中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

子どもの夢と個人情報保護

2009-03-20 09:40:08 | 身辺雑記
 日本人初の国際宇宙ステーションに長期滞在する予定の宇宙飛行士の若田光一さんは、出身地であるさいたま市の小中学生ら約10万人分の写真データの入っているDVDを携えていった。若田さんは昨年3月、宇宙航空研究開発機構を通じて「市の記念品を持っていきたい」と市に相談した。これを受けて市の市青少年宇宙科学館は、「夢や希望を与えるため、子供らの写真を」と発案し、市立の小中学校と特別支援学校の全159校の学級写真を撮った。

 「子供の夢も一緒に宇宙へ」との企画だが、宇宙科学館は編集の際に、「万が一の流出に備える必要がある」と考えて、職員6人で1カ月かけ、拡大しても子どもの顔が判別できないように画像の解像度を下げる処理をした。処理された画像は「ゆめをのせてうちゅうへ」など、紙に大きく書いたメッセージが判読できる程度だそうだ。

 例によって個人情報保護を考慮した処置だが、これはどうも行き過ぎではないか。全員の顔をぼかし、全体としてぼけた写真が「ゆめをのせてうちゅうへ」ということになるのか疑問に思う。ある小学校長は「そこまで個人情報の取り扱いに気配りする必要があるのか」と疑問を呈しているそうだが、同感だ、それでも人さまざまで、ある主婦は、校内誌にも子どもの顔を載せたくない親がいるから適切な判断ではないかと言ったらしい。これも考えてみると味気ないことだと思う。個人情報保護に詳しい国立情報学研究所の弁護士は「写真処理に1カ月費やすなら、保護者に了解を取る努力をした方が良かったのでは。過剰な個人情報保護だろう。せっかく宇宙へ持っていくのに夢のない話になってしまった」とコメントしたそうだ。どうしても個人情報保護ということで苦情が出るのが心配ならば、あらかじめ保護者に趣旨を伝え、それでも忌避する場合は、その子どもを外して写真を撮ればよかったのではないか。それでは外された子どもはかわいそうだと言うかも知れないが、そうそう何もかもがうまくいくものではない。

 行き過ぎた個人情報保護の問題はいまさらのことではない。交通遺児に奨学金を給付する民間の育英会では、学校に問い合わせても個人情報保護ということを盾にして応じないケースが増えているということも聞いたことがある。祭りの神輿の写真を撮るにしても顔が写らないように気をつけなければならないそうだが、祭りを楽しむ明るい顔を撮ってはいけないとはまことに味気ない話だ。同窓会などでクラス名簿を作ろうとしても、できないと言うことで幹事が困っていたことがあった。個人情報の保護、保護と言いながら、しだいに窮屈で伸びやかさのない、内向きな社会になっていくような気がする。