久しぶりに面白い演劇をみた。
劇団「銅鑼)(どうら)の公演「エイジアン・パラダイス」。
演劇なんて久しぶり。以前、女優をしている従姉妹が小劇団にいた頃はその影響で「夢の遊眠舎」(野田秀樹主催)や「スーパーエキセントリックシアター)(三宅 裕司主催)の公演などをしょっちゅう見に行ってたりしてたものだ。
今回の公演は教会の姉妹から教えていただいた。それもすぐ近くの文化会館とのこと
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。珍しくダンナが見たいといってるし、次男にも勉強になるから一緒に連れて行ったのだった。(次男の入っている美術部は演劇部もかねているのだ。)こういうのがいちばんすきそうな長男は疲れたから家で寝てるといってついてこなかった。
劇の内容。
下宿屋「エイジアン・パラダイス」の女主人・春子は「来るものは拒まず」をモットーとしている。下宿人には在日韓国人でゲイバーのママをしている英男、フィリピンパブホステスのアナベル、中国人と日本人のハーフの美華、東大留学生でタイ人のスジンダ。他に春子の従姉妹の息子に慎一郎、アナベルの友達でフィリピン人のエバン、隣のマンションの頼子が登場する。
ある日、皆でスジンダの歓迎会を準備しているところへ慎一郎がやってくる。彼はルポライターだが怪しい外国人たちが住んでいると聞きつけてきたのだった。そこへ美華の恋人が彼女を迎えに来る。ゲイバーのママ英雄はとってもおしゃべり。彼女がハーフである事を話してしまう。それがもとで別れてしまい美華は閉じこもってしまう。そんな中隣のマンションの代表として頼子が苦情を言いにやってくる。
下宿人たちのことをわかってもらいたい春子は自分が中国残留婦人として生きてきた話を始める。話が進むにつれて、明るい英雄の抱える社会でのいきにくさ、タイでの少女売春の現実を少しでも変えていきたいと考え留学した本当は貴族のスジンダ。美華に恋するエバン。ハーフということで自分のアイデンティティーに悩む美華。フィリピンに残してきた幼い娘と兄弟を養うのが目的で不法滞在しているアナベル。アナベルに恋しているのにふざけた態度しかとれないので信用されない慎一郎。マンションの頼子はエイジアンパラダイスの良き理解者になり英雄と良い友達なって一緒にバーゲンに行く仲に。
終盤、慎一郎が書いた記事が元でアナベルが強制送還される。自分の記事のせいと彼女を守りきれなかった事で苦しむ慎一郎。そして彼は彼女を追ってフィリピンへ。スジンダは父の会社を継ぐためにタイへ戻る。エバンと美華は結婚し・・・・
何年かたち、またエイジアンパラダイスに懐かしい顔がそろう。スジンダが出張で来日し、アナベルと慎一郎は来ないが2人はフィリピンで幸せに暮らしている。そしてアナベルの娘のマリアが新しい住人としてくることになり大歓迎されるところで幕は閉じる。
もう話が進むにつれてどんどん引き込まれていった。寝てしまうのではないかと思っていた次男も楽しんでいたようだ。下宿の女主人、春子の温かい人柄も素敵だったし、英雄の女らしいしぐさやしゃべり方もちょっとした笑いのエッセンスとなり、頼子がだんだんとエイジアンパラダイスに親しんでいく様子もほほえましい。
劇の中で扱っているものは「中国残留孤児」「中国残留夫人」「不法滞在」「売春」「性同一性障害への無理解」日本人の外国人労働者に対する偏見、それぞれが「重いテーマ」なのだけどわかりやすく日本が関わるアジアの問題として勉強になった。
私もアメリカに5年住んでいた頃、日本人である事で差別的なことが少なからずあることを見聞きしてきたし、そのころ言葉や文化の壁もないとは言い切れなかった。また、帰国したらしたで、特に長男がアイデンティティーに苦しんでいるようなところもあり共感する部分があった。
会場ではアジアのお菓子や工芸品などが中国ウイグル族や、アフガニスタンのチャリティー目的のためにうられていた。公演後に俳優さんたちのトークライブが会ったのだが、待っている長男のためにそこでうられていたアジアのお菓子とマンゴージュースをお土産に買って帰った。
久しぶりの会場だったので途中パニック発作の事が頭をかすめたが最後まで楽しんでみる事ができた。
いい話だったな。心があったかくなるような話。
エイジアンパラダイスに住む住人達はみんな思いやりがあって、お互いの環境や違いを理解しあい尊重し助け合っている。時にケンカもするけれど。
そんな世界っていいな。