徒然なるままに 平和と音楽を求めて

平和憲法のもと日本は戦争しない国として、いろんな国の国民から賞賛されてきた。この日本が戦争する国に変質しようとしている。

『第三帝国のR・シュトラウス――音楽家の喜劇的闘争』を読んで

2012-01-01 | 読書

  著者が日本人というのが驚き。著者の山田由美子氏は、「シェイクスピアやベン・ジョンソンを含む16世紀から17世紀にかけてのイギリス・ルネサンス期の文学が狭義の「専門」であるが、西洋文化本来の「公的な文学」の伝統に立ち返り、文学が単独または他の芸術・学問と融合して個人や社会にどう貢献してきたかという問題を追求するうちに専門分野が拡張し、現在は西洋文学・比較文化全般を扱っている。」(神戸女学院大学のホームページ)という。

 序章の冒頭に、「1935714日、ナチ党の機関紙『フェルキッシャー・ベオバハター』にリヒャルト・シュトラウスの辞任告知が掲載された。「老齢と健康」を理由とした辞任理由について、「だが、実情は異なる。『老齢と健康の悪化』どころか、この巨匠の『頑健ぶり』には第三帝国の首脳もさんざん手を焼き、その挙げ句の強制解任であった。」と記している。

 ユダヤ系の学者・文化人・芸術家の解雇、迫害にシュトラウスは、抵抗したというのである。シュトラウスは音楽局総裁としての『職責』を果たさなかったという。 

 「ナチスにとって最大の遺恨は、第三帝国音楽局総裁とユダヤ人との合作オペラの上演を阻止できなかったことであろう。シュトラウスは、ユダヤオーストリア人シュテファン・ツヴァイクの台本によるオペラ『無口な女』の制作を1931年から計画し、当局のたび重なる中止勧告にもかかわらず、特別例外措置として上演許可を取り付けてしまったのである。」

このオペラ、20004月になかのゼロホールで、指揮:松岡究、演出:松尾洋、東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団で公演、これを見に行った記憶がある。

シュトラウスは、「芸術は文明の所産である。・・・芸術の本来の使命は、ある特定の時代のある民族の文明の生き証人となることである。」と語っている。『エレクトラ』も『サロメ』も、そのような意図で制作されている。

『ばらの騎士』『ドン・キホーテ』、混迷するその時代を映している。

ナチスの第三帝国の広告塔の役割を果たしながら、ナチスに抵抗した音楽家の生き方を著した素晴らしい著作である。

 

『第三帝国のR・シュトラウス――音楽家の喜劇的闘争』(世界思想社、2004)

  「みなと図書館」

 

 



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