上砂理佳のうぐいす日記

3月31日(月)から4月6日(日)まで銀座中央ギャラリーの「10×10版画展」に銅版画小品を出品します★

もう一つの世界★

2009-09-22 | うぐいすとお仕事

可愛いのか怖いのか「ねこ娘」電車

こないだも書いたけど、個展のサイン会で米子高島屋に行った時、「境港(さかいみなと)」という小さな町へ足を伸ばしました。
午後2時からサイン会ということは…余り余裕が無いけどいっちゃえ!前々から一度見たかった「水木しげるロード」へ。

米子駅「ねずみ男売店」

全て鬼太郎モード。新聞もねずみ男が見守る

米子駅から「わずか1両」の可愛い電車に乗り、各駅停車で45分。
駅ごとに「ざしきわらし」「小豆洗い」など妖怪の説明が書いてある~。リキ入ってまんなあ。怖くないですか住民の皆様。

着いた境港駅は結構立派。「観光センター」みたいなビルが建ってて、そこから自動的に「水木しげるロード」へいざなわれる。
帰りの電車までちょーど1時間!乗り損なうとサイン会に遅刻なので、飲食一切なく即出発。歩く歩く。暑い!
「鬼太郎の父」の着ぐるみのおっちゃんは、なぜか「バカボンのパパ」みたいな腹巻をしている。ねずみ男担当の人が暑そうだ。

「水木しげるロード」は距離として約1キロ。
炎天下の土産物街は途中からにぎやかな商店街になっていて、歩道の脇、数メートル毎に妖怪のブロンズ像が。
「砂かけばばあ」「子泣きじじい」「河童の三平」…「コロボックル」まである!
いやこれって期待してなかったけど(そうかい)、すごいですよ。芸術的価値が。
大きくても全長20~30cm程だけど、東京都美術館に鎮座ましましてもおかしくない。すーごい造形美ですよ。マンガっぽくない。「龍」なんてすごいわ。
100体はあるであろう妖怪彫刻の数々を、子供たちがワーワーはしゃぎながら触って遊ぶ。1キロ歩いて着いたのは「水木しげる記念館」。


赤ちゃんの鬼太郎 誕生!

鬼太郎の誕生を見守るおとーさん
なかなかの筋肉質だ

中を観覧していては時間が間に合わない。断念して撮影だけ。玄関に「鬼太郎誕生のいきさつ」が書いてある。

…幽霊族の血筋を守るため、目玉だけになって生き残った父と母の屍から生まれ、墓場から自力で這い出てきた鬼太郎。鬼太郎を励ます目玉おやじ。水木漫画の名場面である…。

私は「ゲゲゲ~」をテレビで余り見ていない。マンガ本も。
TVはいつもあの「ゲッ ゲッ ゲゲゲのゲ~♪」というおどろおどろしいテーマソングのお陰で、別部屋に駆け込んで震えていた。
年の離れた姉や兄は喜んで見ていたが、小学生(幼稚園?)の夕方にはキツイ恐怖感があった(私の幼少期、「恐怖の夕方テレビ」は、1位「ウルトラQ」。2位「妖怪人間ベム」。3位「ゲゲゲ~」である)。
ということで私はこの遠い遠い地・境港まで来てやっと(やっと!)「鬼太郎誕生」秘話を知るのであった。
「ああこれで使命を果たした」感があったので、くるりとUターン。帰途に着こうとする、とその先に「のんのんばあとオレ」の彫像が。


私は第一巻初版本を持っている。
水木しげる氏が幼い頃この境港の町で、近所に住む老婆から様々なおとぎ話、妖怪の伝説を聞いて育った。その体験が後に「妖怪漫画家の巨匠」としてめざましく開花する。
「のんのんばあ」とは、神様や仏様のこと、すなわち信心深い老婆、という意味らしいが、私の幼い頃でも、近所や田舎に必ず一人はこういう老人がいた。「怖い怖い話」をする人が。
「悪いことをするとバチが当るぞ→地獄に落ちて閻魔様に舌を引っこ抜かれるぞ」と、子供を震えさせる人が。


べとべとさん。暗い夜道に出る妖怪。
夜、一人で道を歩いていると、後ろから
「カラン…コロン…」と下駄の音が…。こここわい。
「べとべとさん、先へお越し」と言って道をあけると、
悪さはしない。しかし、キュートな造形だ。

「のんのんばあ」は、幼い水木氏に「この世には、目に見えないところにもう一つ、別世界がある」と説いた。そこに活躍するのが妖怪であり、霊であり神であり悪魔である。
人間が文明を進化させ、傲慢になっていくのを懲らしめるため、時に妖怪や霊たちは襲いかかる。世界中、そこかしこに霊はあり妖怪・妖精伝説が。
水木氏の父は米子で初の映画館を作り、夢想家でもあったことと思われる。息子の奔放な想像力とも、通じるものがあるというか。

奇しくも来年のNHK朝の連ドラは、「ゲゲゲの女房」。そのせいか、町は「水木しげる」オンパレードでなかなかに元気でした。
境港で空想にひたりきる私は、早く帰って水木センセイの漫画を読みたい!と願うばかり。
米子高島屋では楽しくサイン会を敢行しながらも、体の中は八割がた「水木しげる」で埋まってましたね(笑)。
コメント
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