10月最後の日曜日の夜、山形弦楽四重奏団の第61回定期演奏会を聴きました。日が短くなり、16時を過ぎると薄暗くなります。良い席を確保しようと早めに家を出て、軽く食事をしてから文翔館議場ホールに到着しました。入り口には、開場前に熱心なお客さんが列を作って並んでおりました。今回は曲目がモーツァルトの晩年の名曲「クラリネット五重奏曲」を含むプログラムで、山響首席クラリネット奏者の川上一道さんが加わります。さらに、先の山響定期のロビーコンサートで山形弦楽四重奏団として演奏し、定期演奏会の宣伝をしたのも効果的にはたらいて、お客さんを惹きつけたものと思われます。
プレコンサートは、小松崎恭子(Fl)、田中知子(Vla)の2人による二重奏で、モーツァルトの「魔笛」の中から、パパゲーノや夜の女王のアリアなどを取り上げたものです。曲名や編曲者は不明。
続いて川上一道さんが登場、クラリネットのソロで、スイスの作曲家ズーターマイスターの「カプリッチョ」を演奏します。現代の音楽ですが、けっこう楽しい。それにしても、見事な演奏ですね~。
開演前のお話は、ヴィオラの倉田譲さんです。川上さんは、今回はふつうのA管のクラリネットではなくて、バセットクラリネットを使用するとのことです。普通のクラリネットは、最低音がミの音までだそうですが、バセットクラリネットはだいぶ管の長さが長いので、ドの音まで出せるために、モーツァルトが楽譜に書いたとおりに演奏できる、とのことでした。楽器の種類の多様性は、演奏家でも驚くほどあるのだそうですが、結局は作曲家が使ってくれないとすたれてしまうのだそうです。モーツァルトは、晩年にシュタットラーという名演奏家と出会い、クラリネット五重奏曲を書いたのは有名な話だけれど、実はバセットクラリネットのための曲だった、ということなのでしょう。
本日の曲目は、
というものです。
最初の曲は、ハイドンの弦楽四重奏曲、Op.55-1 というのは、第二トスト四重奏曲という曲集の最初の曲らしい。基本的には軽やかな明るい曲想で、いかにもハイドンらしいです。1st-Vnの中島さんが一生懸命に奏いてるのに他の3人は楽しく合わせているという風情で、第1ヴァイオリン主導型という当時のスタイルがしのばれる雰囲気です。これは何度も聴けるように、CDがほしいです。
二曲目は、シューベルトの弦楽四重奏曲第4番。第1楽章:アダージョ。チェロから始まり、ヴィオラが加わり、次に第2ヴァイオリン、最後に第1ヴァイオリンという具合に次々に加わって、四人の楽しいアンサンブルを聴かせる、という始まり方です。第2楽章:アンダンテ・コン・モト、第3楽章:メヌエット、アレグロ、第4楽章:フィナーレ、アレグロ。家庭音楽という範疇に入るのでしょうが、シューベルトらしい、親しみ深い音楽でした。
ここで15分の休憩があり、最後の曲目は、お待ちかねのモーツァルト「クラリネット五重奏曲」です。この曲は、LPやCDでは充分に親しんだつもりの音楽ですが、実は実演では初めて聴くのかもしれない。クラリネットとバセットクラリネットの音色の違いについては、以前、N響アワーでザビーネ・マイヤーがモーツァルトの「クラリネット協奏曲」を演奏した時に、たしかバセットクラリネットを使っていたはずですし、山響定期でも何度かお目見得しています。ですから、全く初体験というわけでもありませんが、これだけ間近で、しかも「クラ五」で聴けるというのはうれしい限りです。
第1楽章:アレグロ。フワッとやさしい弦の響きで始まり、クラリネットが加わって活発になってきます。ソナタ形式で書かれているようで、主題が様々に形を変え、変奏される様子が、良いですね~。チェロの合いの手がぴったりで、気持ちが良いです。
第2楽章:ラルゲット、三部形式。そっと優しく、弱音器を付けたヴァイオリンの音が、なんともチャーミング。ああ、なるほど、あんなふうにして弱音器を付けて、こんなふうに音色が変わるんだ~と興味津々です。それに加えて、明るく陽気な高音から、深く沈み込むような低音まで、表情と音色を変えるクラリネットが実に魅力的です。
第3楽章:二つのトリオ部を持つメヌエット。クラリネットの高音とヴァイオリンとのやりとりに注意が向きがちですが、バセット・クラリネットの低音と、チェロやヴィオラとの応答の親和性も注目です。とくに、トリオ部での迫力あるボウーッという最低音から上昇する高音まで、音色の変化がいかにもバセットクラリネットらしい。
第4楽章:フィナーレ、アレグロ。飛び跳ねるように意識して活気あるリズムとしているらしいヴァイオリンの表現や、ヴィオラの嘆きの表情もすばらしい。アレグロのコーダまで、実に名曲らしい充実感、モーツァルトが考えた通りの音の手応えを感じる時間でした。
アンコールは、武満の編曲によるチャイコフスキー「秋の歌」というクラリネット五重奏の曲です。ストルツマンと東京カルテットのために書かれた曲だそうで、実にいい雰囲気で、ステキな音楽を知ることができました!
○
いつもよりも聴衆の人数がぐっと多いと感じます。今回は、ほとんど空席がないくらいで、たぶん百人を超えていたかもしれません。おそるべし、モーツァルト「クラ5」の人気!
プレコンサートは、小松崎恭子(Fl)、田中知子(Vla)の2人による二重奏で、モーツァルトの「魔笛」の中から、パパゲーノや夜の女王のアリアなどを取り上げたものです。曲名や編曲者は不明。
続いて川上一道さんが登場、クラリネットのソロで、スイスの作曲家ズーターマイスターの「カプリッチョ」を演奏します。現代の音楽ですが、けっこう楽しい。それにしても、見事な演奏ですね~。
開演前のお話は、ヴィオラの倉田譲さんです。川上さんは、今回はふつうのA管のクラリネットではなくて、バセットクラリネットを使用するとのことです。普通のクラリネットは、最低音がミの音までだそうですが、バセットクラリネットはだいぶ管の長さが長いので、ドの音まで出せるために、モーツァルトが楽譜に書いたとおりに演奏できる、とのことでした。楽器の種類の多様性は、演奏家でも驚くほどあるのだそうですが、結局は作曲家が使ってくれないとすたれてしまうのだそうです。モーツァルトは、晩年にシュタットラーという名演奏家と出会い、クラリネット五重奏曲を書いたのは有名な話だけれど、実はバセットクラリネットのための曲だった、ということなのでしょう。
本日の曲目は、
- F.J.ハイドン 弦楽四重奏曲 イ長調 Op.55-1
- F.シューベルト 弦楽四重奏曲第4番 ハ長調 D.46
- W.A.モーツァルト クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581(Cl:川上一道)
というものです。
最初の曲は、ハイドンの弦楽四重奏曲、Op.55-1 というのは、第二トスト四重奏曲という曲集の最初の曲らしい。基本的には軽やかな明るい曲想で、いかにもハイドンらしいです。1st-Vnの中島さんが一生懸命に奏いてるのに他の3人は楽しく合わせているという風情で、第1ヴァイオリン主導型という当時のスタイルがしのばれる雰囲気です。これは何度も聴けるように、CDがほしいです。
二曲目は、シューベルトの弦楽四重奏曲第4番。第1楽章:アダージョ。チェロから始まり、ヴィオラが加わり、次に第2ヴァイオリン、最後に第1ヴァイオリンという具合に次々に加わって、四人の楽しいアンサンブルを聴かせる、という始まり方です。第2楽章:アンダンテ・コン・モト、第3楽章:メヌエット、アレグロ、第4楽章:フィナーレ、アレグロ。家庭音楽という範疇に入るのでしょうが、シューベルトらしい、親しみ深い音楽でした。
ここで15分の休憩があり、最後の曲目は、お待ちかねのモーツァルト「クラリネット五重奏曲」です。この曲は、LPやCDでは充分に親しんだつもりの音楽ですが、実は実演では初めて聴くのかもしれない。クラリネットとバセットクラリネットの音色の違いについては、以前、N響アワーでザビーネ・マイヤーがモーツァルトの「クラリネット協奏曲」を演奏した時に、たしかバセットクラリネットを使っていたはずですし、山響定期でも何度かお目見得しています。ですから、全く初体験というわけでもありませんが、これだけ間近で、しかも「クラ五」で聴けるというのはうれしい限りです。
第1楽章:アレグロ。フワッとやさしい弦の響きで始まり、クラリネットが加わって活発になってきます。ソナタ形式で書かれているようで、主題が様々に形を変え、変奏される様子が、良いですね~。チェロの合いの手がぴったりで、気持ちが良いです。
第2楽章:ラルゲット、三部形式。そっと優しく、弱音器を付けたヴァイオリンの音が、なんともチャーミング。ああ、なるほど、あんなふうにして弱音器を付けて、こんなふうに音色が変わるんだ~と興味津々です。それに加えて、明るく陽気な高音から、深く沈み込むような低音まで、表情と音色を変えるクラリネットが実に魅力的です。
第3楽章:二つのトリオ部を持つメヌエット。クラリネットの高音とヴァイオリンとのやりとりに注意が向きがちですが、バセット・クラリネットの低音と、チェロやヴィオラとの応答の親和性も注目です。とくに、トリオ部での迫力あるボウーッという最低音から上昇する高音まで、音色の変化がいかにもバセットクラリネットらしい。
第4楽章:フィナーレ、アレグロ。飛び跳ねるように意識して活気あるリズムとしているらしいヴァイオリンの表現や、ヴィオラの嘆きの表情もすばらしい。アレグロのコーダまで、実に名曲らしい充実感、モーツァルトが考えた通りの音の手応えを感じる時間でした。
アンコールは、武満の編曲によるチャイコフスキー「秋の歌」というクラリネット五重奏の曲です。ストルツマンと東京カルテットのために書かれた曲だそうで、実にいい雰囲気で、ステキな音楽を知ることができました!
○
いつもよりも聴衆の人数がぐっと多いと感じます。今回は、ほとんど空席がないくらいで、たぶん百人を超えていたかもしれません。おそるべし、モーツァルト「クラ5」の人気!