中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

夫婦別姓

2010-07-21 10:11:26 | 中国のこと
 2008年の10月に西安の李真の家に行った時、彼女夫婦の部屋で前の年の彼女達の結婚式のDVDを見せてもらった。ところがどうも具合が悪くて映らない。李真はしばらくプレーヤーをいじっていたが、急に大きな声で「チェンウエイ!」と叫ぶように言った。一瞬何かと思ったが、すぐに彼女の夫君を呼んだことが分かった。彼の姓名は陳偉(チェン・ウエイ)と言う。中国では夫婦別姓だから夫婦で姓が違うのは不思議ではないが、ただその時は夫をフルネームで呼んだのが面白いと思った。日本なら妻が夫を「山田太郎!」と呼ぶようなものだ。そう言えば李真の父親も彼女をフルネームで呼ぶということは聞いたことがあった。それが普通なのか、それとも偉(ウエイ)や真(チェン)のように1音の名前は呼びにくいので姓をつけるのか、そのあたりのこと確かめていないので分からない。

 夫婦別姓(夫婦別氏)については日本でも議論の対象になっているが、なかなか結論は出ないようだ。2001年に内閣府が発表した「選択的夫婦別氏制度に関する世論調査」で、選択的夫婦別姓(希望により、夫婦同姓か、夫婦別姓か、好きな方を選択できる制度)の賛成派が、初めて反対派を上回った。特に、20代、30代では、男女とも、選択的夫婦別姓賛成派が、旧姓使用容認も含めると、80%を超えているという。30代の女性では、9割以上が法改正を望んでいた。しかし時事通信社が今年3月に実施した世論調査の結果は、選択的夫婦別姓制度に賛成が35.5%に対し、反対は55.8%あったという。国会でも法改正の動きはあるが、保守的な考えの議員が多いので、なかなか実現しないそうだ。ある新聞は「左翼政権的政策」と書いていた。

 夫婦別姓の国は、近い中国や韓国の他にも、フランス、ベルギー、スペイン、イラン、クウェート、サウジアラビア、シンガポールなどがある。中国では夫婦別姓でも、子どもは父親の姓を名乗るのが普通のようだ。しかし、父親の姓にするか、母親の姓にするかは選択できるようだ。西安の謝俊麗の話では、子どもができた時に夫婦どちらの姓にするかと夫の劉君に尋ねたら、僕の子どもだからと劉姓にすることを強く主張したそうだ。劉君の子どもでもあると同時に腹を痛めて産んだ俊麗の子どもでもあるのだが、やはりまだ男性中心の考えがあるのか。また俊麗が、友人の李真に子どもはどちらの姓にするかと尋ねたら、当然夫の姓の陳(チェン)にすると言ったそうだ。陳の方が李よりも子どもの名をつけるのに良いからだそうだが、耳にしたときの音がいいのか、このあたりは中国人でないと感覚が分からない。

 俊麗は夫婦の姓を合わせることもあるとも言った。例えば俊麗の息子は劉謝とする。中国人の姓は1字が多いからこういうことも考えるのだろうが、俊麗は劉謝ではあまりよくないこともあるようだから止めたと言った。このあたりもよく分からない。日本なら森姓と林姓の夫婦の子の姓に森林とつけるようなもので、通称ならともかく、法的にはだめだろう。中国でも時々2字姓、例えば諸葛とか司馬などがあるが、この場合には2つ合わせて諸葛司馬という姓にすることはあるのか。

 父親とも母親とも違う姓をつけることも稀にはあるようで、例えば毛沢東と3番目の妻の賀子珍との間にできた娘は李敏と言う。これは当時、国民党の追及を逃れるためにしたことで、特殊な事情だろうが、今でもあるのだろうか。

 現在の中国の男女別姓の根底には男女平等の思想があるが、かつては韓国などと同じように儒教の思想によって、女性は嫁いだ後も一族の者として認められなかったことによるようだ。

 日本では婚姻の届けをする時に夫婦がどちらの姓にするかを決めなければいけない夫婦同姓が法的に決められているが、謝俊麗は妻が夫の姓を名乗ることは日本の習慣と思っていて、ある日本のドラマを見て、法律で決まっていることを知って驚いたと言った。

 姓は元来は出自の氏を名乗っていることだから、日本では家族制度のこともあって夫婦別姓には賛否両論があるし、これからも続くだろうが、将来的には選択的夫婦別姓が認められるような気がする。