新型コロナウィルスに対応したファイザー社製mRNAワクチンの先行接種が始まった二月、山形交響楽団の第290回定期演奏会が開かれました。緊急事態宣言下の大都市部では、まだまだ演奏会なども開催ができないか、きわめて不自由な状態にあるときに、当地山形ではまがりなりにも定期演奏会が開催できるというのは、実に稀有なケースかと思います。例によって、入場前の検温、チケット半券裏に記名と電話番号、自分でもぎり、プログラムも自分で取っていく方式で、新型コロナウィルス感染防止には相当に気を使っていることが感じられます。
今回の定期演奏会のプログラムは、
- G.F.ヘンデル オラトリオ「メサイア」HWV 56 - 序曲
- W.A.モーツァルト 交響曲第29番 イ長調 K.201
- W.A.モーツァルト 交響曲第41番 ハ長調「ジュピター」K.551
鈴木秀美 指揮、山形交響楽団
というものです。当初はヘンデルのオラトリオ「メサイア」全曲演奏の予定でしたが、感染防止のためには合唱がネックになるとのことで曲目を変更、コロナが収まってから十全の状態で取り上げたいとのことでした。たしかに、パンデミックを乗り越えた頃に感謝を込めて「メサイア」全曲演奏というのもありかもしれません。
そんなわけで、第1曲は「メサイア」序曲でした。楽器編成と配置は、正面左から第1ヴァイオリン(8)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)、第2ヴァイオリン(6)、左奥にコントラバス(3),チェロに混じってファゴット(1)、正面奥にオーボエ(2)というものです。全部で5分程度の短い曲ですが、その中に強く訴える力、ドラマがあります。
第2曲めは、モーツァルトの第29番。後方オーボエの左にホルン(2) が加わります。この曲の第1印象は、かつてのカラヤン盤のトロトロのレガートな演奏でしたので、むしろ活力ある古楽奏法が適していると感じています。そんなわけで、鈴木秀美さんと山響の演奏に期待してこの日を迎えました。柔軟なフレージングと響きの透明感、あまり速すぎないテンポで優美で明快を基調とする中に、時おり明暗や硬軟など鋭い対比を聴かせる、実に魅力的な音楽になっていました。
ここで20分の休憩が入ります。従来は15分の休憩でしたが、手洗い等の混雑を避ける意味もあって、休憩時間を長めに取っているようです。これも新型コロナウィルス対策の一環でしょう。
後半は、モーツァルトの交響曲第41番ハ長調K.551、いわゆる「ジュピター」です。当初の予想では、古楽スタイルを全面に出して、速いテンポで鋭い対比を強調するような演奏かと思っていましたが、鈴木秀美さんの「ジュピター」はひと味もフタ味も違いました。テンポはあまり速くなく、むしろ上品さの中にじっくりと力強さを感じさせる演奏で、ジュピター交響曲の大きさを納得させるものでした。良かった〜!
聴衆の大きな拍手に応えて、アンコールを。これが、ハイドンの交響曲第98番の第2楽章なのですが、この曲が実にこの「ジュピター」交響曲を意識したと思うしかないような音楽である理由を、鈴木秀美さんは「晩年のハイドンが、若くして亡くなった才能豊かなモーツァルトの作品に対するオマージュ」としてとらえ、ハイドンが「ジュピター」交響曲を知っていたと考えているそうです。プログラムの解説を読み、実際に演奏を聴いてみて、なるほど! でした。
帰宅後、自治会の隣組長会議で一緒になった某寺の住職(*1,2)とこの演奏会の話題になり、彼も土曜の演奏会を聴きに行ったそうで、「山響良かった〜!ジュピターに感動した!」とのことでした。かくしてコロナ禍の中でも山響は確実にファンを増やしているようです(^o^)/
(*1):
某寺の若住職とクラシック音楽談義〜「電網郊外散歩道」2009年8月
(*2):
近隣の寺の若住職と今年もクラシック音楽談義〜「電網郊外散歩道」2011年8月