ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

師家月例公演の申合

2011-01-08 02:03:51 | 能楽
今日は師家の月例公演の申合でした。

この正月は、前述の師家所蔵オープンリールをデジタル化する作業に追われて、なんとも忙しい日々を送っておりました。ちなみに元旦の深夜には師家の600年前の出身地…丹波篠山で恒例の「翁神事」が行われましたが、今年は ぬえは当番に当たっておりませんで、自宅で正月を過ごしました。

翌2日は師家の謡初めで、チビぬえも仕舞で初参加させて頂きました。…こうして能楽師は正月早々は公式行事があっていろいろと落ち着かない感じですが、それから本格的な正月休みになります。今年はお弟子さんのお稽古が正月6日から始まったので、まあ正月休みは3日間ですか。その間はずっとパソコンを駆使してオープンリールから起こした音源の調整やらCDへの焼き込みやら、インデックス作りやらで連日深夜まで作業しておりました…なんか疲れた~

で、今日が師家の初会の申合。久しぶりに能に触れた、って気分に能楽師がなる瞬間です。でもまた、年のうちで最も注意を要する日でもあるのですが…

なんだか不思議なようですが、毎年 正月を迎えてから最初の舞台…ことにその申合では 普段ではあり得ないようなミスが出ることがありますね。なんでだろう…舞台に対する「勘」みたいなものが、正月をはさんで弛むと言うか…。

考えてみれば、さすがに年末…クリスマスを過ぎれば暮れが迫りすぎて催しはできにくいもので、そうなると舞台としての仕事納めは12月20日過ぎあたりまで、という事になるでしょう。そうして正月の最初の催し…大概は月例公演になるわけですが、その申合が年始の最初の能ということになります。今年の場合は今日…7日でしたから、舞台のブランクは2週間強ということになります。ん~、ブランクとしては特別に長いわけでもないんだけれども。

しかも前述のように謡初めや、ぬえの師家の場合は元旦の深夜に「翁神事」があったり、と、結局 年末年始といえども毎週 能を上演している計算です。

それでも…なぜかなあ、正月の最初の能の申合では、ミスが出ることがありますね。そうでなくても なんだか声がうまく出ないとか、足がうまく動かなくて焦る、というような事があります。正月をはさんで、能の催しこそなくても、お弟子さんのお稽古がないとか、本当に謡や舞から遠ざかるのはこの時期しかないので、そういう影響かもしれません。

能の世界の言葉ではないけれど、誰だったか、芸について こんな事を言っておられましたね。ご存じの方もあろうと思いますが、

1日稽古を休めば神様にわかる。
2日稽古を休めば自分にわかる。
3日稽古を休めば観客にわかる。

…そういうものかも知れません。ぬえの場合は、舞に関しては、修業時代にある程度までは身体を作ったと思いますので ここまでは思いませんが、謡は確実にこの通りです。2日も声を出さないでいると こわくて舞台には行けない~

ところが今日の申合は良かったように思います。とくに『翁』の千歳と三番叟かな。とても型が切れていて。ミスも出なかったし、今年はみなさん年始からアクセル全開ですね~! ぬえもこの申合の前日からお弟子さんの稽古を通じて声を出してコンディションを整えていたので、少なくとも発声に不安はありませんでした。

今年も良い舞台が勤められますように~。