「クラシックでわかる世界史」(西原 稔 著)を読み始めて
「音楽の歴史はまぎれもなく、世界史の一部である。・・・社会の富がどこに集中し、そしてその富がどのような目的と方針のもとに再分配され、支出されるかという問題と、音楽の活動は無関係ではありえない、」として、16世紀半ばの宗教改革の時代から第一次世界大戦終了までを扱っている。
宗教改革を進めるために、カトリックとは異なる新しい讃美歌を自ら作曲したルターのコラール≪神は堅き砦≫が、その後、メンデルスゾーンの交響曲第5番≪宗教改革≫の第4楽章に登場したことから筆をとっている。ルターとそのよき協力者の作曲家ヨーハン・ヴァルターが多数の宗教歌を作曲、楽譜と書籍が多数出版されたが、その費用は、どこから捻出されたか。ザクセンが没収したカトリックの修道院の土地や財産であったと記している。
マイヤベーヤのオペラ≪預言者≫とヒンデミットのオペラ≪画家マティス≫は、宗教改革をこころみ、弾圧された人々を描いたものという。ドイツの農民戦争を題材にした画家マティスは、ミュンスター再洗礼派の共鳴者であった。
ドヴォルジャークの≪フス教徒≫は、ボヘミヤにおける民族抑圧への抵抗が意図されていると。
ヨーロッパ全土を巻き込み、ドイツを主戦場とした30年戦争の終結のヴェストファーレン条約(1648年)の記念式典で演奏された曲、作曲された曲や、20世紀に入って、この講和条約を題材にしたリヒャルト・シュトラウスのオペラ≪平和条約≫が初演されたのが、ナチス政権下のドイツであったのは歴史の皮肉と指摘している。
ハプスブルグとブルボンの宮廷文化と絶対王政時代は、音楽がきわめて重要な役割を果たした。ハプスブルグ家が婚姻を通じて、ヨーロッパに君臨する大王家となったことから、その結婚式の祝宴では音楽・オペラが国家的な行事となった。
類14世とリュリや、その後のクープランのポーランド王位継承戦争とのかかわりなど、生き生きとドラマが著者によって語られている。
この本をさらに読みやすくしているのが、ページの下部に注釈を入れて、歴史的出来事や作曲家を解説していることである。そのため、歴史の本を別にとりださなくても良くなっている。