本記事は、「ノラたちとの共存を目指して・場外編その9」の位置づけとなります
ノラたちとの共存を目指して様々な議論を重ねてきた本シリーズも、本編あと2つの記事(その9と10)を残すだけです。今回はその前に今一度、司法の役割と現状について確認したいと思います。殺処分をなくし、最終的にはノラのいない社会を築くには猫捨てを根絶することが不可欠。ゼロとまではいかなくても、人間社会での犯罪発生率相当まで猫捨てを減らせれば殺処分をなくせるでしょう。しかし、実はこれが最も高いハードルなのです。
猫捨てをなくす方策には「啓蒙活動」、「法による厳罰化」、「検挙率アップと罰則強化」がある。これらは合わせて行う必要があり、どれひとつ欠けてもうまくはいきません。啓蒙活動は行政や民間ボラ団体あるいは個人ボラさんの輪が広がってきたし、厳罰化は前回の動物愛護法の改正時に行われた。しかしその効果はまだ確認できるほどになっていない。啓蒙活動や法の強化は既に「反猫捨て意識」のある人々には注目されても、実際に猫を捨てたりする問題の人たちには届いていない、あるいは軽く見られているからだ。何故かと言うと、検挙数が低い上に逮捕されても起訴率が低く、起訴されてもまったく甘い判決しか下されないからです。
<参考資料:(最新事例)これだけの犯罪に対してこの求刑>
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動物虐待の検挙数は近年になって増えてはいる。法の強化やメディアの報道が増えてきたことで警察や市民の意識が変わり、通報や告発が増えてきたことが要因だろう。それでもまだまだ氷山の一角に過ぎないだろうから、今の変化がもっと大きな広がりになることが期待されます。ただしその対象はネグレクト含む虐待事件であり、一般市民による動物の遺棄に関しては殆ど手つかずなのが現状だ。本シリーズでは、場外編5で日本の社会に現存する「当たり前のように猫を捨てる文化」について述べてきた。猫を捨てるのはごく普通の人たちで、社会の風潮から身を隠し、陰に隠れてひっそり静かに行うのです。しかしその数はとてもじゃないが馬鹿にできないほど膨大だ。この部分に手をつけることができるのは、前述警察と市民の輪しかないだろう。そしてこの部分に手がつかないと、いつまで経ってもボラさんたちの努力空しくノラの数も殺処分も減らないのです。
<参考資料:以前にも紹介した、告発を推奨する「動物弁護団」のHPです>
もう一度繰り返しますが、一般市民の猫捨てを減らすには通報告発の向上と検挙率アップが不可欠です。啓蒙活動だけでは犯罪者(あるいは犯罪予備軍)に無視されて終わり。しかし検挙率がアップしても殆ど起訴されない、起訴されても無罪に近い判決しか下されない、こんな事態が続いたらどうでしょう。検挙そのものが犯罪者(猫捨て者)にとって怖くなくなり、検挙数アップが抑止力にならなくなるのです。検察と裁判所が犯罪を助長していると指摘してきた所以ですが、それにはそれなりの理由があるのです。
虐待の場合は人間社会での児童虐待と同じでまず立件が難しいこと、所有権(児童虐待の場合は親権)の壁があって引き取るなどの執行が容易でないことがあります。(下記参考資料のうち、公益社団法人アニマル・ドネーション のサイト「アニドネ・レポート一覧 - AWGs」参照) 我々市民が情緒的に考えるのと違って実際に人を罰する司法には確固たる根拠(論拠)が必要ですが、動物愛護法の精神が「愛」だけに同法には抽象的な記載が多く、明確な違反が確認されない限り"疑わしきは罰せず"になってしまうのです。猫捨ての場合も同様で、前述動物弁護団が写真など明確な証拠が必要と喚起しているのもそのためです。
<参考資料:Google検索結果・動物愛護法違反の検挙率、起訴率、判例>
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今年は動物愛護法が改正される年。(5年毎の改正) 「動物愛護法の改正2025」でGoogle検索すると初めにAI の要約が出ますが、次の事が書かれています。(2025.2.25現在)
【動物愛護法改正の議論の背景】
・国内での野生動物のペット利用が問題となっている
・近年行政の運用の甘さが散見される
・虐待下の動物を救うための制度の整備
虐待行為を明確化し、犯罪として罰しやすくするための議論は行われているようです。しかし同じく重罪であるはずの動物の遺棄については、業者への規制強化は別として一般市民の猫捨てに関してはまったく議論されてないのが実情。昨年、縁日で購入するみどり亀が大きくなると池や川に放流(遺棄)することが問題となった際、環境省は遺棄しないで冷凍殺処分することを推奨した。日本の動物福祉が100年遅れていると言われる所以です。
<参考資料:本年動物愛護法改正に向けての動き>
殺処分ゼロを達成しその先に進むには番外編7に書いたように地域猫活動だけではダメで、新たにノラを生み出さない数々の施策が必要です。その中でこの猫捨て防止だけは国にまかせるわけにいかず、私たち一般市民が対応する問題なのではないでしょうか。確固たる証拠をもって通報すれば、司法も重罰化に舵を切るはずだと信じています。
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◆「ノラたちとの共存を目指して」目次 ※予告編(期日未定)含む
その1 資料編「現状と動向調査」(追記:餌やり、地域猫問題) 2017.2.27
その2 現場編「ノラを守るのに理由は要らない」(報道されたボラさんたち) 2017.5.31
その3 エサやり問題・続編「裁判事例の検証・他」(司法が肯定したもの、否定したもの) 2017.8.31
その4 一服編「ノラだからこそ・・かわいい!」(ニャー&みう+テンちゃんの日常) 2017.11.30
その5 闘魂編「許さない、虐待に不法投棄に暗闇ビジネス」 2018.4.29
その6 原点回帰編「再確認・人間性とは?」(食肉、動物駆除と保護活動) 2018.8.31
その7 形而上学編「ノラの幸せとは」(シャッポやソトチビの行動に想う) 2020.1.31
その8 地域猫問題・続編「殺処分ゼロに向けて」(目的達成のために必要なこと)2022.11.30
その9 理想追求編「殺処分ゼロの先にあるもの」(対等の精神と真の共存)
その10 最終章「共存の終焉」(ノラのいない社会)
番外編
番外編1「罪と罰」(法の実行と刑罰の妥当性) 2019.3.29
番外編2「動物愛護の精神を問う」(餌やり議論の本質) 2019.10.31
番外編3「エサをやるなは殺せと同じ・第3弾(前編)」(特別加入) 2020.6.30
番外編4「エサをやるなは殺せと同じ・第3弾(後編)」(特別加入) 2020.8.31
番外編5「政治とメディア」(ノラたちの未来を決める人たち) 2021.1.31
番外編6「保護に奔走する人たち」(その2とその6の補足) 2023.7.31
番外編7 「殺処分と暗闇ビジネスからの脱却」2024.7.31
場外編
場外編1 猫の煩悩とはこれ如何に 2021.7.10
場外編2 続・死刑に処すべし? ~死に体・動物愛護法の復活を期して~ 2021.7.21
場外編3 どうしてこんなに軽いのか <続・続・死刑に処すべし> 2021.11.10
場外編4 メディア批評、の・つもりが・・(国民の鏡としてのメディア) 2021.11.24
場外編5 社会の闇 (残存する「当たり前のように猫を捨てる文化」) 2022.6.29
場外編6 ジレンマ(猫捨てを補完するノラ保護活動)2022.7.31
場外編7 ノラたち自身のためのTNR ~命と生活を守るには~ 2022.12.8
場外編8 猫捨て防止啓蒙活動 ~それでもやらなければならない~ 2024.5.19
その1 資料編「現状と動向調査」(追記:餌やり、地域猫問題) 2017.2.27
その2 現場編「ノラを守るのに理由は要らない」(報道されたボラさんたち) 2017.5.31
その3 エサやり問題・続編「裁判事例の検証・他」(司法が肯定したもの、否定したもの) 2017.8.31
その4 一服編「ノラだからこそ・・かわいい!」(ニャー&みう+テンちゃんの日常) 2017.11.30
その5 闘魂編「許さない、虐待に不法投棄に暗闇ビジネス」 2018.4.29
その6 原点回帰編「再確認・人間性とは?」(食肉、動物駆除と保護活動) 2018.8.31
その7 形而上学編「ノラの幸せとは」(シャッポやソトチビの行動に想う) 2020.1.31
その8 地域猫問題・続編「殺処分ゼロに向けて」(目的達成のために必要なこと)2022.11.30
その9 理想追求編「殺処分ゼロの先にあるもの」(対等の精神と真の共存)
その10 最終章「共存の終焉」(ノラのいない社会)
番外編
番外編1「罪と罰」(法の実行と刑罰の妥当性) 2019.3.29
番外編2「動物愛護の精神を問う」(餌やり議論の本質) 2019.10.31
番外編3「エサをやるなは殺せと同じ・第3弾(前編)」(特別加入) 2020.6.30
番外編4「エサをやるなは殺せと同じ・第3弾(後編)」(特別加入) 2020.8.31
番外編5「政治とメディア」(ノラたちの未来を決める人たち) 2021.1.31
番外編6「保護に奔走する人たち」(その2とその6の補足) 2023.7.31
番外編7 「殺処分と暗闇ビジネスからの脱却」2024.7.31
場外編
場外編1 猫の煩悩とはこれ如何に 2021.7.10
場外編2 続・死刑に処すべし? ~死に体・動物愛護法の復活を期して~ 2021.7.21
場外編3 どうしてこんなに軽いのか <続・続・死刑に処すべし> 2021.11.10
場外編4 メディア批評、の・つもりが・・(国民の鏡としてのメディア) 2021.11.24
場外編5 社会の闇 (残存する「当たり前のように猫を捨てる文化」) 2022.6.29
場外編6 ジレンマ(猫捨てを補完するノラ保護活動)2022.7.31
場外編7 ノラたち自身のためのTNR ~命と生活を守るには~ 2022.12.8
場外編8 猫捨て防止啓蒙活動 ~それでもやらなければならない~ 2024.5.19
場外編9 ノラたちを救うために不可欠な警察・検察・裁判官の意識改革
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