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イッピンNHK 「ちょっとおいしくちょっと豊かに~東京・金属製品~」

2023-11-11 08:22:24 | イッピンNHK

 第202回 2018年9月25日 「ちょっとおいしくちょっと豊かに~東京・金属製品~」リサーチャー: 安田美沙子

 番組内容
 東京・下町は江戸時代から、金属加工の手仕事がさかん。銅製のおろし金は、水気たっぷりの大根おろしができる。すりつぶすのではなく、切る感覚だ。職人がタガネを打ち込んで鋭い刃をつけている。また、銀で作ったアイススプーンは、アイスクリームをおいしく食べることができる。銀は熱伝導率が高く、指で持つとすぐに熱を帯び、アイスを溶かすのだ。小さな柄の部分には、江戸時代以来の伝統の文様がつけられる。超絶技巧だ。

*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201809251930001301000 より

 

 料理研究家の土井善晴先生を訪れ、「おろし金とは、擦るのではなく、素材を切る」のだと教えていただきました。
 そして、おろし金で”切った”大根おろしで、サンマの塩焼きをいただきました。
 
 
 1.銅製おろし金(江戸幸 勅使河原製作所)

 銅は4千年以上の歴史を持つ金属で、いろいろな使い方がなされてきました。
 「銅のおろし金」は、江戸時代より、料理に欠かせない調理器具として、庶民の間で広く使われてきました。
 江戸時代中期に医師・寺島良安が編纂したとされる正徳2(1712)年刊行の日本の博物誌『和漢三才図絵』(わかんさんさいずえ)の「庖厨具の部」には「銅のおろし金」に関して次のような記述があります。
 「薑擦(わさびおろし)は銅を以て作る。
 形は小さなちり取りのようで、爪刺(目のこと)が起こしてある。
 山葵、生姜、甘藷などをする。
 裏の爪刺は粗く、大根をする」という説明があり、現在のおろし金そっくりの絵も添えられています。
 
 おろし金の形状は関東と関西とではちょっとだけ違っています。
 関東のものに比べると、関西のものは持ち手が長くて肩がなで肩。
 関東のものは表が大根おろしなどに使う粗い目で、裏返すとわさびなどに使う細かい目。
 関西は逆で、表が細かく、裏が粗い目になっています。

 東京・葛飾区にある「江戸幸 勅使河原製作所」は、都内で唯一の「あたり金(おろし金)」の製作所です。
 なお、この業界では『おろす』と言う表現は忌言葉として嫌われるため、『あたり金』と呼ぶのだそうです。

 勅使川原隆さんは工房の二代目。
 父親のもとに弟子入りしたのが18歳のことで、もう60年以上この仕事に携わっていらっしゃいます。
 
 勅使川原さんは、昔ながらの製法で、まずは熱した充分な厚みの銅板に、腐食防止のために錫(すず)をたっぷりと手塗りします。
 時間を掛け過ぎると錫が焦げてしまうため、手早さが求められるそうです。

 「目立て」という作業では、銅板に鏨(たがね)を一つ一つ打ち込み、目を立てていきます。
 研鑽を積んだ勅使川原さんですが、「鏨(たがね)を打ち込む一刀目がいちばん難しい」とおっしゃいます。
 刃先を銅板に食い込ませるために、鏨(たがね)を持つ左手の力をキープする必要があるからです。

 勅使川原さんの「おろし金」の刃は、ご覧のように、とても高く鋭くなっています。
 機械打ちでは決して出来ないこの高さと鋭さが、食材の組織を必要以上に壊さないため、繊維に水分が程良く残り、きめ細かで美味しいおろしが出来る秘密なのです!

 一度使うと手放せない品ですが、機械による大量生産に押されて、手仕事で製作する職人は激減。
 現在、おろし金の目を立てられる職人さんは、全国でも3名ほどしかいないそうです。

 見事な刃を備えた「銅おろし金」が出来上がりました。
 勅使河原さんは「買っていただいた方に喜ばれるのは職人冥利」と語っていらっしゃいました。
 
 江戸幸 勅使河原製作所 東京都葛飾区小菅1-28-8

 

 2.東京銀器

 「東京銀器」は、台東区や荒川区を中心とした地域で作られている東京都伝統工芸品で、昭和54(1979)年、国の伝統的工芸品に指定されました。
 
 「東京銀器」の歴史を紐解くと、その始まりは江戸時代中期に見られます。
 「銀師」(しろがねし)と呼ばれる銀器職人や、櫛、簪(かんざし)、神興(みこし)金具などを作る
「金工師」と呼ばれる飾り職人が登場し、町人の間でも銀器や銀道具が広く親しまれていました。

 慶応3(1867)年にパリで開かれた万国博覧会において、日本の銀製品の良さが世界の人々に知られるようになると、東京でつくられた日本情緒豊かな肉厚の花器が横浜の港から数多く輸出されました。
 戦後もスプーン・フォーク・装身具類を始めとした銀製品の需要も拡大し、今日も日本を代表する伝統工芸品として、現在も広く世界中で愛されています。
 なお、「純銀」とは純銀99.9%以上のものを言います。

 東京・台東区にある「日伸貴金属」では、2代目・上川宗照さんと江戸っ子一家が同じ工房で仕事をしています。
 銀器の主な工程、「切る」「鎚絞り」「焼鈍」(しょうどん)「加飾」「磨き」を手仕事で、外の職人と分業せずに5人家族で行っています。

 銀師の上川宗照さんには「切嵌象嵌」(きりばめぞうがん)という技術が用いた「鹿文切嵌偏壷」(しかもんきりばめへんこ)という花瓶の作品があります。
 「切嵌象嵌」(きりばめぞうがん)とは、銀をある形に切り抜き、別の金属をそこに嵌め込む技法である。

 3代目・上川宗伯さんは現代に生きる銀師として、純銀の丸い板を木槌と金槌を使って、絶妙な力加減で叩いていきます。

 銀は叩き続けると固くなり、熱を加えると柔らかくなり、再び加工しやすくなります。
 叩いては炙り、叩いては炙りを繰り返して「ぐい呑」を完成させました。

 

 3.アイスクリームスプーン(日伸貴金属)

 「日伸貴金属」では、話題のアイススプーンを作っています。
 銀は熱伝導率が高く、指で持つとすぐに熱を帯びてアイスを溶かすため、アイスクリームを美味しく食べることが出来ます。

 柄の部分の模様には、岩石目、槌目、ござ目などがあります。
 ござ目は日本独特で、かつ贋金を造りにくくするために、小判の制作過程で用いられた高度な技を要します。

 日伸貴金属 東京都台東区三筋1丁目3−13

*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Tokyo/kinzoku より


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