ネアンデルタール人というのは、おそらくは小学校の高学年生以上なら知っている古生人類で、発見されたのは1830年のことだが、最初に科学的に研究されたのは1856年にドイツのデュッセルドルフ郊外のネアンデル渓谷(ネアンデルタール)のある洞窟で発見された骨だった。研究当初はさまざまな議論を呼び、われわれ現生人類(ホモ・サピエンス)の祖先であるとしたり、反対に古生人類ではなく病変した現代人の骨だという意見もあった。しかしいずれの説もその後の研究の進展によって否定され、現在ではわれわれに最も近縁の人類であるとされている。
ネアンデルタール人は、ヒトと共通の先祖から47万~66万年ほど前に分かれ、独自の進化の道をたどり、約40万~3万年前にヨーロッパから西アジア一帯にかけて分布したとされ、2万数千年前に絶滅した。ほんの最近のことだ。
一方ヒトはネアンデルタール人と分岐して以後、古代型のサピエンスを経て約25万年前にアフリカに出現した。その後その一部が約8万年前にアフリカを出て、中東を経てヨーロッパやアジアに広がっていったとされている。
このほどドイツのマックスプランク進化人類学研究所などの研究チームが、東欧のクロアチアから出土した約3万8000年前のネアンデルタール人3体の骨の化石の細胞核からDNAを取り出し、その全遺伝子情報(ゲノム)を解析し、それをアフリカ南部、同西部、パプアニューギニア、中国、フランスのヒト5人のゲノムと比較した。その結果、アフリカを除く3人が、ネアンデルタール人のゲノムと一致する率がわずかに高かいことが分かった。
このことから研究チームは、アフリカで誕生したヒトの一部が5万~10万年前以降にアフリカを離れた後、ユーラシア大陸に広がる前に中東近辺でネアンデルタール人と混血した可能性があると推測している。「ヒトの遺伝子の1~4%はネアンデルタール人に由来している可能性がある」のだそうだ。
人類の進化の歴史の中ではそれほど古くはない時期に起こったことなのだが、当時の環境はどんなもので、どのようにして両者は遭遇したのか。混血するくらいだから友好的な出会いだったのではないか。その結果できた子どもにはネアンデルタール人の遺伝子も受け継がれ、代々引き継がれて今に至っているわけだ。
100年程前には私の父母や祖父母がいた。それ以前の先祖のことは知らないが、ずっと過去に遡っても今の私につながる先祖がいたことは当然だ。そして行き着くところはアフリカから出てユーラシア大陸に広がる前のヒトであることも確かだ。その上に、今回の研究から導き出された説によれば、その頃には私の先祖としてネアンデルタール人もいたことになる。いろいろ想像すると楽しくなってくるではないか。
チューリッヒ大学による5歳の女児の復元像。
ネアンデルタール人は、ヒトと共通の先祖から47万~66万年ほど前に分かれ、独自の進化の道をたどり、約40万~3万年前にヨーロッパから西アジア一帯にかけて分布したとされ、2万数千年前に絶滅した。ほんの最近のことだ。
一方ヒトはネアンデルタール人と分岐して以後、古代型のサピエンスを経て約25万年前にアフリカに出現した。その後その一部が約8万年前にアフリカを出て、中東を経てヨーロッパやアジアに広がっていったとされている。
このほどドイツのマックスプランク進化人類学研究所などの研究チームが、東欧のクロアチアから出土した約3万8000年前のネアンデルタール人3体の骨の化石の細胞核からDNAを取り出し、その全遺伝子情報(ゲノム)を解析し、それをアフリカ南部、同西部、パプアニューギニア、中国、フランスのヒト5人のゲノムと比較した。その結果、アフリカを除く3人が、ネアンデルタール人のゲノムと一致する率がわずかに高かいことが分かった。
このことから研究チームは、アフリカで誕生したヒトの一部が5万~10万年前以降にアフリカを離れた後、ユーラシア大陸に広がる前に中東近辺でネアンデルタール人と混血した可能性があると推測している。「ヒトの遺伝子の1~4%はネアンデルタール人に由来している可能性がある」のだそうだ。
人類の進化の歴史の中ではそれほど古くはない時期に起こったことなのだが、当時の環境はどんなもので、どのようにして両者は遭遇したのか。混血するくらいだから友好的な出会いだったのではないか。その結果できた子どもにはネアンデルタール人の遺伝子も受け継がれ、代々引き継がれて今に至っているわけだ。
100年程前には私の父母や祖父母がいた。それ以前の先祖のことは知らないが、ずっと過去に遡っても今の私につながる先祖がいたことは当然だ。そして行き着くところはアフリカから出てユーラシア大陸に広がる前のヒトであることも確かだ。その上に、今回の研究から導き出された説によれば、その頃には私の先祖としてネアンデルタール人もいたことになる。いろいろ想像すると楽しくなってくるではないか。
チューリッヒ大学による5歳の女児の復元像。