ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

マリカ姫とはだあれ?(付・ぬえのネット史)(その2)

2008-11-20 10:45:57 | 能楽
もう。。かれこれ10年?? そんなになるんですかね~。。

ぬえがネット。。とはその頃はまだそうはちょっと言えないような状況でしたけれども、通信の世界に入ったのは、内弟子を卒業したばかりの頃でした。はじめてパソコン。。懐かしいマックのLC630。。でしたっけ? 廉価で人気のあった機種を買ったのは、囃子方の友だちの薦めもあったからで、それまではあまりパソコンには興味がなかったのでしたが。

パソコンを買ってみると、最初は確定申告の計算ぐらいに使えるのかと思っていましたが、これが意外に型附や手附の整理とか、また演能記録などにも使えるし、ワープロとしても機能はそれと比べものにならないし、たちまちハマっていったのでした。

そうなると通信機能にも自然に目が向くわけで。その頃は電話回線に繋ぐのが一般的だったですけれども、ぬえも早速にモジュラー・ケーブルを電話線につないで、これまたその頃はネット環境? では一人勝ち状態だったニフティ・サーブのパソコン通信に接続してみたのでした。

ははあ。。こういうものなのか。会員が自由に意見を述べ合う「フォーラム」というのがメインのサービスで、フォーラムの中にはそれについて話し合うテーマによって大きく「科学」とか「経済」「生活」というようにジャンル分けされていて、さらにその中に「車」やら「ファッション」のように より細かテーマ分類があり、これが狭義の「フォーラム」と呼ばれて、それぞれに名前が付けられていました。そうしてそのフォーラムの中にいよいよ会員が実際に書き込みを行う「会議室」と呼ばれる場所があったのでした。

ぬえは早速 能楽について話されている会議室を探しましたが、それはたしか 文化ジャンルの中にあったと思いますが、「シアターフォーラム」という中にありました。演劇フォーラムの中には数個の会議室があって、それぞれ劇団について話し合う会議室やら、舞踏について語る会議室などがあったのですが、能について話す会議室は、当時は歌舞伎や文楽、落語も含めた古典芸能を専門に話題にする会議室で、「にっぽん座」と名付けられていたと思います。

ここに参加するためには、まず会費を払って会員となり、固有のIDを入手することによって入室ができて、それぞれが求める「フォーラム」に参加する、という、そうだなー、いまの「ミクシイ」に似たシステムに似たシステムでしょうか。ただ「ミクシイ」と決定的に違うのは、「フォーラム」や「会議室」はすべてニフティサーブが開設(閉鎖も)し、運営もすべて「フォーラム・マネージャー」「シスオペ」という管理人によって行われる、というところ。「ミクシイ」と同じように発言にはすべてIDが表示されるので「荒らし」は起こりえず(そんな事したら強制退会させられたりした。もっとも「荒らし」「煽り」という言葉も当時はなかったけれど)、それどころかそれぞれの会議室のテーマから外れる発言は「シスオペ」によって強制的に同じ「フォーラム」の中の「雑談会議室」のような隔離室に移動させられたりするのでした。

たとえば、「能」の会議室で国立能楽堂での催しの話題で盛り上がる→東京在住でない会員や、その公演を見ていない会員も話題に参加してくる→おのずと話題は公演そのものから離れていく→「そういえば」と誰かが発言する→いつのまにか話題は「国立能楽堂のそばの美味しいお店」にすり替わる→シスオペが出動して「そういえば」以下の発言は「雑談会議室」に移動させられ「続きはこちらでどうぞ」と言われる。。こんな感じでした。なんて勝手な!と思う方もあるでしょうが(当時も「言論統制だ」と言った人はいた)、こういう強権的なシステム管理者が「天の声」を発動できる体制が、純粋にそれぞれのテーマについてだけ語れる会議室が長いこと存在し続けられた理由でもあったと思いますし、ぬえはこれはこれでアリかな、と思っています。