってきており、今回から分散退場のアナウンスもなし。ホールから外に出ると、まだ薄明るい景色に春の訪れを感じました。新シーズンも、山響が楽しみです。



(*1):山響第226回定期演奏会でシューマン、ブルックナーを聴く〜「電網郊外散歩道」2013年1月
(*2):飯森+山響によるブルックナー「交響曲第7番」を聴く〜「電網郊外散歩道」2014年5月

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週末は山響でハイドンとブルックナー〜新年度の定期演奏会チケットも届く

2023年03月09日 06時00分20秒 | -オーケストラ
お天気に恵まれ、自宅裏の果樹園の剪定も少しずつ進んでおります。サクランボが一段落し、桃の若木に悩みながら、気分転換に柿をなんとかしようと奮闘中。昨年秋、柿の収穫中に母が入院し死去したために、収穫も中途で終わってしまい、徒長枝の伐採もできずに終わってしまいましたので、とさかを逆立てたニワトリの頭のような姿になっていました。まずはこの徒長枝を切っておかないと、後で大変な労力を要する事態になってしまいます。



そんな頑張りも、週末の第307回山響定期演奏会という目標があるからできることで、馬の鼻先に人参をぶら下げたようなものでしょう(^o^)/
今回のプログラムは、

  1. ハイドン:チェロ協奏曲 第2番 ニ長調 Hob.VIIb:2  Vc: 堤剛
  2. ブルックナー:交響曲 第7番 ホ長調 WAB 107(ハース版)
      飯森範親 指揮、山形交響楽団

というものです。

チェロの堤剛さんはすでに何回も実演に接しておりますが、私が最初にお名前を知ったのは中村紘子(Pf)さんと海野義雄(Vn)さんと三人で組んだチャイコフスキーのピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出」の録音でした。NHK-FMの放送で耳にして気に入ったもので、LPを探しましたが入手できずに残念に思ったものでした。また、1969年の大阪国際フェスティヴァルでの演奏会、ブラームスのVnとVcのための二重協奏曲とドヴォルザークのチェロ協奏曲、秋山和慶と日本フィルハーモニー交響楽団の録音がCBS-SONYの2枚組シリーズの中にあり(SONW-20065〜66J)、高校生の頃にほしいなあとチェックしていたのを思い出しました。




思わず昔話を思い出すほど、長い間、演奏活動を続けて来られたチェリストです。山響の創立者である村川千秋さんとは米国留学時代の仲間だったとか。飯森さんのブルックナーの再演とともに、堤剛さんのハイドンが楽しみです。




そうそう、山響からは新シーズンの定期演奏会のチケットがまとめて届いておりました。定期会員になると、チケットがだいぶ割引でお安くなるだけでなく、いちいち買いに行かなくても良いという安心感があります。定期演奏会等の予定はすでに手帳に記入済みです。スケジュールの調整で、なんとか皆出席をねらいたいところです。

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山響第306回定期演奏会で細川俊之、ラフマニノフ、ベートーヴェンを聴く

2023年02月13日 06時00分34秒 | -オーケストラ
日差しの温かい日曜の午後、山形市の山形テルサホールで、山響こと山形交響楽団の第306回定期演奏会を聴きました。道路は乾いて走りやすく、予定よりも早めに到着したのですが、あいにく駐車場が確定申告の会場と重なり満車です。仕方がないので近隣の駐車場にまわり、なんとか停めることができましたが、早めに到着したから良かったけれど、出遅れると駐車場を探してうろうろしなければいけないところでした。この時期の定期演奏会にはよくあることで、覚えておかなければ。

ホールに入ると、ほぼ満席に近い状態です。今回は妻と二人で1階席を取りましたので、いつもの2階席からのようには楽器配置がわかりませんが、ナマで聴くのは初めてのラフマニノフが楽しみです。プログラムは次のとおり。

  1. 細川俊夫:セレモニアル・ダンス
  2. ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 作品43 ピアノ:松田 華音
  3. ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調「運命」作品67
      指揮:川瀬 賢太郎、演奏:山形交響楽団

プレコンサートトークに登場した川瀬さん、うらやましいほど若くてスリムでかっこいい。常任指揮者の阪哲朗さんとの交友や、コンサートマスターの平澤海里さんとのジュニア時代の話、神奈川フィルのメンバーだった団員の話など、山響との初共演の話が聴けました。そうそう、前の晩の「せり鍋」が美味しかったそうで、それは良かった(^o^)/

第1曲、細川俊夫「セレモニアル・ダンス」から。向かって左から第1ヴァイオリン(8)、第2ヴァイオリン(6?)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)、その右後方にコントラバス(2)という編成・配置です。いかにも現代曲らしい響きが能の動きのように静かに展開され、いわゆる舞曲というのとはだいぶ遠い音楽でした。

第2曲、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」。こちらはレナード・ペナリオやルービンシュタインの古い録音で聴いたことがあるとはいうものの、ナマで聴くのはもちろん初めてです。楽器配置は、ステージ中央にコンサートグランドピアノ、その奥の指揮者を囲んで 8-7-5-5-3 の弦楽器セクション、正面奥に Fl(2)-Ob(2) さらにその奥に Cl(2)-Fg(2) の木管群、左後方にハープと Hrn(4)、右後方に Tp(2)、その奥に Tb(3)-Tuba、最後列左側はパーカッション、中央に Timp. というものです。おそらく、Fl は Picc. 持ち替え、Ob は Eng.Hrn 持ち替えと思われますが、パーカッションの細部は視認判別できませんでした。
青いドレスの松田華音さんが登場、やや速めのテンポで始まります。うわっ、すごい明確なピアノ、ラフマニノフを苦もなく弾きこなすのですね! 時折入る Fg や Cl、Fl や Eng.Hrn の合いの手が絶妙です。弦が静かにシュワシュワしているときのピアノのひと節が夢見るような風情で、これにハープが加わったりして実によろしいですなあ。そして金管の響きが加わり、ソロ・コンサートマスター髙橋和貴さんのソロとの掛け合いもあり、あ〜、ラフマニノフだ〜。思わず「これだよ、この曲だよ」と言ってしまいそうな周知のメロディが出てくる頃には、変奏もだいぶ進んでいる頃合い、オーケストラの盛り上がりは時にピアノを圧倒するほどです。
聴衆の拍手に応えて松田華音さんがステージに呼び出されますが、山響の団員の皆さんも楽器を置いて手で拍手しているのは、独奏者の見事な演奏に対するリスペクトのあらわれでしょう。

アンコールは、リャードフの「音楽の玉手箱(オルゴール) Op.32」という可愛らしい曲でした。おそらく、留学したモスクワ時代に触れたさまざまなロシア音楽の中から、親しみやすい面を紹介してくれたのでしょう。



15分の休憩の後、3曲めはベートーヴェンの交響曲第5番です。
ステージ上は、8-6-5-5-3 の弦楽5部に、正面奥に Picc-Fl(2)-Ob(2)、その奥に Cl(2)-Fg(2)-Cont.Fg 、左後方に Hrn(3)、右後方に Tp(2)、最奥部は Tb(3) とバロックTimp. という配置になっています。Hrn と Tp はナチュラルタイプを使用し、作曲当時の響きに近づけようという山響スタイルとなっています。
指揮者の川瀬賢太郎さんが登場、第1楽章冒頭の入り方はやや速めで、あまりもったいぶった間をおかないスタイルです。でも、堂々たる立派な「運命」です。私の好きな第2楽章、Vla-Vc-Cb で奏でられる音楽の、悠々とした雄大な歩み。いいですね〜。木管が入り、ヴァイオリンが加わり、堂々たる音楽。この曲では、このあたりが一番お気に入りです。そして第3楽章から第4楽章へなだれ込むところ。テンポはあまり速めず、充分に力をためて堂々と、しかし興奮しすぎて我を忘れることのない、しっかりと自立したハ短調でした。ブラヴォー!

妻と一緒に車の中で、良かったね〜と話をしながら帰りました。妻はやっぱりラフマニノフがステキだったと印象を持ったみたい。川瀬賢太郎さん、松田華音さん、コロナ禍以前ならばファンの集いでもっと身近にお話を聞けたのにと残念ですが、また山響に来てください、そのときはファンの集いも再開できていますように。

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