電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形の人が「サクランボは近所からもらうもの」だと思っている理由

2020年08月27日 06時01分00秒 | 週末農業・定年農業
山形新聞によれば(*1)、今年(2020年)のサクランボの産出高は、新型コロナウィルス禍の渦中にもかかわらず、例年通りの高水準だったようで、生産農家にとってはなによりのことでした。



たしかに、大都市部で巣ごもり生活を強いられる中で、季節を感じる甘酸っぱいサクランボを頬張るのはせめてもの楽しみになったのかもしれず、そうであれば、私たち生産農家も苦労した甲斐があったというものです。

ところで、都会から山形に移り住んだ人が驚くことの一つが、山形では「サクランボはご近所からいただくもの」という通念があること、だそうです。これは、なにも山形が貨幣経済が発達していないために、未だに物々交換が主体となっているというようなことではなくて、「傷みがはやい」ことからくる、やむを得ない事情によるものなのです。

洗ってすぐ口に入れる山形サクランボは、収穫前には薬剤の散布を控えるほか、アメリカンチェリーなどとは異なり、収穫後(ポストハーヴェスト)の殺菌剤散布をしていません。そのために、少しのキズがあればそこから傷みが広がっていきます。鮮度が命のサクランボの選果は、少しのキズも見逃さないため、結果として大量の「傷み果」を生じてしまいます。

ただし、「傷み果」とは言っても、輸送流通販売に要する日数までは日持ちしないというだけであって、収穫当日や翌日程度ならば大丈夫な範囲です。そのため、ほとんどの農家では収穫選果作業に来てもらっている雇い人の人たちに持たせたり、ご近所非農家に分けたりして、なんとか処分しているのが実情(*2)です。

遠く離れた土地で、山形のサクランボ事情を羨ましく思う方々には申し訳ないことながら、(1)収穫後には殺菌剤を使用せず、(2)傷みがひどくなる前に消費し切るためには、この「ご近所からもらうもの」という仕組みが、実は必須なのです。

(*1):20年県産サクランボ、産出高前年上回る、新型コロナ、販売への影響最小限に〜山形新聞オンラインより
(*2):そうでもしないと、大量のサクランボを穴をほって埋める作業が必要になってしまいます。

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2 コメント

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ヒロノミン さん、 (narkejp)
2020-08-30 08:38:36
コメントありがとうございます。桃の大産地・岡山でも、事情はやっぱり同じですか。では、ミカン県ではミカンが、うどん県ではうどんが…って、それはないか(^o^)/
そういえば、収穫した桃の中で一定の割合で生じる「ハネ桃」を、職場にどさっと持ち込むと、非農家の皆さんがたいへん喜んでくれます。当方は、穴掘り作業が不要になり、ありがたい限りです(^o^)/
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Unknown (ヒロノミン)
2020-08-29 21:54:01
 記事を拝見して驚きました。山形のさくらんぼと同様、岡山の桃も「巣ごもり需要」で販売が堅調だったからです。
https://www.sanyonews.jp/article/1034262
 岡山でも白桃は「ご近所・知り合いからもらうもの」です。さくらんぼと同じく贈答用が主力の清水白桃は、どうしても「ハネ桃」の数が多くなり、地元で消費されています。農家の方には申し訳ないことながら、岡山人の「役得」に感謝です。
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