三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

今週でことしの仕事は最終週

2015年12月21日 07時13分06秒 | Weblog
年々、暦が早くなってきていると思っているみなさん、
ことしもあと旬日を残すのみとなってしまいましたね(笑)。
なかなか平穏無事というわけにはいかない年の瀬ではありますが、
ことしも人に、みな等しく年は終わろうとしております。

公的な用務について、大きな案件があり
いま生きている人間として、果たせることを果たすべきと思っています。
社内の要件についてはまことにさまざまな案件が山積。
ひとつひとつ丁寧に対応していくしかないことがらであります。
新年度に向けて、課題を特定し、方針を策定しなければなりません。
どんなことがらも人が最重要であることは自明。
また、個別の仕事案件でも急を要する案件の処理に〆切が迫ってもいる。
そんななか、年の瀬になって思わぬ方の訃報。
わたしどものReplan東北でさまざまにお世話になっていた佐藤忠幸さん。
まことに痛恨の至りであります。
佐藤さんはわたしよりも5才も若い年齢と言うこと。
わたしどもで東北に進出して以来、東北の建築家のみなさんと
北海道の建築家のみなさんとの交流を図りましたが、
積極的に参加もしていただきました。
温熱環境について、その後の建築で心がけるようにされて
施主からも感謝されることが多いと、笑顔で語っていただいていました。
こころならずも残務山積で葬儀への参列は叶いません。はるかに合掌。

ということで、仕事納めの最終週です。
謹んで、時間を有意義に活用しながら
締めの仕事に邁進していきたいと思います。
本日のブログはやや決意表明のような心境告白で
あんまり住宅ネタとは申せませんが(笑)、
またあした以降、住宅ネタに復帰しますのでよろしくお願いします。
ではでは。

<写真は先日の世田谷住宅見学の折に見た上品な家>


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Replan北海道最新111号 予約WEB販売

2015年12月20日 06時11分35秒 | Weblog
さて、年末進行で同時に4冊のラッシュになっておりまして、
タイトなスケジュールを見ながら、綱渡りの進行。
そういったなかで、本日は当社の旗艦雑誌・Replan北海道最新号ご案内。
表紙に使われた住宅は、なんと外観は古いテイストを残しながら
断熱を内側から強化した、工法的にも面白い中古住宅リノベーション!

【特集】活かす! 変わる! Re・home
いまや、新築だけが住まいを手に入れる唯一の方法ではありません。
なぜなら、中古住宅のリノベーションで、ライフスタイルや好みに合わせて、
自由に、性能的にも暖かく快適にできるから。
古いものにしか出せない価値を活かせるのも、醍醐味のひとつです。

その例として今回Replanが紹介するのは、
「既存住宅の魅力や特徴を活かした事例」と
「既存住宅からガラッと変わった事例」。
知らないともったいない、リノベーションの
活かす・変わる、その手法をとっくりとご覧あれ!

Contents
●巻頭特集/活かす! 変わる! Re・home
●旭川で建てるなら、ココ! 2016
●【編集長インタビュー】
 リバースモーゲージの活用
~北洋銀行ローン推進部・尾崎 真理さん~
●Re・home実例集
●連載 Q1.0住宅デザイン論〈新住協 代表理事・鎌田 紀彦〉
●連載 いごこちの科学 NEXTハウス4 <東京大学准教授・前 真之>
●暮らしを灯す
●連載 賢い人は気付いてる メンテナンスの大切さ
●新築ルポー住まいのカタチー
●連載・ STORY OF ARCHITECTURE
 vol.12 石山緑地
●北の建築家
 「House D」 五十嵐 淳
 「交わる家」 河村 直記

12月16日~23日までにご購入された方は、
一部地域の方を除いて、29日までに配送致します。
Replan北海道版111号の書店発売は、12月29日です!
当社WEBで、予約販売中!

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北海道のくらしの演出家たち NEXT15

2015年12月19日 05時52分57秒 | Weblog
さて、年末企画進行であります。
どうも長期優良住宅制度が始まってから、
住宅建設の時期が年度の後ろの方に移行するケースが増えている。
国の制度設計者たちは自分の都合を優先していて
現場の家づくりのコンストラクションマネジメント発想がない。
とくに戸建て注文住宅では「いつどのように建てるか」というのは
そのままコストパフォーマンスに直結している。
行政側の単年度予算の住宅補助金執行が、
民業の常識的なスケジュールにゆがみをを生じさせている。
「業界指導」手法は、ユーザーにも現場にも不都合を生む・・・。
あっと、どうも大きく横道にズレてしまった(笑)。
年末に4冊の企画が集中せざるを得なかった愚痴であります。
本日のご紹介は、
「北海道のくらしの演出家たち NEXTGENERATION 15」。
Replanの特別編集号であります。
今回の表紙は、ちょっと意欲的な表現案を採用してみました。
「暮らしの演出」というイメージ、訴求できたかどうか・・・。

家づくりの先にある「豊かなくらし」。
その鍵をにぎるのは「人」。
想いを共有できるパートナーを選んで、
想い描く「理想の住まい」「豊かなくらし」を現実に。
第二弾となる本誌では、北海道の家づくり次世代を担う
設計・施工のプロたちをご紹介します。

[道央エリア]
大澤 正樹       住宅企画クリエーション
治部 泰久・野村 徹   lia Style
田中 裕基       三五工務店
福島 慶介       福島工務店/N合同会社
藤原 加苗       北王 
松澤 総志       アクト工房
横田 知朗       スターウェッジ
[道南エリア]
渋谷 旭        渋谷建設
[道北エリア]
牧野 泰介・牧野 やよい 北の住まい設計社/北の住まい建築研究社
[道東エリア]
石川 俊樹       石川建設
城岡 譲二       城岡工作室(シロオカコウサクシツ)
末守 恭子       cube チセ
橋 広明       高橋工務店

2015年12月25日発売 A4版・平綴じ/オールカラー104p(表紙共)
定価800円(税込)
北海道の書店、amazon、Replanホームページにて発売!
webにて先行予約受付中!

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東京世田谷住居、今昔。

2015年12月18日 06時40分31秒 | Weblog


わたしは住宅雑誌を、北海道東北で発行しています。
そのことは必然的に、現代という時代の中で、
人々がシアワセを求めた具体的な形に接するということになります。
家というのは、暮らしの生々しいありようを表現している。
東京で住宅を取材する機会は少ないのですが、
たまたま先日の東京出張ではたくさんの住宅を一度に見られた。
北海道のような積雪寒冷という条件下では、
なによりも住まいは、生存を担保する装置という側面が基本であり、
そういう地域の気候的与条件への対応というのが基本。
一方で東京という「文化」先進地域での住まいは、という興味もある。
ほかの生活文化領域では、田舎に対して都の方が先進性を示すのが普通。
「近頃,都に流行るもの」が、日本人の憧れであるのは、
歴史時間を超えて、わたしたちに普遍的な感覚だと思います。
まぁ当たり前ですが、見ていて気候条件以上に
「社会的な過密集住」という条件の方がはるかに優先しているのが現実。
上の2枚の写真は、同じ世田谷区での住宅の形の象徴的変遷。
言うまでもなく、都市集住が進行したのは人口爆発した
戦後以降の社会的要因ですから、それ以前の気候対応型の
古民家は、温暖地域らしい「夏を旨とした」住まいであります。



こんなインテリア写真を撮影してみると
まことに周辺環境の豊かさが伝わってくる。
通風重視の、ほぼ壁のない空間が大きな屋根の下に展開している。
屋根は重厚な茅葺きで、夏のはじめの梅雨期の湿気を溜め込み
蒸暑の夏に気化熱を発生させて、温度差で通風を狙っている。
こんなほっそりとした柱で構造はやや不安ですが、
屋根が作る涼やかさを第一に考えているということが伝わってきます。
冬場でも南面するこの空間にはたっぷりと陽射しが入って、
建具が板戸に変わるくらいで過ごしてきたに違いありません。
冬の寒さ対応は、この写真の右手に板戸の間仕切り、
土間空間と連続する囲炉裏を囲む空間があって、
「籠もる暮らし」の装置でしのいできたのだと思います。
まことに気候対応という素の表情がわかりやすく伝わってくる。
そういう意味では、下の写真の現代長屋風の3階建て住居も
きわめてわかりやすく現代的集住状況を伝えている。
こういう「対応」というのはあり得べきことなのですが、
しかし生活デザイン的に、美的であるかどうかは、
古民家と較べても、工夫開発の余地があるのかも知れませんね。




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北海道 地域独自住宅基準のゆくえ

2015年12月17日 06時00分17秒 | Weblog
きのうは北海道庁・建設部建築指導課の会議に参加。
「きたすまいる」という新たな地域住宅制度についての検討です。
いうまでもなく北海道は、これまで日本の地域の中で
積雪寒冷という気候条件の厳しさから
「住宅性能」についての地域独自基準をつくり、
官民一体となって、地域住宅技術資産を育んできました。
それが「北方型住宅」という名前で、それなりに
地域の中でも、高位の性能基準として認知も進んできていた。
そして、国の「長期優良住宅」というプロジェクトでは
常に全国をリードするような地域の力として、
この「北方型住宅」基準をベースにした独自規格を提案し、
毎年度採択され続けてきた実績もある。
いま、国は各省庁を挙げて「省エネ」施策・法制定に
突き進んでいるけれど、北海道は実質的にも実体的にも、
そういった流れを常に領導するような地域でした。
そもそも北海道の次世代基準、Q値1.6というものも、
国としてはもっと低位な基準にする流れだったのを
北海道側が頑張って、より高位な基準を定めたというのが経緯。
そしてこの「推進会議」の中核メンバーである北総研副所長・鈴木氏が
そのまま、国の住宅制度設計の主要な立場にも立っている。
こういった流れで、基準としての国の制度整備が進んでいく中で
地域としての北海道は、今後どのような「住宅制度」を持つべきか、
というのが、大きなテーマとして設定されている。

検討課題はおおむね3つ。
ひとつは、総体としての地域の住宅性能を見ると戸建注文住宅では
確かに大いに進んでいるとはいえ、共同・賃貸住宅などは
高性能化は遅々として進んでいない、
こういった現状の底上げはどうすべきなのか、という点。
2つめは、せっかく馴染んできていたこれまでの「北方型住宅」
というブランドとの整合性はどう折り合わせるのかという点。
そして3つめとして、長期間、涵養されてきた地域工務店の
高断熱高気密技術資産の発展をどう担保させていくのか、
という、地域の経済面も含めた独自性に関わるような点。
こうした論点を巡って活発に論議が展開されました。
この手の会議ではけっこう、事務局原案の追認というの形が
一般的には多いだろうと思いますが、
かなりリアルな部分にも迫るような論議だったと思います。
きのうの会議はメディア関係にも情報が告知されていました。
わたし自身も参加者ではありますが、情報拡散に努めたいと思う次第。
叩き台としての原案構築にやや時間がかかり、
成案に至らせるまでの時間は日程的にタイトではありますが、
地域の大きな資産である住宅性能技術がさらに発展するように
その基盤になるような、会議成果をめざしたいと思います。

<写真は、開拓期に建てられた迎賓施設「清華亭」>

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北海道での太陽光利用・ZEH標準化

2015年12月16日 06時01分28秒 | Weblog


北海道では積雪の関係から
屋根面での太陽光パネル普及が今ひとつの状況があります。
屋根にパネルを載せるとすると、
その架台の設置に当たって板金屋根に穴を開けるケースが多い。
歴史的に屋根からの漏水事故に敏感な経緯があって
この点、かなり慎重にならざるを得ない部分があります。
またなにより、設置工事費が現状では架台にお金がかかりすぎる。
設置の補助金は徐々に削減の方向にあり、また、売電の方も
今後の電力自由化を見据えれば、価格がどのように推移するか不透明。
電力自由化で価格に消費者が敏感になっていくことが
容易に想像できる中で、売電価格が独歩高でいられるでしょうか?
太陽光発電には自分は無関係という消費者サイドで、
買う電力価格に興味が集まるとき、原材料費とおぼしき、
太陽光発電電力の売電価格の高値維持には消費者側の反発もあり得る。
社会的に不当利益という疑問が出てくる可能性もあるかも。
ドイツの趨勢を見てもそのことは明らかと言えるでしょう。
しかし一方で、ゼロエネルギーハウス(ZEH)は国策として
将来的に標準化の趨勢にあるのも事実。
どんなに断熱を強化して無暖房レベルにしても、
給湯や照明・家電などのエネルギーは不可欠なので、
そうしたエネルギーを計算上キャンセルさせるには
現状では太陽光発電設置が欠かせない。
どうするのか、というところで停滞状況がある次第。

そういった状況に対して、
いろいろなチャレンジもあります。
写真の住宅では、そもそも屋根面ではなく壁面に設置している。
札幌市内でもかなり条件のいい敷地に建っている家ですが
水平面・屋根面との比較数字は単純には言えないけれど、
設備機器の性能向上もあり、この貼り方でも
発電効率は十分にペイラインをクリアできるとされていました。
壁面設置の場合には、架台の支持安定性や建物への漏水可能性、
さらに、コスト面の問題もクリアできる可能性が高い。



また別の住宅事例ですが、
太陽光発電ではなく、太陽熱給湯で給湯エネルギーキャンセルを
目指そうという考え方もあり得る。
太陽光発電の場合、稼働率計算根拠としての建物への日射量が
周辺の建物設置状況によって大きく変わってこざるを得ない。
新築当時は十分な太陽光の恩恵を受けていた建物でも
周辺の土地利用がさまざまな要因で変化していったとき、
どうなるかは、未知数と言える。
そうであればコンパクトで、比較的に設置場所を発見しやすい
太陽熱給湯はリフォームとしての対応も十分に可能ではないか。
建物の高断熱化をしっかり果たした後、
さらに暖房に次ぐ、あるいは高断熱住宅ではほぼ同等の
エネルギー負荷である給湯をゼロエネ化するのは、
まことに理に適ってもいると思われます。

北国での太陽エネルギー利用、
まだまだ変化・発展可能性が高いと言えると思います。






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前真之「エコハウスのウソ」増補改定版

2015年12月15日 06時21分09秒 | Weblog
さてすっかり、東京世田谷建築散歩シリーズで
世間の動きとは離れた楽しい世界にどっぷりと浸かっておりましたが、
あれこれ、要件も迫って参ります(笑)。
きのうもある住宅団体の見学・セミナーに1日どっぷり。
そのほんの合間を縫って、風邪の初期症状の喉の痛みに
病院に寄って看ていただいたあと、事務所に戻ってみたら、
表題の本がわたしの机上に乗っかっていた。
小なりとはいえ、わたしも出版社なので
日経さんから、こういう本を恵送いただけるような心当たりはない。
どうも前真之先生から「著者送呈」という枠で
お送りいただけたようであります。
増補前の前作は、いま「完売」なのだそうで、
きっと出版社からは矢の催促が降り注いでいたに違いありません。

で、その後、セミナー会場に戻って
いろいろ興味深い取材も出来、発表者のみなさんとも
大いに歓談もできたあと、ようやく戻りました。
この本の読書は、いまのところ「チラ見」段階であります(笑)。
でも前作以上に見やすく直感的な構成になっていて
小気味いい切り口と論旨展開であります。
「バッサバッサ」切っていく、みたいな日経さんの紹介文ですが
いやそんなことはない、まっとうな本質論だと思います。
もし「切られている」と感じたら、自分でよく考えてみるべきだと。
・・・って言っていますが、実はわたしもよく前先生の講演スライドでは
素顔を紹介いただいているようです(笑)。
蓄熱暖房選択について「切られて」いる次第ですが、
まぁすべて事実に則っているので、仕方ない。
指摘されていることは、その通りのことだと思っています。
15年ほど前の暖房設備選択で、どうしようかとは思っていますが、
お金もかかり、おいそれとも変更はしにくいというところ。
いまのところ、前先生のおかげで悪名とは言え,
顔と名前が売れるメリットを享受している次第(泣&笑)。

前真之先生にはわたしどものReplan誌面でも連載をお願いしていて、
多忙を極めている中であるにも関わらず、
地方零細出版社のオファーに誠実にお応えいただき感謝の至り。
他社さんの出版物ですが、この本はオススメの1冊だと思います。
住宅の質の向上は、多くのみなさんの活動が大きなうねりを作るもの。
地域としての北海道の、この面での経験値から見て
いまの日本全体の動きは、そうしたダイナミズムが働き始めている。
前真之先生のこの1冊は、そうした動きをさらに加速する、
そんな期待を抱いているところであります。


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前川國男・世田谷区役所庁舎

2015年12月14日 05時43分09秒 | Weblog


前川國男さんと言っても、わたしにはリアリティがない。
建築をやっている人には、まるで神さまのような存在として
語られている様子を側聞します。
住宅雑誌はやっているけれど、建築を学んではいないわたしには、
ちょっと近寄りがたい存在という感じでしょうか。
今回、その前川さんの建築が「世田谷区役所庁舎」として
現在も使われ続けていることを知った次第であります。
一番上写真の折板構造の「オーディトリアム」とされる建築に
目が向かっておりました。
コンクリートの壁を、折り紙のように作ることで
構造として持たせるという手法だそうであります。
素人の考えでは、きっと音響効果のことを考えた壁面だったように
思われますが、1959年という時代に
こうした意志的なフォルムを持つ建築を作られていたのですね。
内部に赤絨毯の床面というのも公的施設として
珍しい空間装備だそう。
いまは、この手前で立ち入りが制限されていました。
きっと存続の如何が論議されているに違いありません。




ただ、前川さんの江戸東京たてもの園に保存されている自邸は
はるか以前、10年前に見学した体験があります。
すでにして「古建築」の世界にある存在のように感じられる次第。
今回その記事を再度見てみましたが、2005年12月8日に書いている。
現代的なキッチンやセントラルヒーティング暖房が導入され、
しかも南面の大開口には冷輻射防止のために
窓下に放熱器が配置されているのに驚いていました。
こういう住宅が戦時中から戦後すぐの時期に関東で建てられていた。
そういった事実に驚いた次第。
その当時はようやく北海道で、寒冷地住宅技術への挑戦が
始まったばかりで暖房装置はひたすら部屋中心の石炭ストーブ。
窓面での冷輻射対策というような考え方はなかった。
その後の関東圏以南建築家の冬対策の考え方の喪失状況と対比して
骨太な建築家という印象を持った次第です。
また、吉村順三さんの軽井沢の家には
壁の中に乾燥砂を「充填」させていると読んだ記憶もあり、
先人たちの先進性に畏敬の念も感じさせられた次第。



公共施設ながら、日本庭園風の庭も装置されていた。
緑の中に女郎蜘蛛が巣を張ってもいました。
遙かな時間を経過して、こうした心遣いのあるしつらいに
ものをつくっていく意志のようなものが伝わってくる気がしました。

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隈研吾・東京農大 食と農の博物館

2015年12月13日 08時05分41秒 | Weblog


さて、東京世田谷建築散歩シリーズ第4回です。
最近、隈研吾さんの建築にツイておりまして、
どうもこのところ、重なっているきらいはあるのですが、ご容赦を。
隈研吾さんって、建築という側からものを言っている感じが強い。
人間であるハズだけれど、建築というモノを背負っている。
そんな印象を強く持っています。
とくに国際学生コンペでの受賞作選定を見ていて
建築が社会とどう向き合って行くのかという立場を感じました。
いわば建築の自由な発想を守ろうというスタンス。
で、この「博物館」建築を見ていて
その前に見た「根津美術館」との同質性を感じていた次第。
根津美術館では立派な日本庭園という外縁装置を活かし、
竹のエントランスを象徴的に配置していていましたが、
この「食と農」博物館では、隣接した緑地との関係性を
この立地環境の主要な類縁性としてコントラストを際だたせている。
ここでは鉄骨造の構造フレームが外部に露出し、
それを石材で被覆させて外皮としてまとわせていました。
大樹町の「メーム」ではアイヌチセに着想して
その外皮に現代の石油化学素材をまとわせていましたが、
「食と農」という生物的なテーマに対して、
その反対概念的な素材を持ってきて、コントラストを際だたせている。
この数週間の間に、立て続けに見た隈研吾作品への印象であります。



しかし、住宅を主要な興味分野としている者としては
そもそもこのような博物館・美術館などのカテゴリーの建築って
建築の文化伝統的に、あるいは機能性分析において、
どんな判断基準、軸があるのだろうかと、そもそも論的疑問も持ちます。
美術品などは、近代現代社会成立以前は、権力者などに
独占的に所有鑑賞されてきたものであることはあきらか。
市民社会が成立して以降、こういった「集団的鑑賞」行為の
入れ物、舞台としてこういった建築は成立してきた。
その建築物をつくる、構想するときに、
さて「建築」は、そもそもどう考えることにしたのか、
そういったあたり、疑問というか、知的好奇心も沸き立ってきます。
たぶん、それ以前には大衆が集まる装置としては宗教施設だけが
存在していたのではないか、みたいに想念が広がります・・・。
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耽美に生きる。吉田五十八・近代数寄屋

2015年12月12日 06時30分50秒 | Weblog


きのう紹介した吉田五十八・成城五丁目の家、続きであります。
このような「数寄屋」、管理は大変だと思います。
この家も個人が建てて,その後相続されたそうですが、
やはり管理が難しく、世田谷区に寄贈されて存続してきたとのこと。
たくさんの見学客が来ていたので、
なかなかシャッターを切るチャンスがないけれど、
施工の数寄屋建築で著名な水沢工務店が
きちんと常時メンテナンスを行っているし、
管理自体は世田谷区の責任でしっかりされているので、
500坪と言われる敷地全域で、見どころは満載の住宅であります。
で、やはり日本的な生活感受性というものを
ずっと考えさせられ、そういうものが沈殿してくる。
建築はいちばんわかりやすく、こうした感受性を伝えてくれる。




こういった空間美から
わたしたちは日本的なるものの実質を受け止めている。
なぜこうした空間に表徴されるようなものに
わたしたち日本人は強く惹かれてきたのかはわからなくても、
圧倒的に迫ってくる、ある「いごこち」感がある。
やっぱりそれは「静寂感」とでもいえるようなものでしょうか。
基本的な部分に沈黙が潜んでいるように思う。
北海道の住宅建築がモダンそのもののアメリカ文化を受容し、
合理主義的な日本人のあらたな暮らしようを生きるしかなかった一方、
京都に凝縮した暮らしの感受性は、東京に移植され
日本人の精神の基盤を維持してきたのだと思います。
北海道は日本人のフロンティアではあって、
脱亜入欧精神がもっとも発揮された新開地だったのだ。
そこで140年を超える時間は経過してきたけれど、
こういう空間美には、「戻ってきた」と思える部分を強く感じる。



これからも、なんどか訪れてみたい、
そんな思いを強くもった住宅でした。
たいへんありがとうございましたと、誰に言うでもなく
つぶやいておりました。






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