明日は明日の風が吹く

60にしておひとりさまに。
この先、どんな人生になるのやら?

『認知症世界の歩き方』

2022-09-11 | ひとりごと
図書館で5月に予約したのがようやく順番が回ってきた。
人気作なんだね、「お早めにお願い」のシールまで貼ってある。


    



ちょっと変わった本である。
取っつきやすいような工夫がしてあり、あっという間に読めてしまったが、
何か違和感が残る。

執筆者は医療や介護の専門家ではない。
ソーシャルデザインプロジェクト(NPO法人)を設立、
「社会課題解決のためのデザイン領域の研究、実践に取り組む」と執筆者紹介欄にある。
デザイナーさん?

たくさんの認知症当事者から話を聴いたそうだ。
認知症になると物事はこんなふうに見える、その時こんなことを感じたので、
こう思って行動したらこんなことになってしまったetc.
当事者の失敗談をわかりやすく紹介してある。
それをトラブルごとに分けて、観光地を巡る旅行ガイドブックのように仕立ててある。

ここには、こうすれば解決するよ~というようなことは書かれていない。
どうすれば記憶を失わずにいられるか、家族はどう接すればいいか、
というようなことは書かれていない。
そこが医療や介護の専門家が書いた本との違いであり、違和感の理由でもある。


で、最終的には
「認知症の問題解決は、デザイナーの仕事だ」と執筆者は確信するに至る。

「複雑化する現代社会には使いにくい商品やサービス、混乱を呼ぶサインや空間があふれています。
 認知症のある方が生活に困難を抱えている原因の大半がデザインにあるのです」(抜粋)

ふーん。そうなのか。
ちょっと飛躍の感ありだけど、
そういえば母もリモコンの△▽の意味が解らなかった。
駅などにある矢印の表示(〇番出口 → ↑ ↖ )も、わかりにくい場合があるよね。
そういうのが改善されたら、認知症の人の困りごとは減るってことか。




後半では、認知症の当事者としての心構えというか、
ひとりで悩んだりせずに専門職に相談しよう、出来ること出来ないことを知ろう、
混乱を生むモノやコトを取り除き、生活を工夫しようetc.
現実を受け入れてプラス思考でいこうと。
ここはとても前向きで元気づけられる。

人生100年時代、いずれあなたも私も先輩諸氏のお仲間になるやもしれず。
どうせなるなら開き直って、明るく認知症の世界を歩きましょう。
周りの人にも堂々と助けてもらいましょう。
とポジティブな気分になったのだが、
こればっかりは何とも、自分がどうなるかはなってみないとわからない。

わからないけど、この本に登場する当事者のように
せめて自分の困りごとや悩んでいることを自分で表現できるぐらいの
能力は残っていてほしいものだ。
ここに登場する当事者の方々は、実に素直に正直に
わからない、忘れる、などと発しているので、
そういう言葉に怒ったり取り繕ったりするうちの母とは大違いなのだ。