今年が「国際カエル年」と言うことや、そのスタートになった2月29日が「国際カエルの日」だったとは、まったく知らなかった。
両生類は魚類に次ぐ古い動物で、イモリやサンショウウオなどの有尾類と、カエルやヒキガエルなどの無尾類とがある。この両生類は開発や環境汚染などによって世界では現在、約半数の種に個体数の減少が見られ、32%の種が絶滅危惧種となっていると言う。そこでこれに警鐘を鳴らして世間の認識や理解を高めることを目的として、国際自然保護連合(IUCN)や世界動物園水族館協会などが主催する「両生類箱舟プロジェクト(Amphibian Ark)」が世界的なキャンペーンを行っているのだそうだ。
私はもともと中学生時代からカエルが好きであったが、大学院の修士課程では高名な両生類の遺伝学者である教授に師事したこともあって、今でも両生類には愛着を持っている。しかし悲しいかな、今の私の周辺には両生類の姿はまったくと言ってよいほど見られなくなった。40年前頃には、家の近くの溝にイモリがいて、動物好きの次男などは喜んで手に取ったりしていたし、カエルもトノサマガエル、ダルマガエル、ツチガエル、ヌマガエルなどさまざまなものがいた。50年近く前に初めて勤めた高校の校地の隅の池にはニホンアカガエルがいたし、学校の近くの水田の畦には、そこに穴を掘り泡に包まれた卵塊を産みつけるシュレーゲルアオガエルなどもいたものだ。それが今では私の家の近くにいるのはアマガエルだけになってしまった。アマガエルも可愛いものだが、トノサマガエルの優美な姿を思い出すにつけ、カエルがいない環境などは不自然で味気ないとつくづく思う
カエルは英語でfrogと言うが、これはトノサマガエルなどのように水中では泳ぎ、地上では飛び跳ねる仲間で、這うように歩くヒキガエル(ガマ)はtoadと言って区別されている。このヒキガエルもなかなか風情のある生き物で、かつては六甲山の池や明石城の堀にたくさんいて、春先には大量の卵を生み、それを採集してきて発生の教材にした。少年時代に過ごした祖父の家の庭には多くの樹木があって、その下は昼も薄暗く湿っぽかったが、夏の宵などにはヒキガエルがどこからともなく姿を現わした。その蹲っている様子はいかにも大人然としていて、祖父は喜んでいたものだった。
カエルについてはひとつの思い出がある。今では廃止、整理されたが、グリーンピア(大規模年金保養基地)と言うものがあった、日本列島改造論を掲げる田中角栄内閣の計画のもとで厚生省(現在の厚生労働省)が被保険者、年金受給者等のための保養施設として、1980年から1988年にかけて全国に13ヶ所設置した。兵庫県でも三木市の丘陵地帯に建設が予定され、環境調査の依頼を受けた私の大学時代の教授の後輩に当たる神戸大学の教授と候補地の、主として両生類の生息状況を調べた。調査が終わって関係の省庁の土木担当者などと協議した。いろいろと話し合われたが、その席で私は「カエルが棲める環境を残してほしい」と要望した。すると前の席にいた2人の土木関係の役人が顔を見合わせて「カエルがなぜ必要なんだ」というようなことを呟いた。カエルは象徴的に言ったので、要するに自然環境をできるだけ壊さずに残すようにということなのだが、技術屋には理解できなかったようだ。ことほど左様に技術中心の開発の名の下に生物の環境破壊が進行して、水質の汚染に弱い両生類などは真っ先に死に絶えていってしまった。今更「カエル年」などとキャンペーンしても時すでに遅しという感もあるが、それでも今なお多数の両生類が生息する熱帯雨林などでは、環境を保全して種の減少、絶滅を防ぐことは必要だろう。
トノサマガエルの雌(インタネットより)
両生類は魚類に次ぐ古い動物で、イモリやサンショウウオなどの有尾類と、カエルやヒキガエルなどの無尾類とがある。この両生類は開発や環境汚染などによって世界では現在、約半数の種に個体数の減少が見られ、32%の種が絶滅危惧種となっていると言う。そこでこれに警鐘を鳴らして世間の認識や理解を高めることを目的として、国際自然保護連合(IUCN)や世界動物園水族館協会などが主催する「両生類箱舟プロジェクト(Amphibian Ark)」が世界的なキャンペーンを行っているのだそうだ。
私はもともと中学生時代からカエルが好きであったが、大学院の修士課程では高名な両生類の遺伝学者である教授に師事したこともあって、今でも両生類には愛着を持っている。しかし悲しいかな、今の私の周辺には両生類の姿はまったくと言ってよいほど見られなくなった。40年前頃には、家の近くの溝にイモリがいて、動物好きの次男などは喜んで手に取ったりしていたし、カエルもトノサマガエル、ダルマガエル、ツチガエル、ヌマガエルなどさまざまなものがいた。50年近く前に初めて勤めた高校の校地の隅の池にはニホンアカガエルがいたし、学校の近くの水田の畦には、そこに穴を掘り泡に包まれた卵塊を産みつけるシュレーゲルアオガエルなどもいたものだ。それが今では私の家の近くにいるのはアマガエルだけになってしまった。アマガエルも可愛いものだが、トノサマガエルの優美な姿を思い出すにつけ、カエルがいない環境などは不自然で味気ないとつくづく思う
カエルは英語でfrogと言うが、これはトノサマガエルなどのように水中では泳ぎ、地上では飛び跳ねる仲間で、這うように歩くヒキガエル(ガマ)はtoadと言って区別されている。このヒキガエルもなかなか風情のある生き物で、かつては六甲山の池や明石城の堀にたくさんいて、春先には大量の卵を生み、それを採集してきて発生の教材にした。少年時代に過ごした祖父の家の庭には多くの樹木があって、その下は昼も薄暗く湿っぽかったが、夏の宵などにはヒキガエルがどこからともなく姿を現わした。その蹲っている様子はいかにも大人然としていて、祖父は喜んでいたものだった。
カエルについてはひとつの思い出がある。今では廃止、整理されたが、グリーンピア(大規模年金保養基地)と言うものがあった、日本列島改造論を掲げる田中角栄内閣の計画のもとで厚生省(現在の厚生労働省)が被保険者、年金受給者等のための保養施設として、1980年から1988年にかけて全国に13ヶ所設置した。兵庫県でも三木市の丘陵地帯に建設が予定され、環境調査の依頼を受けた私の大学時代の教授の後輩に当たる神戸大学の教授と候補地の、主として両生類の生息状況を調べた。調査が終わって関係の省庁の土木担当者などと協議した。いろいろと話し合われたが、その席で私は「カエルが棲める環境を残してほしい」と要望した。すると前の席にいた2人の土木関係の役人が顔を見合わせて「カエルがなぜ必要なんだ」というようなことを呟いた。カエルは象徴的に言ったので、要するに自然環境をできるだけ壊さずに残すようにということなのだが、技術屋には理解できなかったようだ。ことほど左様に技術中心の開発の名の下に生物の環境破壊が進行して、水質の汚染に弱い両生類などは真っ先に死に絶えていってしまった。今更「カエル年」などとキャンペーンしても時すでに遅しという感もあるが、それでも今なお多数の両生類が生息する熱帯雨林などでは、環境を保全して種の減少、絶滅を防ぐことは必要だろう。
トノサマガエルの雌(インタネットより)