三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

新住協総会4_町家の解体

2006年05月23日 06時12分11秒 | Weblog

きのう、紹介した土壁で構成された建物の解体現場に出くわしました。
この松本市内の中町通は古くからの町並みが保存された地域。
クラシックな商家が小さな間口で軒を連ねる「町家」が続いています。
間口が狭くて、奥行きが長い、欧米で言う「タウンハウス」なのです。
こうした建て方は、隣家と場合によっては壁も共有している場合すらあります。
そうでない場合でも極限的に隣家との距離が狭い。
写真で見るように、ここの場合は
独立した壁を持っていたようで、解体が可能だったようです。
解体されてみると、どうしても隣家の壁の一部も
崩壊せざるを得ませんね。
解体にあたっていた業者さんに聞いたら、
あとで無料で壁を再構築する条件で了解してもらってから
工事に入っているということです。
まぁ、いい意味での「お互いさま」なわけですね。

わたしどもで行っている、「住宅クレーム110番」への投稿の一部に
最近、行き過ぎたというか、過剰な
「個の権利意識」に基づく他者への攻撃と、
思われるようなものも散見されます。しかし
こういう町家や、欧米でのタウンハウスの隣家関係のなかに
わたしたちがもっと学ぶべき、
居住に関しての、受け継がれている歴史的倫理観があるはずです。
軒を接しながら、お互いを配慮しあう伝統のようなものに
お互いが気づきあう必要があると感じます。

解体された壁を見ていて
きのうの「土壁の作り方」が見事に理解できました。
でもこういう壁を元通りに施工できる技術も残っているんですね。
町並みを保存するということには、
こういう技術の保存という貴重な側面もあるということ。
地域のアイデンティティと、それをささえる建築の技術。
意識を高めていかなければ、消えてなくなるのも
早いといわれます。

全国に「地域色」がなくなってきています。
こういう状況に早く目を向けて、よい方向を作っていく必要があります。
そのためにも、確立した建築技術を持った「地域工務店」
という、地域の製造業を下支えする存在は、絶対に不可欠です。
逆に言うと、地域を代表するような工務店の存在意義は、
かつてなく高まっているとも言えます、ね。
コメント
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