わたしはかなりの汗っかきなので、ランニングの際の水分補給にはそれなりに気を使っている。
水やスポーツドリンクが用意されているレースならともかく、特にロング走などで水分を携行するのは意外と面倒--というか最も面倒なことかもしれない。水は重いしかさばる。水分を携行するということになると走るのが少し億劫になる。
夏場のランでは見た目にも明らかなほど汗をかき、ウエアもびしょ濡れになるので、気持ち的にも水分を取らねばという思いが強まるから逆に用心するけれど、冬場のランでは汗の量が減るのは当然として、しかしまったく汗をかかないというわけでもない。
はて、どの程度水分の準備が必要か悩ましい。
20㎞以上走る時には必ずボトルを携行
冬は夏と同じ準備は必要ないとは思うが、わたしは20㎞以上走る予定のときにはペースの速い遅いに関係なく必ず水分を携行している。基本は腰につけるタイプのボトルポーチ。夏なら400~500ml、冬でも300~400mlは入れてゆく。足りなくなることはまずないが、なくなってしまった時にはランを切り上げる。
ただ、明確な基準に基づいているわけではないし、冬の汗の量がどの程度なのかは気になっていた。
こないだのいびがわマラソンでスポンサーの一つ、クリクラがくれた「ランナーのための水マニュアル」にいろいろ詳しく載っていて、自分の備忘録を兼ねてこの点に絞ってここで紹介したい。
条件による発汗量の違い
まず当然ながら気候環境によって発汗量は大きく異なる。この冊子ではおおまかに「高温多湿」な環境と「低温低湿」な環境というようにわけて書かれている。具体的な数値が書かれていないので正確な条件は不明だが、おおまかには「ムシムシするような暑い夏」と「わりといつも天気の良い乾いた東京の冬」を想定すればよいのではないか。
どちらの環境かでおよそ1ℓほど違ってくる。
夏と冬 発汗量の違い
もう一つの条件は、もちろん運動強度(ペース)である。つまり速く走るかゆっくり走るかの違い。もちろん速く走るほうがより沢山の汗をかく。
さて、話がややこしくなるので、冬(の天気続きの日)を「低温低湿度環境」、(夕立が降ったりする蒸し暑い)夏(の午後)を「高温高湿度環境」として、夏と冬の違いというように大まかに話を進めるなら、下記のようになる。
発汗量 冬/夏 ※それぞれ1時間走った場合の発汗量。グラフから読み取った概算数値
6'00/㎞・・・約0.25ℓ / 約1.20ℓ
5'30/㎞・・・約0.30ℓ / 約1.35ℓ
5'00/㎞・・・約0.50ℓ / 約1.50ℓ
4'30/㎞・・・約0.70ℓ / 約1.75ℓ
4'00/㎞・・・約1.00ℓ / 約2.10ℓ
3'30/㎞・・・約1.50ℓ / 約2.60ℓ
ちなみに記録に残る最大発汗量は、ニューヨーク・シティ・マラソン3連覇の実績をもつアルベルト・サラザールの3.7ℓ/時間だそうだ。つまり、トップ選手といえど汗をかかないわけではなく、より高強度の運動を行うことになるから、汗も相当量をかくということなのだろう。
当たり前だが、気をつけるべきは、普段あまり運動していない持久能力の低い人は同じスピード(強度)でも発汗量が多いということも頭に入れておく必要がある。
脱水率
では、どのくらいの水分を携行し給水すればよいか。これがなかなか難しい。
まず、大事な指標は「脱水率」。体重比で何%の水分が失われたかということだ。
脱水率とパフォーマンス低下
脱水率1%・・・ 5%低下
脱水率2%・・・10%低下
脱水率3%・・・15%低下
脱水率4%・・・25%低下
脱水率5%・・・30%以上低下
先ほどのサラザール選手のかいた汗3.7ℓは彼の体重の約6%に相当するそうだ。
運動中は水分の吸収がうまくできなくなるので、回復可能な水分量は失った水分量の半分がせいぜいということらしい。
たとえば、70kgのランナーが4'30/㎞のペース走を1時間やると、冬でも水分が700ml失われる。体重の1%に相当する。そうすると運動パフォーマンスは5%低下する、そういうわけだ。だが、運動中の水分摂取ではうまく身体に吸収できないので350mlしか回復できず、パフォーマンスは依然2~3%低下したまま。そういうことになる。
パフォーマンス低下は、レースならタイムに影響するから出来る限りのリカバリーが必要だけれど、普段のランなら、多少パフォーマンスが落ちても深刻な身体的ダメージにつながるようなことがなければ大きな問題にはならない。
それがどの線なのか書かれていないからわからないが、経験的なことも含めて自分なりに考えてみる。
給水なしランの境目
わたしの場合は夏場でも10㎞=約1時間のランなら水分を携行する必要はまずない。15㎞だったら気温によっては少し考えるだろう。夏以外なら水分を携行する必要があるのは20㎞以上走る時に限る。
これを上記の表から発汗量に変換して考えると、少し大まかだが1.5ℓと2ℓの間あたりに線引きできそうだ。脱水率に再度変換して考えるなら、およそ2~3%に相当する。10%~15%パフォーマンスが低下した状態。
なんとなく納得できそうな線じゃないだろうか。
これを冬場にあてはめてみると、キロ5分ペースで2~3時間走っても給水の必要はないことになる。距離にすると24~36km。ちょっと違和感がないだろうか? 冬のマラソン・レースで30㎞まで給水なしでもOKということにならなくもないわけだから。
1つ気になるのは走り始めと、ある程度走ってからでは汗の量が違う(経験的に)にもかかわらず、この冊子の内容だと同じことになっているという点である。
キロ6分ペースならさらに給水なしで4~5時間走っても大丈夫ということになるが、どうだろう? 何時間も給水していないという事実が不安になりそうな気もする。
そろそろ結論。
まずもって、一番大事なことは、走りだす前にしっかり水分補給をしておくということだろう。運動中の給水ではいずれにしても脱水量の半分しか吸収できないのだから。
そのうえで、冬なら20㎞くらいまでは水分を携行しなくても問題なさそうだ。ただし、その時の気温・湿度にもよるので、もちろん念のために小銭を用意するなどの準備は怠りなく。
そしてもちろんランナーとしての持久能力の違いなど個々の能力・体調にもよるということを肝に銘じておく必要がある。
水やスポーツドリンクが用意されているレースならともかく、特にロング走などで水分を携行するのは意外と面倒--というか最も面倒なことかもしれない。水は重いしかさばる。水分を携行するということになると走るのが少し億劫になる。
夏場のランでは見た目にも明らかなほど汗をかき、ウエアもびしょ濡れになるので、気持ち的にも水分を取らねばという思いが強まるから逆に用心するけれど、冬場のランでは汗の量が減るのは当然として、しかしまったく汗をかかないというわけでもない。
はて、どの程度水分の準備が必要か悩ましい。
20㎞以上走る時には必ずボトルを携行
冬は夏と同じ準備は必要ないとは思うが、わたしは20㎞以上走る予定のときにはペースの速い遅いに関係なく必ず水分を携行している。基本は腰につけるタイプのボトルポーチ。夏なら400~500ml、冬でも300~400mlは入れてゆく。足りなくなることはまずないが、なくなってしまった時にはランを切り上げる。
ただ、明確な基準に基づいているわけではないし、冬の汗の量がどの程度なのかは気になっていた。
こないだのいびがわマラソンでスポンサーの一つ、クリクラがくれた「ランナーのための水マニュアル」にいろいろ詳しく載っていて、自分の備忘録を兼ねてこの点に絞ってここで紹介したい。
条件による発汗量の違い
まず当然ながら気候環境によって発汗量は大きく異なる。この冊子ではおおまかに「高温多湿」な環境と「低温低湿」な環境というようにわけて書かれている。具体的な数値が書かれていないので正確な条件は不明だが、おおまかには「ムシムシするような暑い夏」と「わりといつも天気の良い乾いた東京の冬」を想定すればよいのではないか。
どちらの環境かでおよそ1ℓほど違ってくる。
夏と冬 発汗量の違い
もう一つの条件は、もちろん運動強度(ペース)である。つまり速く走るかゆっくり走るかの違い。もちろん速く走るほうがより沢山の汗をかく。
さて、話がややこしくなるので、冬(の天気続きの日)を「低温低湿度環境」、(夕立が降ったりする蒸し暑い)夏(の午後)を「高温高湿度環境」として、夏と冬の違いというように大まかに話を進めるなら、下記のようになる。
発汗量 冬/夏 ※それぞれ1時間走った場合の発汗量。グラフから読み取った概算数値
6'00/㎞・・・約0.25ℓ / 約1.20ℓ
5'30/㎞・・・約0.30ℓ / 約1.35ℓ
5'00/㎞・・・約0.50ℓ / 約1.50ℓ
4'30/㎞・・・約0.70ℓ / 約1.75ℓ
4'00/㎞・・・約1.00ℓ / 約2.10ℓ
3'30/㎞・・・約1.50ℓ / 約2.60ℓ
ちなみに記録に残る最大発汗量は、ニューヨーク・シティ・マラソン3連覇の実績をもつアルベルト・サラザールの3.7ℓ/時間だそうだ。つまり、トップ選手といえど汗をかかないわけではなく、より高強度の運動を行うことになるから、汗も相当量をかくということなのだろう。
当たり前だが、気をつけるべきは、普段あまり運動していない持久能力の低い人は同じスピード(強度)でも発汗量が多いということも頭に入れておく必要がある。
脱水率
では、どのくらいの水分を携行し給水すればよいか。これがなかなか難しい。
まず、大事な指標は「脱水率」。体重比で何%の水分が失われたかということだ。
脱水率とパフォーマンス低下
脱水率1%・・・ 5%低下
脱水率2%・・・10%低下
脱水率3%・・・15%低下
脱水率4%・・・25%低下
脱水率5%・・・30%以上低下
先ほどのサラザール選手のかいた汗3.7ℓは彼の体重の約6%に相当するそうだ。
運動中は水分の吸収がうまくできなくなるので、回復可能な水分量は失った水分量の半分がせいぜいということらしい。
たとえば、70kgのランナーが4'30/㎞のペース走を1時間やると、冬でも水分が700ml失われる。体重の1%に相当する。そうすると運動パフォーマンスは5%低下する、そういうわけだ。だが、運動中の水分摂取ではうまく身体に吸収できないので350mlしか回復できず、パフォーマンスは依然2~3%低下したまま。そういうことになる。
パフォーマンス低下は、レースならタイムに影響するから出来る限りのリカバリーが必要だけれど、普段のランなら、多少パフォーマンスが落ちても深刻な身体的ダメージにつながるようなことがなければ大きな問題にはならない。
それがどの線なのか書かれていないからわからないが、経験的なことも含めて自分なりに考えてみる。
給水なしランの境目
わたしの場合は夏場でも10㎞=約1時間のランなら水分を携行する必要はまずない。15㎞だったら気温によっては少し考えるだろう。夏以外なら水分を携行する必要があるのは20㎞以上走る時に限る。
これを上記の表から発汗量に変換して考えると、少し大まかだが1.5ℓと2ℓの間あたりに線引きできそうだ。脱水率に再度変換して考えるなら、およそ2~3%に相当する。10%~15%パフォーマンスが低下した状態。
なんとなく納得できそうな線じゃないだろうか。
これを冬場にあてはめてみると、キロ5分ペースで2~3時間走っても給水の必要はないことになる。距離にすると24~36km。ちょっと違和感がないだろうか? 冬のマラソン・レースで30㎞まで給水なしでもOKということにならなくもないわけだから。
1つ気になるのは走り始めと、ある程度走ってからでは汗の量が違う(経験的に)にもかかわらず、この冊子の内容だと同じことになっているという点である。
キロ6分ペースならさらに給水なしで4~5時間走っても大丈夫ということになるが、どうだろう? 何時間も給水していないという事実が不安になりそうな気もする。
そろそろ結論。
まずもって、一番大事なことは、走りだす前にしっかり水分補給をしておくということだろう。運動中の給水ではいずれにしても脱水量の半分しか吸収できないのだから。
そのうえで、冬なら20㎞くらいまでは水分を携行しなくても問題なさそうだ。ただし、その時の気温・湿度にもよるので、もちろん念のために小銭を用意するなどの準備は怠りなく。
そしてもちろんランナーとしての持久能力の違いなど個々の能力・体調にもよるということを肝に銘じておく必要がある。