吉野弘が亡くなった。数々の詩を残して。
吉野弘の詩に曲をつけて、歌われた。
吉野弘が、労働者を語ったことを知る者も多い。
次の詩もそのひとつだ。
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ハミング
一九五九年メーデーのために
鼻唄まじり
口笛ふいて
数々の不作法を働き乍ら
颱風の言う挨拶がいい
―― わたしは役に立つでしょか.
人を食ったこの挨拶が
労働者のものになるといい.
このユーモアが
労働者のものになるといい.
労働者の自信に裏打ちされるといい。
古い主人は
もはや
労働者を使いきれなくなっている.
もて余している。
労働者が
そのことに気付いてくれるといい.
デモのとき
ストライキのとき
労働者は
ハミングで
軽く
唄うといい.
誇りを
唄に流すといい。
颱風を気どるといい。
――ぼくらは役に立つでしょか