博多道草から江戸に戻り、佐々木玲圓の養子として尚武館道場を継いだ磐音、さてその続きは。佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』シリーズ第24巻、『朧夜ノ桜』です。
第1章「白梅屋敷の花嫁」。時は小正月過ぎ、所は江戸の外れの麻布広尾村の白梅屋敷、江戸幕府御典医の桂川国端に、鳥取藩重臣のおてんば娘桜子さんが嫁入りします。むろん、磐音とおこんも、花嫁行列の到着を今や遅しと待っていますが、物語が無難に通り過ぎるわけがありません。案の定、浪人組による金の無心と、おこんの伝法な啖呵、そして磐音の登場です。もう、娯楽時代劇の王道ですね。祝いの宴にて、磐音・おこんの祝言にわしも加えろと、桂川家三代の談合です。山形の白鶴太夫こと奈緒の消息もチラリ。
第2章「偽銀遣い」。次々と訪れる道場破り。こんどは橘右馬介という老武芸者でした。背後にある老中の影を感じ、磐音は読売屋に情報を提供します。磐音とおこんの祝儀弁当の段取りやら僞銀でひともうけを企む上方衆の登場と南町奉行所への協力やら、色々伏線をいっぱい仕込んだ章というところでしょうか。
第3章「小さ刀吉包」。おこんが今津屋を出て速水家に養女に入る日、磐音と由藏が付き添い、小吉の棹で屋根船ということになりました。今津屋の人々はもちろん、本所深川の人たちもおおぜい見送ります。いいシーンです。いっぽう、三味線職人の鶴吉がもたらした情報は、たいへん重要なものです。遠州相良での三味線造りの修行中に、隠居所でふと耳にした坂崎磐音の名前。一介の浪人の暗殺のために、西国の武芸者五名が集められ、尚武館道場破りの形で磐音を倒す計画なのだそうです。もちろんその背後には、徳川家の世嗣家基を排除しかいらいの擁立を企む田沼意次父子がおります。まず一人目は、久米仁王蓬来。
第4章「三味芳六代目」。磐音クン、さっそく情報を読売屋に提供します。江戸のジャーナリストの気概は立派です。こんどは磐音は関前藩江戸屋敷に出向き、中居半蔵に金子の借用を申し込みます。鶴吉の店を出す資金にとの算段でした。吉原の四郎兵衛の協力もあり、三味芳六代目の暖簾が上がりそうです。
第5章「尚武館の嫁」。関前での仮祝言(*)では、ややしっとりと描かれた磐音とおこんの婚礼ですが、本章はなんだかがさがさと色々なものを詰め込み過ぎて、周囲の人々の情や善意の印象がいっこうに高まりません。おまけに祝宴のあと、花嫁と寝所に引っ込んでからの来訪者との血腥い闘争シーンなど、いささか興が醒める思いです。祝言だけでの作劇は難しいのかもしれませんが、平岩弓枝さんの『御宿かわせみ』シリーズ第10巻所収の「源三郎祝言」(*2)や、第15巻所収の「祝言」(*3)など、それぞれの作者の工夫が読み取れ、興味深いものです。
(*):佐伯泰英『鯖雲ノ城~居眠り磐音江戸双紙(21)』を読む~電網郊外散歩道
(*2):平岩弓枝『御宿かわせみ10・閻魔まいり』~電網郊外散歩道より
(*3):平岩弓枝『御宿かわせみ15・恋文心中』~電網郊外散歩道
テレビドラマ「陽炎の辻3』ほうは、これから関前への旅が実現するようで、もしかすると関前で仮祝言ではなく、だんなの実家で本祝言にしてしまうのかもしれません。そのためにも、おこんさんには軽挙妄動を慎んでもらわねば(^o^)/
第1章「白梅屋敷の花嫁」。時は小正月過ぎ、所は江戸の外れの麻布広尾村の白梅屋敷、江戸幕府御典医の桂川国端に、鳥取藩重臣のおてんば娘桜子さんが嫁入りします。むろん、磐音とおこんも、花嫁行列の到着を今や遅しと待っていますが、物語が無難に通り過ぎるわけがありません。案の定、浪人組による金の無心と、おこんの伝法な啖呵、そして磐音の登場です。もう、娯楽時代劇の王道ですね。祝いの宴にて、磐音・おこんの祝言にわしも加えろと、桂川家三代の談合です。山形の白鶴太夫こと奈緒の消息もチラリ。
第2章「偽銀遣い」。次々と訪れる道場破り。こんどは橘右馬介という老武芸者でした。背後にある老中の影を感じ、磐音は読売屋に情報を提供します。磐音とおこんの祝儀弁当の段取りやら僞銀でひともうけを企む上方衆の登場と南町奉行所への協力やら、色々伏線をいっぱい仕込んだ章というところでしょうか。
第3章「小さ刀吉包」。おこんが今津屋を出て速水家に養女に入る日、磐音と由藏が付き添い、小吉の棹で屋根船ということになりました。今津屋の人々はもちろん、本所深川の人たちもおおぜい見送ります。いいシーンです。いっぽう、三味線職人の鶴吉がもたらした情報は、たいへん重要なものです。遠州相良での三味線造りの修行中に、隠居所でふと耳にした坂崎磐音の名前。一介の浪人の暗殺のために、西国の武芸者五名が集められ、尚武館道場破りの形で磐音を倒す計画なのだそうです。もちろんその背後には、徳川家の世嗣家基を排除しかいらいの擁立を企む田沼意次父子がおります。まず一人目は、久米仁王蓬来。
第4章「三味芳六代目」。磐音クン、さっそく情報を読売屋に提供します。江戸のジャーナリストの気概は立派です。こんどは磐音は関前藩江戸屋敷に出向き、中居半蔵に金子の借用を申し込みます。鶴吉の店を出す資金にとの算段でした。吉原の四郎兵衛の協力もあり、三味芳六代目の暖簾が上がりそうです。
第5章「尚武館の嫁」。関前での仮祝言(*)では、ややしっとりと描かれた磐音とおこんの婚礼ですが、本章はなんだかがさがさと色々なものを詰め込み過ぎて、周囲の人々の情や善意の印象がいっこうに高まりません。おまけに祝宴のあと、花嫁と寝所に引っ込んでからの来訪者との血腥い闘争シーンなど、いささか興が醒める思いです。祝言だけでの作劇は難しいのかもしれませんが、平岩弓枝さんの『御宿かわせみ』シリーズ第10巻所収の「源三郎祝言」(*2)や、第15巻所収の「祝言」(*3)など、それぞれの作者の工夫が読み取れ、興味深いものです。
(*):佐伯泰英『鯖雲ノ城~居眠り磐音江戸双紙(21)』を読む~電網郊外散歩道
(*2):平岩弓枝『御宿かわせみ10・閻魔まいり』~電網郊外散歩道より
(*3):平岩弓枝『御宿かわせみ15・恋文心中』~電網郊外散歩道
テレビドラマ「陽炎の辻3』ほうは、これから関前への旅が実現するようで、もしかすると関前で仮祝言ではなく、だんなの実家で本祝言にしてしまうのかもしれません。そのためにも、おこんさんには軽挙妄動を慎んでもらわねば(^o^)/