電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ハイドンの交響曲第100番「軍隊」を聴く

2007年03月31日 10時41分54秒 | -オーケストラ
季節が良くなると、軽やかな音楽を聴きたくなります。特に、ハイドンの交響曲には軽やかさが必要だと感じます。あまりに重厚長大な演奏だと、なんとなくハイドンにはそぐわない感じがしてしまいます。はやいテンポですっきりと軽やかに。そういうハイドンは、きっとすばらしいだろうと思います。もしかすると、当世流行の古楽奏法がよく似合うのかもしれません。

さて、休日の朝にゆったりと聴いているのは、そういう流行とは違いまして、プラハ室内管弦楽団によるハイドンの交響曲で、第100番「軍隊」と第101番「時計」に第94番「驚愕」のアンダンテを配した、全集分売ものCD (DENON MyClassicGallery, GES-9208) です。

「軍隊」というニックネームのある第100番は、第3楽章のみが1793年にウィーンで書き始められ、第1楽章と第4楽章は翌年の1794年にロンドンで書かれたのだそうです。で、魅力的な第2楽章は、7年前にナポリ公のために作曲された別の協奏曲からの転用だそうですが、とてもそんなふうには見え(聞こえ)ません。モーツァルトはすでに亡く、エステルハージ侯に仕える身分から自由になった頃の、ハイドン62歳の作品です。

第1楽章、アダージョ~アレグロ。弦楽がそっと優しく入る出だしから、次第に軽やかな音楽に変わって行きます。メンバーが100人を超えるような大規模な現代オーケストラとは違った、透明な響きです。
第2楽章、アレグレット。木管楽器、特にオーボエやファゴットの響きが実に素晴らしく、なんともチャーミング。好きですねぇ、こういうのんびりした雰囲気。そして強い曲想が対比的に奏でられ、繰り返されているうちに、軍楽隊のラッパの音。嵐の突撃のようなティンパニやバスドラムの連打ですが、これは現代の破壊的な軍隊の音楽ではないようです。
第3楽章、メヌエット:モデラート。快活な踊りの音楽のようですが、時折チャラララ~と響くオーボエの音色が可愛らしい。ハイドンは、ほんとにオーボエを上手に使いますね。
第4楽章、フィナーレ:プレスト。軽やかに、しかしティンパニやバスドラムが迫力を失わずに一気呵成に演奏される、ハイドン後期の充実した音楽です。カーステレオのスピーカよりも部屋のオーディオで聴く方が、ずっと低音の迫力を感じますので、こういう音楽は、やはり演奏会で聴けばすばらしいでしょうね。

■プラハ室内管弦楽団、リーダー:ブジェティスラフ・ノヴォトニー
I=8'07" II=5'46" III=5'07" IV=5'33" total=24'33"

そういえば、本日3月31日は、ハイドンの誕生日なのですね。1732年3月31日生まれだそうです。

フランツ・ヨゼフ・ハイドン~Wikipediaによる生涯と作品の概説
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藤沢周平と方言

2007年03月30日 06時47分49秒 | -藤沢周平
山形新聞夕刊では、藤沢周平没後十年の特集で、木曜日にときどきゆかりの人たちの記事を掲載しています。最近は、井上史雄さんの「方言の味わい(上・下)」でした。

前回は映画「たそがれ清兵衛」の中で使われている庄内弁のリアリティについての内容で、とくに方言の敬語の使用法について、ていねいに表現されていること。

父母を「おどはん」「おがはん」とよぶほかにも、「良うがんすか」「お聞きでがんしょが」「ごぐろうはんでがんした」「よぐござらした」など、上品な敬語であると指摘していました。標準語の敬語では、最近は特にビジネス界を中心に「目上の人にご苦労様は失礼。お疲れ様と言うべきだ。」などと堅苦しいのですが、身についた方言では年長者にも「ごぐろうさまでした」と普通に言います。このあたりも、地方の文化のゆかしさなのかも、と思います。

そして今回は、庄内弁オンパレードの『春秋山伏記』。これも実にいい作品ですが、藤沢周平は、この作品中で、かなり古い庄内弁を使っているそうです。例えば本作中の「焚火みでよだども」は、現在の鶴岡市では「焚火みでだども」となるのだそうな。地域により微妙に異なる言い回しで、出身地が特定できてしまうこともある方言。作中で意図的に使った古い方言は、作者が故郷を思い出しながら楽しんで書いたことを物語るのかもしれません。

写真は、庄内地方ではバッケと呼ぶらしい、東北の春の使者・フキノトウです。
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R.シュトラウスと「フニクリ・フニクラ」

2007年03月29日 07時06分27秒 | -オーケストラ
以前、N響アワーで、R.シュトラウスの交響的幻想曲「イタリア」という曲を聴きました(*)。この曲の4曲目(第四楽章?)「ナポリの人の生活」に、「フニクリ・フニクラ」の旋律が出てくるところなど、面白く聞きました。指揮のW.サヴァリッシュさんが、まだお元気な頃で、たいへん懐かしく思ったものです。

さて、飯森範親指揮の山形交響楽団のライブCD第二弾には、この曲が収録されています。写真右、「アルルの女」のところで取り上げたCDのトップが、実はこれです。シュトラウスの作品16という番号を持つこの曲は、実際の演奏会でしばしば聞ける曲ではなかろうと思います。それが、全曲ライブ録音で聴けるのが嬉しいものです。

第1楽章「カンパーニャにて」、第2楽章「ローマの廃墟にて」、第3楽章「ソレントの海岸にて」、第4楽章「ナポリ人の生活」。演奏は、かなりの力演です。このCDは、山形ローカル販売ではなくて、全国どこからでもネット上でも購入できるようです。いや、便利な世の中です。だからこそ、ローカリティが貴重になるのかも。

■飯森範親指揮、山形交響楽団
I=9'22" II=11'51" III=11'46" IV=8'48" total=41'47"

シュトラウスがイタリアを旅行したとき、ポンペイの遺跡を見て、さらにケーブルカーでヴェスヴィオス火山を見学したのだそうです。このとき、登山電車のCMソングだった「フニクリ・フニクラ」をナポリ民謡と勘違いして、この音楽に取り入れてしまったのだそうです。おかげで、著作権がらみの訴訟に発展して、罰金を払うとか払わないとか、ややこしいことになったそうな。

そのへんのところも含めて、「フニクリ・フニクラ」の歌について、楽しい記事がありました。梅丘歌曲会館「詩と真実」更新情報(*2)というサイトで、「フニクリ・フニクラ」の記事にリンクしている歌詞のページがそれです。もとの歌詞の意味と、一世を風靡した「鬼のパンツ」の替え歌まで載っています。実に愉快です。

(*):今日のN響アワーは~電網郊外散歩道の記事
(*2): デンツァ「フニクリ フニクラ」詞:トゥルコ~梅丘歌曲会館「詩と真実」更新情報
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ネコの視線

2007年03月28日 06時48分45秒 | アホ猫やんちゃ猫
ひなたぼっこをしていたネコを抱き上げると、ふわふわの毛があたたかく、気持ちいいものです。今年七歳になり、相当に「ご高齢」のはずですが、おてての肉球がぷくぷくで、まだまだ元気です。

ところで、今日気づいたこと。ネコの視線は、クールですね。エサをねだって擦り寄ってくるネコのしぐさにはかわいらしさがありますが、視線に愛嬌や媚びはありません。飼い主に対しても、冷静に観察しています。つい先日も、子ネズミをつかまえてきたばかり。かわいい顔してこの子、ちょいとやるもんだねと、家内と話をいたしました。
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4月~5月の演奏会の予定など

2007年03月27日 07時14分17秒 | クラシック音楽
自分の心覚えのために、2007年4月~5月の演奏会をまとめました。

■4月14日(土)、19時開演、山形県民会館、山形交響楽団第180回定期演奏会
黒岩英臣指揮、竹松舞(Hrp)
ラヴェル 組曲「クープランの墓」「マ・メール・ロア」
ピエルネ ハープ小協奏曲 作品39
ドビュッシー 子どものためのバレエ音楽「おもちゃ箱」
(指定) A:4,500円、(自由) B:4,000円、学生:2,500円、ペア券:7,000円、当日は500円増し

■4月18日(水)、18時45分開演、文翔館議場ホール、山形弦楽四重奏団第23回定期演奏会
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第8番「ラズモフスキー第2番」
佐藤敏直 弦楽四重奏のための「モルト・アダージョ」
ハイドン 弦楽四重奏曲ニ短調、作品103「遺作」
18時会場、18時15分に Ensemble Pino によるプレ・コンサート
全席自由、1,000円

■4月28日(土)、19時開演、山形県民会館、現代日本オーケストラ名曲の夕べ2007
オール・ジャパン・シンフォニー・オーケストラ、高木和弘(コンサートマスター)
西村朗「サイバーバード協奏曲」
千住明「Prayer」~交響曲第1番より第3楽章
湯浅譲二「芭蕉による情景」
松村禎三「交響曲第1番」
A:3,000円(指定), B:2,000円, Student:1,000円, Pair:3,500円

■5月11日(金)、19時開演、山形テルサホール、石井理恵ピアノリサイタル
J.S.バッハ(ブゾーニ編) コラール前奏曲「目覚めよと呼ぶ声あり」BWV645
チャイコフスキー(プレトニョフ編) 演奏会用組曲「くるみ割り人形」
西村朗 「三つの幻影」より I. 水
ショパン ノクターン 嬰ハ短調 遺作
ショパン ピアノソナタ第3番 ロ短調 作品58
一般:2,000円、学生(高校生以下):1,500円

■5月12日(土)、13日(日)、19時開演、山形テルサ、山形交響楽団第181回定期演奏会
飯森範親指揮、コルネリア・ヘルマン(Pf)、柴田旺山(篠笛)
千住明 映像音楽による組曲「白神山地~命育てる森」~横笛とオーケストラのための~ 平成19年度委嘱編曲作品
グリーグ ピアノ協奏曲イ短調、作品16
ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編曲)
(指定) A:4,500円、(自由) B:4,000円、学生:2,500円、ペア券:7,000円、当日は500円増し

■5月20日(日)、18時30分開演、文翔館議場ホール、アンサンブル・ピノ第1回定期演奏会
カンビーニ 協奏的弦楽三重奏曲第1番 ヘ長調
タネーエフ 弦楽三重奏曲 ニ長調 作品21
ドヴォルザーク 弦楽三重奏曲 ハ長調 作品74
全席自由、1,000円、小学生以下 500円

今年も元気で、たくさん演奏会に行きたいものです。写真は、文翔館から議場ホールへ続く、リノリウム床の廊下です。
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乾杯の音頭は短く

2007年03月26日 06時47分05秒 | Weblog
送別会、離散会等のシーズンもそろそろ一段落でしょうか。年齢的に、時に乾杯の音頭などを頼まれることもあります。先輩から言われていたことで、守るようにしている金言が一つ。
挨拶は短く、幸せは長く。

まずは、全員の準備が整ったことを確かめてから。あとは簡潔明瞭にすませるのが一番いい。

ご指名ですので、乾杯の音頭を取らせていただきます。ご唱和をお願いします。
転退職される皆様の御健康とご活躍をお祈りし、ご参会の皆様の(または◯◯社、◯◯支店等の)益々の発展を祈って、(間)、乾杯!


このくらい短い方が、結局は皆に喜ばれるようです。



能登半島の地震はびっくりしました。被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。
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山響第179回定期演奏会を聴く

2007年03月25日 07時44分39秒 | -オーケストラ
年度末の土曜の夜、山形交響楽団の第179回定期演奏会を聴きました。指揮はギリシアの国立アテネ管弦楽団の常任首席指揮者であるバイロン・フィデチスさん。背の高い、ちょっとスポーツ選手を思わせる風貌の、しかし物腰はたいそう穏やかな人です。

恒例の指揮者のプレトークは、ドイツ語で行われました。小熊さん(?)というすてきな女性の通訳がつき、フィデチスさん、もっぱら通訳の女性のほうを向いて話します。曲目選定の理由、特に最初に取り上げたギリシアの作曲家アクシオーチスGeorgios Axiotis(*)について、など。自分のイメージの中の日本は、「日出づる国」なので、太陽に関係する曲目を選びました。また、アクシオーチスがロシアで生まれていることから、ロシアのチャイコフスキーの交響曲を選びました、とのこと。

■アクシオーチスについて

ギリシア人の両親のもとにロシアで生まれたアクシオーチスは、アテネに戻り、音楽の才能を見出され、イタリアのナポリの音楽院で学ぶ。基本的な音楽性は、レオンカヴァルロやマスカーニ、プッチーニなど、ヴェリズモの影響を受けているとのことです。その後、ギリシアに戻り、学んだものがギリシアの民族音楽と結び付き、作曲を続けますが、不幸なことに狂犬に噛まれ、49歳で亡くなりました。その後、彼の作品を出版しようという動きがあり、この音楽「Daemmerung(黄昏)」が、日本の画家の美しい絵画に通じるものを感じます。

■山形についての印象は?

私はギリシア北部の出身で、山が多く雪が降る風景がよく似ており、とても気に入りました。リハーサルで時間はなかったのですが、公園と城跡を見に行きました。人々が礼儀正しくきちんとしていることにたいへん好印象を持ちましたし、オーケストラの人たちも、たくさん親切を示してくれました。


1曲目、アクシオーチス作曲「Daemmerung(黄昏)」、静かな弦楽と分散アルペジオのようなハープで始まる中に、澄んだトライアングルの音が静かに響きます。そっとホルンが入って来て、木管が加わり、静かなゆっくりした美しい音楽が展開されます。やや哀切な響きの中に感情が盛り上がり、やがて静かに潮が引くように終わります。いい音楽を聴かせてもらいました。指揮者のフィデチスさん、胸に手を当てて聴衆に感謝です。聴衆からも、あたたかい拍手がおくられました。

2曲め、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。ライトの加減か、やや水色っぽく見えるグレーのドレスの滝千春さんが登場。今年二十歳になる小柄なお嬢さんで、指揮者のフィデチスさんと並ぶとずいぶん違いますが、ステージマナーも堂々としていて、もう立派なソリストです。ゆったりめのテンポで、小柄な滝さんのヴァイオリンから、豊かな音が放出されます。オーケストラの演奏の間、体をゆらして音楽に入り込み、独奏部は見事な技巧を聴かせます。歌うところは充分に歌い、素晴らしいヴァイオリン!山響も、チェロとヴィオラが頑張り、充実した音になっていました。特に第3楽章、オーケストラの総奏に続き、ヴァイオリンが天馬空を翔けるような活躍!

休憩の後、チャイコフスキーの交響曲第4番です。第1楽章、始まりはゆっくりしたテンポで、流れるようにていねいに指揮します。第2楽章、弦に木管が森の小鳥のように歌うところなど、木管セクションがお見事、良かった~。第3楽章、弦がピツィカートで通すと言う、なんとも度胸のある(?)音楽、ステージ上で強弱が左右に動く様子が面白い。ObとFgが入り、Flとピッコロが入るところあたりから活気づき、繰り返しの後金管もちょっとだけ出番があって、ピツィカートで終わり。第4楽章、気持ちよく寝ていた人もびっくりして目覚めるような大太鼓とシンバルの衝撃で始まります。大太鼓の女性奏者の方、気分よさそう。一転して快速テンポも衝撃を強め、トライアングルが効果的。金管の低音の咆哮と突然の全休止。このあたりは作曲者のうまさでしょう。Hrnが場面を巧みに転換し、ティンパニが盛り上げます。再びシンバルの炸裂と大太鼓の衝撃を経てオーケストラの総奏の中に盛り上がり、大拍手。いや~、チャイコフスキー節ですねぇ。堪能いたしました。

山響でシベリウスのヴァイオリン協奏曲を聴いたのは、今回で二度目です。前回のソロは、千住真理子さんでした。まだ若く、ぐんぐん成長すると思われる滝千春さん、ぜひまた実演を聴きたいものです。今度は、プロコフィエフの第一番あたりがいいなぁ。終演後のファンの集いで、フィデチスさんも、さっそくアテネ管のソリストとしてアプローチするつもりだ、と話していました。

会場は山形県民会館、ホールのキャパシティはあるのですが、響きは山形テルサホールのほうが好きです。でも、いい演奏会でした。

(*):パンフレットには、Gergios Axiotis と表記されていましたが、Google で検索すると Georgios Axiotis と出てきます。もしかすると、パンフレットの誤記でしょうか。
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連続する酒席で弱った胃腸の回復法と、祖父母の記憶

2007年03月24日 09時43分33秒 | 健康
三月は総会や送別会等の季節。酒席が増えます。「とりあえずビール」と言ってから始まる宴会も、度重なると胃腸にヘビーにきいてきます。典型的なビール飲み過ぎ症候群は、まず下痢でしょう。冷たいビールをがぶがぶ飲んだら、おなかをこわすのは目に見えています。

このところ、区自治会の総会や、職場の送別会・離散会など酒席が続き、胃腸が弱る季節です。飲みすぎ・食べすぎを自制するのが基本ですが、そうはいうものの、浮世の義理もありますし、酒席を断ってばかりはいられないのも現実です。体調を崩す前に、自家製ヨーグルトでおなかの調子を回復させておく必要があります。二三度、食事どきにヨーグルトを食べると、下痢症状がぴたりと治まるから不思議です。

自家製ヨーグルトというのは、ずっと自家培養している、いわゆる「カスピ海ヨーグルト」のこと。冬越しテクニックも年季が入っています。さすがに毎日同じ味では飽きてきますので、デザートとして中に入れるものを一工夫。

写真は、冬越しして少々いたんできた「ふじ」リンゴのコンポートと自家製ヨーグルトです。老母は断固として「リンゴの煮物」と主張しますが、まぁ、ちょいと気取ってコンポートと言おうがリンゴの煮物で済まそうが、本質的な中身は同じ。全盲の祖母が好きで、よく「紅玉」で作っておりました。祖母は、実家の母親が明治後期に東京の料理学校を出たのだそうで、蒸しパンだとか焼きリンゴだとかコンポートだとか、ハイカラなものを知っていて、よく手探りで作っていたものでした。わが家では定番の味です。

思い出話ついでに、わが家では一時期、ホームスパンが目的で、米作のほかに祖父が羊を飼ったことがあるとのこと。ごわごわの天然ウールはあたたかく、暖房も不備な昭和初~中期の農村では、天然ウールをつむいだセーターやベストが貴重な衣類であったろうと思います。何度も編みなおされ縮んでしまったベストを、幼児期の私も愛用したらしいのです。病気もせずにぬくぬくと成長できたのは、そんな知恵と労働のおかげでしょう。30歳で失明した妻を離縁しても差し支えないと申し入れてきた実家の義父に対し、子供がかわいそうだから自分が面倒を見ると言い切り、工夫して生活させた祖父を、孫は実に偉いと尊敬します。
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最近、手書きがマイブーム。

2007年03月23日 05時13分25秒 | 手帳文具書斎
最近、手書きに凝っております。絵画とか書道とかいうものではなく、手帳やノートに書く、普通の文字の普通のメモです。ただし、筆記具が従来と違います。先日も記事にしました、1本100円のPilotのG-knockというボールペンでゲルインクの書き味を知り、今度は1本150円の、同じくゲルインク(*)を用いた三菱のJetStreamというボールペンに挑戦。1本100円だとか150円だとか、「なんともみみっちい挑戦だね」と鼻で笑われてしまいそうですが、これがまた微妙に違うのですね。並べて書くと、たしかに違う。

■Pilot G-knock 書き心地はスムーズで、線は同じ0.7mmでもやや太めに出ます。書いた直後は筆ペンや墨汁のようなテカリが出ますが、乾けばテカリは消えます。色は紙の上に浮き上がって見えます。赤や青はあざやかで派手な色。全体として水性に近い印象です。

■三菱 JetStream 書き心地は大変スムーズです。黒も赤も、油性に近い色合い。特に赤は落ち着いたオジン・レッドで、黒と同様に、紙に沈んで定着するように見えます。線はにじまず、太字(1.0mm)は太く、細字(0.7mm)はきちんと細く出ます。全体として油性っぽい印象。細かな字を書く手帳用には、こちらのほうが良いかもしれません。

50円の差か、書き味では三菱のJetStreamがスラスラ度は上に感じますが、しかしどちらが好みとは言い切れず。むしろ、ボールペンには珍しいブルーブラックというG-knockのインクの色に魅力を感じます。当地の店舗での普及度は圧倒的にPilotのG-knockが多いようですが、システム手帳用にはJetStreamも魅力的です。

【追記】
(*):JetStream、実は油性インクだそうです。BUN2 2007/4月号(Vol.11)の「ヒット商品こぼれ話」によれば、油性インクの重い書き味に閉口していた開発者が、数十種類の溶剤と潤滑剤等の組合せを試して確立したものだとか。たしかに、自分で感じた特性の方があたっていました。(2007/04/08)
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ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」を聴く

2007年03月22日 06時43分23秒 | -室内楽
ときどき雪が降ったりはしますが、日一日と春の気配が濃くなってきています。陽気に誘われて外に出ると、風はまだまだ冷たいけれど、ガラス窓越しの陽光はぽかぽかとあたたかく、まどろみを誘います。こんな日は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを聴きましょう。もちろん、第5番「春」です。

第1楽章、アレグロ。親しみやすい、優雅でのどかなメロディが始まると、思わず気分も明るく晴れやかになるようです。途中、若いベートーヴェンらしいピアノの活躍するところもあり、「春」という愛称がついたのも、もっともな気がします。
第2楽章、アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ。ヴァイオリンがとぎれとぎれに歌う中を、ピアノが素晴らしい旋律を奏します。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタにおけるピアノの役割の大きさに気づかされます。夢見るような気分に満ちた楽章です。
第3楽章、スケルツォ、アレグロ・マ・ノン・トロッポ。速い動きで上昇し下降する音階風のパッセージが印象的な、とても短い楽章です。
第4楽章、ロンド、アレグロ・マ・ノン・トロッポ。明るいロンド主題と、対比される第2・第3主題の陰影が、単に可愛らしいだけでないこのソナタの、内容的なふくらみになっているようです。

LPの時代に親しんだのは、ジノ・フランチェスカッティ(Vn)とロベール・カザドシュ(Pf)の演奏による、1961年に録音されたLP(CBS-SONY,23AC-522)でした。この華やかで清潔な演奏が、長くこの曲の個人的なスタンダードとなりました。
CDの時代になり、ある郊外型書店が閉店セールを行った際に、初めてナクソスのCDを多数購入しました。この時に入手したのが、今CDで聴いている、西崎崇子(Vn)とイェネ・ヤンドー(Pf)によるナクソス盤です。1989年にブダペストのイタリア協会でデジタル録音されています。演奏は、テンポはややゆっくりと、スケールを感じさせるものです。
いずれも、併録されているのは、同じく第9番「クロイツェル・ソナタ」です。

■ジノ・フランチェスカッティ(Vn)、ロベール・カザドシュ(Pf)盤
I=7'00 II=4'50 III+IV=7'28" total=19'18"
■西崎崇子(Vn)、イェネ・ヤンドー(Pf)盤
I=9'35" II=5'43" III=1'08" IV=6'33" total=22'59"
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「野ばら」~世界名歌集(1)を聴く

2007年03月21日 07時34分54秒 | -オペラ・声楽
人間の声というのは素晴らしいもので、結婚披露宴などで老壮年二人のぴったり合ったお謡などは、まるで低音のベテラン男声デュオを聞くようです。自分でカラオケで歌うのも嫌いではありませんが、演奏会で迫力の合唱を聴くのも楽しみ。

子どもの頃、一時、祖父母の部屋で寝るのを楽しみにしていた時がありました。全盲の祖母が早朝にスイッチを入れるラジオで、「わたしの農村日記」という、教員をやめた夫婦が酪農に取り組んだ体験をもとにした連続番組が放送されていました。これも面白かったのですが、たしかこの前だか後だかに、ときどき合唱の曲が流れることがありました。フォスターなどの世界名歌集といったものだったでしょうか。このCDを聴くとき、何の脈絡もなく、そんな記憶がよみがえり、心が揺さぶられるようです。これはたぶん、人間の声、合唱曲が、記憶の深いところに沈んでいるからなのでしょう。

1 故郷の空
2 アニー・ローリー
3 アフトンの流れ
4 やさしき愛の歌
5 ダニー・ボーイ
6 ハーレックの人々
7 蛍の光
8 春の日の花と輝く
9 埴生の宿
10 夜もすがら
11 アヴェ・マリア
12 ブラームスの子守歌
13 別れ(ムシデン)
14 ローレライ
15 野ばら
16 君を愛す
17 月の光に
18 アヴィニョンの橋の上で
19 愛の喜び

題名を見てもすぐにはわからない曲がたくさんありますが、一度聴くと、あ~、この曲か、これなら知ってるぞ~、という曲ばかり。車の運転をしながら、思わずハミングしてしまいます。歌詞が全部わからなくても、いいのです。能書きも蘊蓄もなし。ここ一週間ほど、このCDを通勤のおともにしておりました。

演奏は、ロジェ・ワーグナー指揮のロジェ・ワーグナー合唱団と、ニュー・コンサート・アーツ管弦楽団で、1980年、82年、85年に録音されたものから、有名どころを集めたCD(新・世界の名曲シリーズ、HCD-1185)のようです。時にはこういうの音楽もいいものです。
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『できるブログ・改訂版』を読む

2007年03月20日 06時28分14秒 | -ノンフィクション
何を思ったか、3年目にしてgooブログの解説書を読み始めました。組版ソフトTeX/LaTeX 関係の本は何冊も購入していますが、コンピュータ関係の一般向け解説書なんて、何年ぶりでしょうか。

まずは、既知の内容がほとんどでしたが、構成は以下のとおり。

第1章 ブログをはじめよう
第2章 自分のブログを作ってみよう
第3章 携帯電話で記事をたくさん投稿しよう
第4章 投稿した記事を編集してみよう
第5章 写真付きの記事を投稿しよう
第6章 リンクとトラックバックの付いた記事を投稿しよう
第7章 ブログをもっと効率的に読もう
第8章 ブログのデザインを工夫しよう
第9章 アフィリエイトに挑戦しよう
第10章 有料サービスでブログをもっと活用しよう
第11章 ブログで困ったら

図解が豊富で見やすく、さすがによく工夫されています。リンクとトラックバックの解説は的確ですし、各章のまとめには、たとえば「記事の追加・削除は慎重に」と題して、
個人的な日記などはいくら修正してもかまいませんが、公的な性格を持った文章の場合は特に注意しましょう。(p.90)

と指摘するなど、有益な内容も豊富です。一つの記事中に複数の写真を掲載する方法など、本書で初めて知りました。

デザインを微妙に変えたい場合、スタイルシートの解説などは参考になりそうですが、一番興味があったのは有料サービスの内容。主としてアクセス解析とテキスト・バックアップ、写真のツリー・ビュー表示、などが解説されています。なるほど、という感じでした。

その他、いくつか気がついた点を。

(1) カテゴリーは、後から最大30個まで増やすことができる、とありますが、実際にやってみても、19個までしかメニューには出てこない。もしかしたら、30個というのは有料版だけの話?(p.47)
(2) 携帯電話からの投稿は、祝祭日や休日には便利ですが、タイムスタンプが勤務日に仕事をさぼっている証拠にもなります。サラリーマンには危険な誘惑にもなりかねませんが、そんなことは言わずもがなの常識なのでしょうか。
(3) 他の出典からの引用部分を明示する blockquote タグを使えることを初めて知りました。(p.124) その意味では、ちゃんと解説書を購入した意味はあったかも。
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ハイドン「交響曲第85番"王妃"」を聞く

2007年03月19日 06時40分26秒 | -オーケストラ
ハイドンの交響曲は、古典派の代表的な音楽でしょう。若い頃は、ドラマ性に乏しく、面白みに欠ける音楽と感じ、あまり熱心には聞きませんでした。ところが、亡き恩師に贈られたオラトリオ「四季」のLPや、弦楽四重奏曲「ひばり」のCD等をきっかけに、ある時期からハイドンの音楽の魅力に開眼。さらに、山形交響楽団の定期演奏会で、時折ハイドンの交響曲を取り上げるものですから、実演体験もこれを後押ししました。で、ときどきハイドンの交響曲などに手が伸びます。

第1楽章、アダージョ~ヴィヴァーチェ。ハイドンらしい、明快でフレッシュな音楽。オーケストラの規模からも、ダイナミクスもじゅうぶんな演奏です。
第2楽章、ロマンス~アレグレット。陰影の豊かな緩徐楽章。抽象的でない、人間的な感情もじゅうぶんにこめられています。子鳥が歌うようなフルートのソロが美しく楽しい。
第3楽章、メヌエットとトリオ、アレグレット。いかにもハイドンのメヌエット。舞曲としての優雅さ、楽しさがあります。オーボエやファゴットの明るく屈託のない表情なども、集中した演奏であることを示しています。
第4楽章、ロンド主題が軽やかに展開されます。アンサンブルの力量が問われる部分ですが、真剣な集中力で、ハイドンの軽やかさを生かしています。

演奏は、飯森範親指揮、山形交響楽団。2006年3月、山形テルサ・ホールでの定期演奏会のデジタル録音で、CD/SACDのハイブリッドCDとなっています。レコーディングはオクタヴィアが担当したもののようで、OVCX-00024 という番号。お菓子の「ラスク」等で当地では有名な「シベール」(*)の後援に対する thanks to が付されていますが、こういう地域企業の社会貢献はたいへん好ましいものです。

写真は、左がこのハイドン「王妃」とシューマンの交響曲第4番のCD、右はR.シュトラウスの「イタリア」とビゼーの「アルルの女」組曲のCD。今年から8年がかりで、古楽器奏法によるオリジナルスタイルのモーツァルト交響曲全曲演奏がスタートしますが、これも録音されてCDになるはず。楽しみです。

(*):洋菓子のシベールCYBELE
最近は、県外でもけっこう親しまれているのかな。
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半日かけておひな様をかざる

2007年03月18日 13時47分22秒 | 季節と行事
当地では、桃の節句の季節感はやはり旧暦のほうがしっくり来ます。したがって、お雛様を飾るのも旧暦にあわせて、という家が多いようです。わが家でも、二年ぶりにお雛様を飾りました。

まず、ひな壇を組み立て、緋毛氈を敷きます。次に、内裏雛の場所から順に、人形や持ち物、調度品等をセットしていきます。



ようやく飾り終わりました。



内裏雛と三人官女、五人囃子です。紅白のでかい饅頭を従えた三人官女は、要するに飲食物・おやつ担当、酒樽はずっと下のほうにありますので、お内裏様は二人とも甘党だ、ということがわかります。また、五人囃子は要するに楽師でしょう。芸術と音楽家の独立を宣言したベートーヴェン以前ですが、この人たちは小刀を帯びることが許されているのですね。音楽を愛する者は危害を加える恐れなし、ということなのでしょうか。



美男美女、似合いのカップルと言っておきましょう。誰だい、「色男、金と力はなかりけり」なんて言ったのは。お雛様は、金も権力もありそうじゃないか。



しかし、お雛様、なかなか美人さんではありますが、平安時代、入浴の習慣がなかったとは!ちょいと親しいお付き合いは敬遠したいところです。平安時代の平均寿命が短いのも、なるほどと頷けます。もしも、皮膚科のお医者さんがこの時代にタイムスリップしたら、きっと大繁盛するかも(^o^)/



与太話はともかくとして、かくのごとくほぼ完成いたしました。これから、雛あられなどの菓子類と、人形を見に来る近所の人たちにご馳走するお酒を用意いたします。
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プロコフィエフ「交響曲第7番」を聴く

2007年03月18日 06時03分51秒 | -オーケストラ
春なのにまだ雪が降る週末の朝、コーヒーを飲みながら、小沢征爾指揮ベルリンフィルの演奏で、プロコフィエフの交響曲第7番を聴きました。

第1楽章、モデラート。哀調を帯びた、やや悲しげな開始。だが、曲調は童話的な要素を持ちながら、次第に広々としたものを感じさせるようになっていきます。最後に主題が再現し、静かに終わります。
第2楽章、アレグレット~アレグロ。活気のある、プロコフィエフらしい音楽。ちょっと踊りだしたくなるような音楽です。
第3楽章、アンダンテ・エスプレッシーヴォ。ゆったりした、落ち着いた気分の音楽ですが、ハープや多彩な打楽器の響きも聞こえ、あくまでもモダンでスマートなアンダンテ・エスプレッシーヴォです。
第4楽章、ヴィヴァーチェ、モデラート・マルカート。まるでバレエ音楽のような軽妙さで始まります。哀調を帯びた美しい旋律と、神秘的な響きと、活気あるリズミックな部分とが交替します。小沢盤の終結部は、そっと消え入るように終わってほしい、という作曲者の要望にそったものでしょうか。

ピアノをはじめ、多彩な楽器の音が聞こえますが、それが隠し味のようにさりげなく使われていて、思わず感嘆してしまいます!響きは明快・透明で、リズムは踊りだしたくなるほど。バレエ組曲だと言ったら信じる人もいるでしょう。童話的な神秘性もあり、ほんとに魅力的な音楽です。嬰ハ短調、4楽章からなるこの交響曲は、1952年に誕生した曲とはとても思えません。当時の「現代音楽」の範疇からはかなりはずれているものと思われ、冷戦真っ只中の西側識者の覚えは必ずしもめでたくなかったのだろうなぁと推測されます。でも、半世紀を過ぎて、この曲はしっかりと演奏会のプログラムに残っているのですね。「青春」という愛称は、私の年代にはやや気恥ずかしいものですが、なんとなく頷ける要素を持っているように思います。

小沢征爾指揮ベルリンフィルハーモニー。1989年にデジタル録音された、グラモフォンの紙箱全集盤です。

■小沢征爾指揮ベルリンフィル
I=9'52" II=7'58" III=5'48" IV=9'00" total=32'38"
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