~Agiato で Agitato に~

再開後約20年になるピアノを通して、地域やほかの世代とつながっていきたいと考えています。

空気をつくる

2007年12月24日 12時15分12秒 | 雑感
昨日、街中の楽器店へ行きましたところ、何かイベントを始めようとしていました。
自動ドアのすぐ脇のステージにシンセやデジピやキーボードを置いてたので、新製品のデモンストレーションだろうな、と思っていたのですが、そこにいたのは顔なじみの店員さん二人。
で、演奏者は?・・と思って見回しましたが、誰もいません。
どうも、彼女たち二人でクリスマスソングをやるようでした。
小さな会場とはいえ、店頭ですし、人前でいつも弾いているような人たちではないのでそれなりに緊張しているだろうなあ・・・と思って、見守ってました。

顔なじみの私と娘がまん前にいるというのは、奏者二人にとって緊張昂進なのか緩和なのかわかりませんでしたけど、手拍子したり、頼まれたすずを振ったりしてそれなりに応援いたしました。
つられて手拍子したりしてくれるお客さんも結構いて、たぶん弾いてるほうは寒い思いせずにすんだかな・・とちょっとだけ思っていたのですが、
終わってから「ありがとうございました!!緊張も和らいだし、すごいうれしかったです」と声をかけてくれました。

こちらへ引っ越してきてちょっとびっくりしたことがあるのですが、それはなにかのイベントでもお客さんがシャイなのかシーンとしてることが結構あるということ。
クラシックはシーンとしてなければいけませんが、たとえばギャグソングのイベントでも、お腹を抱えて笑えるようなダンスのイベントでもお行儀がいい。
たぶんほんとはノリノリだったり、心のなかで大爆笑しているのだと思うのですけどね。
私はこういうところで周りを気にしない人間なので、気がつくと一人大爆笑だったりで、逆に自分が自分にひいてしまったりするのですが・・・。


もともとは、私もシャイ(?)なのでこういう場面で手拍子打ったりはなかなかできない人間だったのですが、あることがあってから、少し気をつけるようになりました。
学生時代の日舞の師匠が、どうも現役の芸者さんだったみたいで、カラオケにみんなで行った時、みんながそれぞれのことをしたり静かに聴いたりしていたら、大変怒られました。
「こういうときは、礼儀としてもノってあげるべきでしょう!だいたい音楽きいてて身体が動かないということ自体、私には考えられませんっ!」

それが世間の常識なのか、客商売の礼儀なのか学生の身にはわかりませんでしたが、なにかのパフォーマンスの現場に居合わせた時は、できるだけパフォーマーの気持ちに沿ったお客になろうと思うようになりました。



これはあるところで読んだ話です。
海外の某所でマーラーのシンフォニー(何番か忘れました)の演奏がありまして、第一楽章が終わったところでゲホゲホとすごい咳。
まあ、楽章間なので別にいけないことではないのですけど、その時指揮をしていたラトルは客席の方を向いてこのようなことを言ったそうです。
「この曲は、静寂に始まり静寂にうちに終わります。それは演奏者だけでなく聴衆のみなさんと一緒に作っていく時間でもあります。つきましては、咳をしたくなったらこのようにお願いしたいです(・・といって、ポケットからハンカチを出して口に当てるしぐさをした)」


いわゆる「空気を読む」の上級編ですけど、私も良き聴衆良き観客とは何か、その時その時で考えていきたいと思います。