皆さんよくご存知の諺に、「去る者は追わず、来る者は拒まず」があります。
この諺は日本で生まれた諺かと思っていましたが、中国の故事に基づくもので、その出典は孟子(もうし)でした。
そこで今日はこの諺を調べてみました。
この諺の意味は、広辞苑によれば次のように説明されています。
『私のことを信じられなくて、私のもとを去ろうとする者を、無理に引きとめるようなことはしないし、また、私のことを信じてやって来る者は誰でも決して拒まない。去る者、来る者いずれもその人の心に任せて、決して無理強いはしないと言う度量の広さを示す言葉。』と記載されています。
そこで、出典である孟子の故事を調べてみると、次のようなものです。
孟子が勝(とう)の迎賓館に泊った時、迎賓館の役人のわらじがなくなると言う事件が起きたそうです。
役人はてっきり孟子の弟子が盗んだものと思って、孟子を非難しましたが、
孟子は「仮に私の弟子が盗んだにせよ、それは大したことではない。私は学問の意志さえあれば誰でも弟子にするし、去って行く者は追わない。これが私の主義だ」
と言ったそうです。
この故事から、『人と付き合う時には淡々とした精神が大切であり、学ぼうとやってきた者はその過去にこだわることなく受け入れるべきであり、去って行く者は追っても仕方がない。相手の自由意思に任せ、自分は淡々とするのが一番良い。』という、この諺が生れたと言うことです。