いつも油を売りに行っている店の経営者のI君はこのところダイエットに熱中している。いつ店を訪れても、店の隅の机に向かってノートに書き込んでいる。毎日毎食自分が食べた食品のカロリー計算をしているのだそうだ。
I君はダイエットしているのではない、カロリーを計算しているのですと言うのだが、よく聞いてみると、ダイエットの意味もあることは認めた。その日に摂取した総カロリー数を見て1日の必要摂取カロリー数にどれだけ近づいているかを知るのだそうだ。彼の場合は1700か2400カロリーが目安だとか。特に夕食までに摂ったカロリー数に重きを置いているらしい。彼は夕食のときにビールをたくさん飲むようだ。ビールはカロリー数が高いぞと言うと、実はそのビールのカロリー数分を空けておくためにどれくらい食べたかを見ておくのですと言うからおかしかった。いっそのことビールの量を減らせばいいのにと思うが、それは彼には無理なことなのだろう。それでも朝昼のカロリー数に夕食の分も加えて、ビールの分がなくなることもあるだろう。だからと言って酒好きの彼が飲むのを慎むとは思われない。そういうときには、以前から買ってある健康器具で運動するのだそうだ。ちょっとは痩せたでしょうと腹をさすりながら聞くから、大して痩せたとは思えなかったが、そうだな、ちょっとスマートになったかなと言ったら満足そうな顔をした。
それにしても大した執念である。携帯できる小さい台秤まで買って、食べる前に重さを量る。コーヒーでも飲む前の重さを量り、飲み終わったら容器の重さを量ってそれを差し引き、インタネットで検索した食品のカロリー表にあるコーヒーのカロリーから、摂取したカロリー数を割り出ノートに記入する。それを摂取したものすべてについてするのだから恐れ入る。朝食を外で食べたときにもその秤で食べたものの重さを記録しておき、後でカロリー数を調べたそうだ。中にはもうインタネットで調べなくても暗記しているものもあるようで、夜寝る前に空腹になり、インスタントラーメンでも食べようか、いやいや330カロリーもあるから止めておこうなどということもあるそうだから、その限りでは悪くはないことだ。醤油でも何でも使ったものは調べ摘録するからその手間は大変らしい。チューイングガムでも7カロリーもあるのですよと言う。まるで栄養士だ。
好きなビール分を確保するのが主な目的にせよ、その結果としてダイエットもできるのなら結構なことかも知れないが、ものぐさで長続きしない私にはとても真似ができないことだ。それに負け惜しみのようだが、どうも何だか味気ないような気もする。不摂生と言われるだろうが、やはり食べたいものを食べたいときに適当に食べる方がストレスが溜まらないように思う。久しぶりに友人などとレストランで食事をするときにも、レタスを1枚齧ったりスープを1匙啜ったりするたびに、これは何カロリーカなどと思うのでは料理の味を楽しむこともできない。
I君の店に行くと彼はたいてい机に向かって記録をとっている。商売そっちのけのようなその姿は何かしら可愛らしいオジサンのようで、ついおかしくなってしまう。時々店に行くなり、昨日は夕食までに400しか摂りませんでしたよなどと嬉しそうに報告されることもある。さぞ安心して大いにビールを飲んだのだろう。本人は面倒な計算も苦にないようで大真面目なのだが、いつまで続くのだろう。
I君はダイエットしているのではない、カロリーを計算しているのですと言うのだが、よく聞いてみると、ダイエットの意味もあることは認めた。その日に摂取した総カロリー数を見て1日の必要摂取カロリー数にどれだけ近づいているかを知るのだそうだ。彼の場合は1700か2400カロリーが目安だとか。特に夕食までに摂ったカロリー数に重きを置いているらしい。彼は夕食のときにビールをたくさん飲むようだ。ビールはカロリー数が高いぞと言うと、実はそのビールのカロリー数分を空けておくためにどれくらい食べたかを見ておくのですと言うからおかしかった。いっそのことビールの量を減らせばいいのにと思うが、それは彼には無理なことなのだろう。それでも朝昼のカロリー数に夕食の分も加えて、ビールの分がなくなることもあるだろう。だからと言って酒好きの彼が飲むのを慎むとは思われない。そういうときには、以前から買ってある健康器具で運動するのだそうだ。ちょっとは痩せたでしょうと腹をさすりながら聞くから、大して痩せたとは思えなかったが、そうだな、ちょっとスマートになったかなと言ったら満足そうな顔をした。
それにしても大した執念である。携帯できる小さい台秤まで買って、食べる前に重さを量る。コーヒーでも飲む前の重さを量り、飲み終わったら容器の重さを量ってそれを差し引き、インタネットで検索した食品のカロリー表にあるコーヒーのカロリーから、摂取したカロリー数を割り出ノートに記入する。それを摂取したものすべてについてするのだから恐れ入る。朝食を外で食べたときにもその秤で食べたものの重さを記録しておき、後でカロリー数を調べたそうだ。中にはもうインタネットで調べなくても暗記しているものもあるようで、夜寝る前に空腹になり、インスタントラーメンでも食べようか、いやいや330カロリーもあるから止めておこうなどということもあるそうだから、その限りでは悪くはないことだ。醤油でも何でも使ったものは調べ摘録するからその手間は大変らしい。チューイングガムでも7カロリーもあるのですよと言う。まるで栄養士だ。
好きなビール分を確保するのが主な目的にせよ、その結果としてダイエットもできるのなら結構なことかも知れないが、ものぐさで長続きしない私にはとても真似ができないことだ。それに負け惜しみのようだが、どうも何だか味気ないような気もする。不摂生と言われるだろうが、やはり食べたいものを食べたいときに適当に食べる方がストレスが溜まらないように思う。久しぶりに友人などとレストランで食事をするときにも、レタスを1枚齧ったりスープを1匙啜ったりするたびに、これは何カロリーカなどと思うのでは料理の味を楽しむこともできない。
I君の店に行くと彼はたいてい机に向かって記録をとっている。商売そっちのけのようなその姿は何かしら可愛らしいオジサンのようで、ついおかしくなってしまう。時々店に行くなり、昨日は夕食までに400しか摂りませんでしたよなどと嬉しそうに報告されることもある。さぞ安心して大いにビールを飲んだのだろう。本人は面倒な計算も苦にないようで大真面目なのだが、いつまで続くのだろう。