ふむ道,小道,数多く

趣味いろいろ。2014/9に別ブログを合体したので、渾然一体となってしまいました(笑)

墨攻その2(さらにネタバレ)

2007-02-12 12:20:34 | 映画
私はどうも最近なるべく字幕を見ないようにしていたので,今回中国語がわからないのにそのクセが抜けず,慣れるのに苦労しました。(笑) ただ,中国語のセリフの長さと,字幕が何か一致してなくて,中国語のわかる人が見たら,この字幕大丈夫なんだろうか?と心配になりましたが,案の定,字幕が悪いかどうかはわからないのですが,脚本がヒドイというレビューがありました。

主人公と,趙の将軍と,弓隊のリーダーには惹かれましたが,逸悦というヒロインを見ていて,普通に戦っている間はまあまあ許せたけど,いきなり革離の前で脱ぎ始めて,緊張感で満ちた男の戦場に一体何だコイツ!?ってな違和感を感じたし,イライラさせられるし,何故革離がこんな変な女に惹かれるのかわからず,何故馬裂き死刑執行の途中で敵が来たからって牢に戻されるのかもわからず(放置するのが自然では?),最後はかわいそうだなあとは思いましたが,概ね感情移入できませんでした。舌を抜いたのは無理矢理伏線を効かせる為とわかったのは,一夜経ってから。こちらも案の定,映画限定ヒロインだったのですね。せっかく「ハリウッドには表現できない因果応報」をわかり易く描けていたのに,ヘンな所でハリウッドのマネをして「無理矢理ヒロイン」を作る必要は全然ないと思います。(いや~過激な批判ですみません。どうもロード・オブ・ザ・リング以来のうらみつらみで(笑))

私は映画を観る前に,某テレビ番組を見て,墨家とは何かをほんのちょっと勉強できてよかったと思いますが,映画の中では全く説明がなく,何の予備知識もなしにこの映画を観たら,テーマがよくわからなかったかもしれません。公式HPなどを見て勉強してから映画を観るのがよいと思います。

この映画は,中国/日本/香港/韓国の合作映画ですが,どこかのレビューに,そのうち漢字圏諸国の精鋭を集めた「三国志」が観てみたいもんだ,とありました。そのアイディア,大賛成です。「映画としては」ロード・オブ・ザ・リングどころではないすごい傑作になりそうです。

ただし,変なヒロイン入れるなよっ! もううんざりでございますよ。

久しぶりにBBC版LOTR (8)

2007-02-12 11:27:52 | Tolkien・LOTR
ディスク9は1番好きな所です。聴くのをサボっていたわけでなく(^^;),すっかり聴き惚れておりました。

何故お気に入りかと言えば,大将が出てくるから?というのもありますが(^^;),それだけでなく,ここでは,全ての主要登場人物が,クライマックスに向けて移動していく様子が描かれているのですよね。原作ではバラバラ,映画ではさらに引き伸ばされております(汗)が,時系列に切ると,こんなに緊張感のある構成になるんですね。

まず,フロドとサムがファラミアに捕まる所から。今回BBC版を聴いていて,ボロミアが指輪を奪おうとするシーンでは,フロドは彼を嫌っているのではなくて心配しているような声のトーンでしたが,その態度がここにも一貫して貫かれています。フロドがとても大人なのがBBC版の特徴ですね。
ファラミアは口数が多い!(笑)おかげでとても早口になっております。ボロミアのボートの話をする時,バックに流れている音楽がいいですね。映画版でボロミアがエルロンドの会議で発言する時にバックに流れる音楽と似ています。
サムがうっかりボロミアの事を喋ってしまうシーン,フロドは咳をしております。(笑) 原作にはそんな事書いてありませんが(単純にサム!と言うだけ)Transcriptによればフロドはワインでむせたそうです。(そんな事聞いているだけじゃわからんって(笑))
ここでサムが,踊る子馬亭でピピンが馳夫さんに言ったのと同じあの諺"Handsome is as handsome does."を使いますが,ここの「handsome」は見た目の話ではなく,「行いが立派な事」の意味。これに続いて例の有名なセリフ,"Now's a chance to show your quality."が出てきます。
指輪の話をした後,フロドが体調を崩してしまいますが,これは,要するにファラミアにまで脅されて緊張したのと,ボロミアの事での誤解が解け,ほっとして力が抜けたという事でしょうか。"Well, Frodo, at last we understand each other."(原作と映画は「each other」ではなく「one another」,one anotherの方がボロミアも含めて三者で,という感じが出ているように聞こえますが。。(汗))が効いてます。何度も言われた事ですが,改めて,映画ではこのセリフが,ヘンな所に行ってしまいましたね。

場面変わって,死者の道にアラゴルンを送り出すエオウィンです。セオデンには一切本音を言わないエオウィンが,ここでアラゴルンには,(私と同様)皆もあなたと一緒に行く義務はないのです,彼らはあなたを愛しているから一緒に行くのです! と本音を。。
それに続いて,死者の道を越えるアラゴルン,レゴラス,ギムリ達の様子が描かれています。どうもこの3人でも,死者の王(笑)でもない声がすると思ったら,ハルバラドなのだそうです。アラゴルンの「エレヒ」の発音がカッコいい~~♪ 角笛の音が他の人の角笛と違いますね。(他はボロミアでもローハンの騎士でもメリーでも一緒だったと思いますが(汗))

次はレンジャーさん達がゴラムを捕まえる,のシーン。映画との違いがくっきり。フロドは完全にレンジャーを信頼していて,逆にゴラムをなだめておりますね。BBC版では何故かゴラムが人殺しだとは言っておりません。で,お別れのシーン,私は,原作の,ファラミアがあっという間に去っていって,フロド,サム,ゴラムが3人取り残されている所が,これから待ち受ける運命の過酷さを象徴しているようで,とても印象深かったのですが,映画でもBBC版でも,描かれなかったなあ。。。

一方ゴンドールに到着したガンダルフとピピンです。デネソール侯に拝謁する前,ピピンを子供のようにいろいろ言い聞かせているガンダルフがおかしいです。(笑) 最後に"If you've walked all these days with closed ears and mind asleep, wake up now!"これ,原作通りのセリフなんですね(爆)
デネソール侯の声はセオデンと全然違います。言葉遣いも違うような気がします。セオデンの言葉遣いは,エオメルやエオウィンと変わらないのですが,デネソールはボロミアやファラミアとは違う言葉遣いです。いつも気になっているのですが,ボロミアが生きていた時代も,2人の息子達と楽しい家庭生活を送っていたとはとても思えませんねぇ。でも,ピピンには何となく愛情を持って接しているようですね。ピピンにパランティア覗きをさせたのは,デネソール侯とのつながりを作る為だったのかな?と思えてきます。

またローハンに戻り,馬鍬砦に到着したセオデンを騎士姿で迎えるエオウィン。BBC版ではゴンドールからの遣いをエオウィンが先に受け取ってしまうのですね。映画の改変(烽火だけ)もスゴイと思いましたが,BBC版の改変も,珍しく,結構大胆ですね。

モルグル谷に向かうフロド一行,「お茶の時間があるようなきちんとした場所じゃないよ」というセリフが入ってますね。♪(そんな時にお茶を忘れないイギリス人‥) 十字路で,古い時代のゴンドール王の像の頭に花が咲いているのを見て,まるで星の王冠のようだと,ちょっと明るい伏線を感じております。

で,最後にまたローハン。王様に置いて行かれたメリーを拾うのは「エオウィン」でなく「デルンヘルム」。映画のエオウィンはいかにもの女戦士で,かわいいと言えばかわいいのですが,「デルンヘルム」も映像で見てみたいなあ。。。
ローハンの騎士達がセオデンに率いられて出発するこのディスクのラスト,音楽もカッコよくて,とても好きです~♪

墨攻(ネタバレです)

2007-02-12 01:34:57 | 映画
どこかの週刊誌のインタビューに,アンディ・ラウが,「ハリウッドは因果応報というアジア的感性を永遠に理解しないだろう」というような事を言ったとか,そんな話を聞いてから,ずっと気にいた映画です。

因果応報という言葉の意味。私自身も多分正確に理解してないと思います。「悪い事を続けているとそのうちバチが当る」「悪い人でも反省して善い行いを続ければやがて報われる」というのは,わかり易い例です。でも,本来は仏教用語。善いも悪いも関係ないはず。「塞翁が馬」,のような話も,因果応報の立派な一例なんですよね。

墨攻とは,戦国時代の中国の話ですが,原作は日本人の書いた小説と漫画です。墨家とは,中国の思想家墨子が築いた思想で,主な考え方は,一切の差別が無い愛(兼愛)と,、「人一人を殺せば死刑なのに、百万人を殺せば英雄というのはおかしい」という非攻。大国が小国を攻める事に反発し,攻撃を受けた城に行って、防衛の指導をしていたのだそうです。この映画の主人公,革離は,物語上は,腐敗した墨家教団の命に逆らい、単身で梁城の防衛にやってきた,のだそうです。

映画は,LOTR(とりわけTTTのローハンとアイゼンガルドの戦い(^^;))と,トロイと,007を全部合せたような感じでした。でも,アンディ・ラウが言ったように,ハリウッド映画とは違う因果応報の考え方が取り入れられていて,せっかく10万の兵を4000人で追い払ったのに,残虐な事をしたり,元々の支配者が革離,というより,墨家を理解せず(そもそも墨家は庶民的で支配階級の考えとは合わず,中国が統一されると消えて行ったといわれています),追い払ってしまい,彼に賛同した民衆や将校をないがしろにした為,後々禍が起きるという事になってます。

作りはやや雑?大味?かなあという部分もありましたかねぇ?(汗) 普段は英語の小説を読んだり,ハリウッド映画を観る事が多い為,すっかり西洋の道徳観に浸っていますが,やっぱりこういうアジア的な話を見ると,何故かほっとします。去年,SPIRITという映画を観た時も,似たような事を感じました。アジア人に生まれてよかったかな,と,思った映画でございました。

Run!Run!Run!