三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

根曲がり梁

2007年03月02日 05時24分33秒 | Weblog

和風建築の魅力のなかで、木組みの迫力があると思います。
ごつごつとした風合い豊かな自然木が、力強く組み合わされているさまは
まさに「構造」という実感を伴って肌身に伝わってくるもの。
よく、男性の施主さんが、自分の家の構造を見ていてわくわくし、
だんだん、内装仕上げの段階になってくると、気持ちがしぼんでくる、
というようなお話を聞くことがあります。
それって、こういう男性的な、構造の迫力が感じさせる部分なのかなと思いますね。
さて、写真は会津の家の3弾です。
メインの居室のリビングダイニングの豪快な柱・梁の空間です。
ここは平屋なのですが、天井を張らず、構造をそのまま表して、
屋根なりの空間一杯に力強く表現されています。
梁は、端部が曲がっている材料を使っています。
聞いたら、地元の山から使えそうな自然木を選んできて、
その根の曲がり具合を計算しながら、こうして利用しているのだそうです。
写真ではそのウチの2本ほどが見えていますが、合計で3本くらいありました。
古民家などでは、こういう自然木の特性を活かした木組みが
よく見られる、というか、きちんと製材することのほうが難しかったのですから、
大工仕事の、現場対応力として必然的に
こういう曲がった素材を活かす技術が生まれてきたのでしょうね。
しかし、今日のようにプレカットばかりになってくると、こういう技術の延命は難しい。
やはりこの家では、現場で墨付けして木組みの仕口といわれる断面まで
臨機応変に考えて、組み上げていくのだそうです。

まさに、人間が作った、という手業が伝わってくる、
その息づかいのようなものまでが感じられてきます。
それも、自然木の持つ風合い、そのかたちを尊重して仕上げるのです。
考えてみれば、こういう手仕事こそ、もっとも贅沢なものなのかも知れません。
職人、っていうことば、司馬遼太郎さんが
なんて素敵な響きを持った日本語だろうと、書いていたことがありましたが、
こういう空間にたたずんでいると、そんな感慨が迫ってくるものがあります。
職人たちの手業が生み出す、自然木が織りなす空間デザイン。

なんとも、和のすばらしさが伝わってくる住宅でした。
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