○(若松の近代化遺産を歩く)若戸渡船の若松側渡船場から歩いて若戸大橋のすぐ下の杤木ビル(とちきビル)〔大正9年(1920)〕。

設置当時はもちろん若戸大橋(昭和37年開通)はなく周辺の「東海岸通二丁目」付近がオフィスビル街だったという。昨年出かけて見に行った旧門司三井倶楽部の、松田昌平設計の鉄筋コンクリート造。杤木商事は汽船会社の一つで、現在は雑居ビル的に使用され1Fに理髪店(今日はもちろんお休み)があるようで、ちょっと覗くと内装もレトロな感じを利用している模様。海側の方にも外壁のレリーフなどが残っていて、よくよく見ると非常に年代を感じさせる。たれぱんだも海岸に面した通りを歩いて景を楽しんでみる。






この景色に一種の既視感のような懐かしさを覚えるのは、やはり大正昭和と鉄工所等の工業が発達した「日本海側の海岸」=信濃川河口の新潟港を思い出すためだろうか(ちょうどこういう感じではあるな。そういう「近代の名残」のようなものは万代橋をはじめ確かにあるし)。しかし新潟よりも若松の方が圧倒的に、若戸大橋の下の旧若松港銭収入所見張所〔昭和6年(1931)]など、港の海岸のあちこちに遺構が残っている。さらに言うと、幾分か明るく観光地パックツアー化された気分の「門司港レトロ」などよりも、まだ「生活空間と密着した空気感を保ったまま」存在しているような迫力を感じるのだ。予想以上のdeepさに白昼の眩惑感を覚えつつ、つづく(20120505追記)
本日のBGM:
映画「座頭市物語」(大映、1962)(日本映画専門チャンネル、5/5 21:00~)
奇しくも若戸大橋開通の年に作られた第一作…きちんと見たのは初めてかもしれないが、祝日にふさわしい名画鑑賞となった。余計なもののない、研ぎ澄まされかつ抑制された感情の表現…市(勝新太郎)と平手造酒(天知茂)だけでなく、通り過ぎていく登場人物の一人一人の余韻にそれぞれの来し方行く末を感じ、見ている方が思いをはせてしまう点と、“泥くささ”の点?で「灰とダイヤモンド」を思い出した。非常によくできている映画であるだけでなく、有無を言わさぬ迫力と詩情に浸る。(20120505 23:30)