アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

「アイルランド」は風と共に去ったけど

2020年04月18日 | Weblog
 時間はたっぷりありますが、コロナ禍の最中、旅行へは出られません。旅行は、不要不急じゃないから。カミサンは、旅行嫌いなので、どってことなさそう。そのカミサン、過去に、「アイルランドへ行きたい」と、言い出したことがありました。理由は、「風と共に去りぬ」を読み、「スカーレット」を読み、行きたいと思ったという。
 「信楽なら、国内だものすぐにでも行けただろう」って?あ、あのね、「スカーレット」といっても、前の朝ドラの「スカーレット」じゃないのっ。「アイルランド」と、書いてあるでしょ!しっかり読んでね。
 「スカーレット」は、「風と共に去りぬ」の続編。話の展開もさることながら、アイルランドの風景描写が見事です。
 めずらしくカミサンのほうから、「アイルランドへ行きたい」というので、私は、綿密な計画を立てました。道路交通は、右ハンドル左側通行なので日本と同じ。その点で、レンタカーで旅することにストレスはない。ところが、IRAの無差別テロのことがあり、(外務省から渡航注意情報が出されていたかと)アイルランド行きは断念せざるを得ませんでした。アイルランド…テロの風と共に去りぬ。
 新聞のスポーツ面、エキサイティングな記事は、ずーぅっと、ナッシング。「試合」「大会」と名の付くものがないから、報道のしようがない。
 日本でのスポーツ、「ラグビー・ワールドカップの時が華だったねえ!アレが最後だったねえ」と、いう声があります。確かにそうだなあと思います。
 あのとき日本代表は、第2戦でアイルランドと戦いました。試合は19対12という接戦。トライ数ではアイルランドの方が多かったのですが、内容は日本の完勝でした。日本中が、盛り上がりましたよね。
 出場は20チーム。20か国ではなく、20チームでした。イギリスからは、「イングランド、スコットランド、ウエールズ、北アイルランド」の4チームが出場…かと思ったら、「北アイルランド」は出場していなかったぁ…かな?
 「アイルランド」という名前のチームは、出場していました。日本と戦いましたからね。
 アイルランド共和国は、独立した国。アイルランドという名前のチームは、アイルランド共和国のチームじゃないのか?そんなはずはない。アイルランドチームは、大会開幕時には、世界ランキング1位でした。出場は当然。
 引っかかるのは、北アイルランド。出場権がなかったから出てこなかったのか?他に出てこられなかった理由があるのか?ワケが分かりませんでした。
 ご存じの方にとっては、「そんな事も知らないのか?」となるでしょう。あまりにも基本的な疑問なのかも知れません。で、このほど、ようやくワケが分かりました。
 イギリスは、サッカー、ラグビー、クリケット、ゴルフなど多くのスポーツが発祥した国。国際競技団体は、これら団体球技(サッカー、ラグビー、クリケット)について、発祥地域の伝統を忖度する観点から、イギリス単体ではなく、「イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4地域それぞれの加盟」を認めている。なるほど、これで半分は理解しました。残りの半分、「なぜ、北アイルランドはラグビーワールドカップに出てこられなかったのか?」。
 「ラグビーに関して、北アイルランドは、アイルランドとの合同チーム」なのだと。つまり、日本と戦ったアイルランドのチームには、北アイルランドの選手も混じっていた。これには、飛び上がるほど驚きました!北アイルランド紛争を経て、今もIRAが動くのではないかという不安がある。そのような状況下、北アイルランドとアイルランドが、ラグビーで合同チーム…!ありえない!だけど、実際あるんだからぁ…!
 北アイルランド紛争。60年ほど前に始まった。北アイルランドの領有をめぐるイギリスとアイルランドの領土問題・地域紛争のこと。「ベルファスト合意」で収束したかに見えますが、IRAの無差別テロの不安は払拭できないなど、今も尾を引いています。アイルランドにとっては、「北アイルランドをイギリスに盗られちゃった」という感じだと思います。
 「アイルランド共和国」と「北アイルランド」のラグビー合同チームに話しを戻します。試合前に歌われる歌(国歌)は、どちらの国の「国歌」でもなく、ラグビーのために作られた「アイルランズ・コール」という歌なのだそう。旗も「アイルランド共和国国旗」と、「北アイルランド旗(ユニオンジャックではない)」の2本を使用。非常にセンシティブな様子。
 そういえば、イギリスの呼称には、「United Kingdom」とか「Great Britain」とかもありますが、正式名称は、「The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」。長っ。日本語にすると、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」になります。北アイルランドの扱いに気を遣っているんだなあと感じます。国の名前に、「北アイルランド」を入れているのですから。
 政治的に対立するアイルランド共和国と北アイルランドが、1つのチームになる。
このありえない合同チームが、ラグビーの世界ランキング1位になる…。
 これぞノーサイド精神の表れ…とも受け止められるし、そう考えた方が明快でいい。だけど…この合同チームを、そのようなフレーズで表現したくないなあ…。地球より重いものに、折り合いをつけているのです。人間って、そういう力も持っているのですねえ。